第14話お兄様ずるいですわ

「おとうさま、おかえりなさい、アリー、とってもさみしかったですわ!」


御覧になって、この磨き上げたエンジェルスマイル。そして自分を名前呼び。

あのセルジュも胸を押さえてぷるぷるしているわ。ボニーは崩れ落ちているわね。


姿勢を低くして、満面の笑みで両手を広げているお父様。

淑女らしくはないけど、走って全力でお父様に抱き着いたわ。幼女だから許されるでしょう。



ほら、お父様の嬉しそうなこと。両手で私を掲げ、くるくる回りだしたわ。

うふふふ…うっぷ。そろそろ限界を迎えそうよ、お父様…。


「おとうさま、ずっと、おうちにいらっしゃる?」



ノエル様情報。ノエル様情報。



「っ!ああ、もちろんだ。アリーが嫌だといっても、ずっとアリーのそばにいるぞ。」


はじける笑顔のお父様が、ぎゅっとしたまま、今度は頬ずりしだしたわ。

あら、この世界のメンズには、髭がないのかしら。

悔しいくらい、つるつるすべすべじゃない。シミはどこ?

素晴らしいわ、アップに耐えられる顔。



「おとうさま?わたしも、さみしかったのですよ?」

お父様の服の裾をつかんでうつむき、小さくをほっぺを膨らませるお兄様。

くぅー今日も胸がやられてしまったわ。



「おお、ユーグ。お前にも、もちろん会いたかったに決まっている。さあおいで。」

2人まとめて、抱き上げるお父様。この細身の体のどこにそんな力が。



「まあ!お母様だって寂しかったのに、2人ともずるいわ。ふふふ」

そう言いながらも、すごく嬉しそうなお母様。

微笑みあう美男美女、絵になるわー。




********************


「おとうさま、わたくしのために、いろいろありがとうございます。」


「ん?なんのことかわからないけど、アリーに感謝されると嬉しいね。」


久しぶりの家族そろっての食事で、切り出してみたが、気遣いのできるイケメンは返答もスマートね。



「それより、領地での取引は滞りなく終わったよ。すぐ戻るようアドバイスをくれたアリーのおかげだね。感謝するよ。」



そうでしょう、そうでしょう。きめ細かい迅速な対応、商売の基本よ。…私全然スマートじゃないわね。



あら、お兄様が、お父様を見て、はっとした顔をなさっているわ。

お肉がまだフォークに刺さっておりましてよ。


「そうだ!おとうさま、ノエルに わたしのかいたおてがみ、わたしてくれましたか?」



ノエル二 オテガミ ワタシタ



「ああ、今回私の到着が遅れてしまってね。ノエル君は先に帰ってしまっていたのだが、ユーグの手紙は、きちんとシュナイダー辺境伯に託したよ。」


「おとうさま、ありがとうございます!」



て、て、て、手紙ですって!!!推しへのファンレター。なんてこと!お兄様に先を越されてしまいましたわ!!!

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