第9話ごめんね、ボニー

ピタリと隣に座り、一生懸命、文字を指でなぞりながら、読み聞かせてくださるお兄様。


だめだわ。どんな本か楽しみにしていたのに、愛らしさに溢れ、まったくもって内容に集中できない。



それにしても、私、この世界の文字が読めるのね。



そりゃそうか、皇太子妃教育、始まっているもの。

ほぼ毎日、12時間も王宮に拘束されているもの。

同時進行で、他の国の文字まで習っているもの。



…当然といえば当然ね。





「ふーーどうだった?アリー?」


あ、いけない。天使に賛辞を送らねば。



「おにいさま、スラスラよめてすごいですわ。とても、たのしめましたわ(お兄様の愛らしさを)」



「ほんとう?ふふふ。また、よんであげるね。」



ええ、次こそ、内容に集中し、もっと素晴らしい賛辞を送りますわ。




「さあさあ、お二方、間もなく御夕食のお時間ですよ。お嬢様は、お部屋で召し上がりますか?」



「そうね、しょくよくもでてきたし、おにいさまといっしょにダイニングルームへいくわ。」



「じゃあ、アリーのじゅんびがおわるころ、むかえにくるね。」




天使のお迎え、なんだか響きが、うん…。




********************




ボニー、ドレス選びに余念がないわ。夕食だけだから、何でもいいのだけれど。



そういえば、雨に濡れた時、ボニーがそばにいたのよね。

令嬢が熱を出してしまったのだから、やっぱり罰とか…。

なんだか申し訳ないわ。





「ねえ、ボニー?」

「はい、なんでしょうお嬢様。」



「ボニー、わたしが、ねつをだしたせいで、しかられてしまったかしら?」



あら、持っていたドレスを床に落としたわ。叱られてしまうわよ?



「お嬢様のせいではございません!すべて、このボニーのせいでございます。私が、私が、天気の変化を察知する能力を持ち合わせていなかったから…いえ、普段からどんな天気や状況にも、対応できるような準備をしなければいけなかったのです。」



大荷物になるわね。




「…執事のセルジュ様から、だいぶ、い、いいえ、ちょっとだけお叱りを受けただけで済みました…。ありがたいことに、旦那様たちは、私を責めることなく許してくださいましたし。それでも、このボニー、2度とお嬢様に苦しい思いはさせないことをお約束いたします!」




やっぱり、セルジュにかなり叱られたのね…。




「めざめるまで、わたくしについていてくれたのよね。ありがとう、ボニー」


「そ、そんな。当然です!苦しかったはずですのに、お礼だなんて。うう・・・」




ボニー、あなたの涙と鼻水でぬれたそのドレスを着るのは、さすがにお断りよ。

後でこっそり洗いなさい。

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