第11話皇太子妃教育どうする?

それから、2週間。


陽射しが明るく穏やかな午後、私は今、お母さまとお茶を楽しんでいる。


…もう一度言おう、2週間。

よいのだろうか?皇太子妃教育。いや、行きたいわけではない、このまま誰も気づかなければいいとすら思っている、が、しかし…。



「おかあさま?」

「なあに?私のアリー。」



「あの、あのですね。わたくし、おおきゅうでのきょういくのことで、おかあさまにごそうだんが…。」


この日のために、潤んだ瞳をマスターしてきたわ。ボニーはすでに撃沈済みよ。瞬殺と言ってもよい。


さあ、お母様、練習の成果をとくと見よ。




「ああ、皇太子妃教育ね。アリーは、しばらく王宮で皇太子妃教育をうけなくてもよいことになったの。」


「???しばらくとは?」



おっと、潤み損ねたわ。



「そうね、10歳、いえ、学院に入学するまでは行かなくてもよいのではなくて?」



よいのではなくて?




「代わりに、王宮から家庭教師を派遣してもらうことにしたから、勉強が全く無くなるというわけではないし、皇后様や皇太子殿下とのお茶会は避けられないのだけれど、お母様と一緒の時間のほうが長くなるわ。嬉しい?アリー。」



なんてこと!あの鬼のようなスケジュールをこなさなくてよいということ!?

でも、婚約白紙とかいう感じではなさそうね。

なんだかよくわからないけど、やったわ。嬉しいに決まっているではないですか。

お母様の甘やかしは、継続中ですのね。




「はい、おかあさま。うれしすぎます。わたくし、どこででも、しっかりまなびますわ。」


せっかく練習した潤んだ瞳だけど、そうね、別の機会まで取っておきましょう。



お母さまが、ほっぺをぷにぷにしたり髪を撫でてくださったりしている。ふふ、私以上に嬉しそうね。もっと撫でまわしてもよろしくてよ。



「アリーは、きっと、あっという間に大人になってしまうわ。せっかく、お母様の子供として生まれたのだから、まだ、私のそばで子供でいてほしいの。私、アリーとやってみたいことがたくさんあるのよ。ゆっくり大人になって頂戴。」



やりたいことってなにかしら?ええ、すべて願いを叶えましょう、はい、なんでもやりましょう。でも、お母さま、これだけはごめんなさい、…中身は、もうすでにお母様よりずいぶん大人になってしまいました。



きっと、倒れたのは、疲労もあると思っているのね。あながち間違いでもないのだけれど。


そうだわ!!お父様!王宮にご用事とは、まさか、私のために?

ああ、なんてこと…。神々しいと思っておりましたが、やはり神でしたか。

でも、大丈夫?不敬とか言われていないわよね?

お父様のお立場を考えると、心が落ち着かないわ。



…決めた。今日からお兄様にも負けないエンジェルスマイルの特訓よ。

私ならやれるわ。だって美幼女ですもの。



そして、飛び切りの笑顔でお父様にお帰りを言ってあげるわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る