第8話ご本を読んでもらう
「お嬢様、先ほどから何をぶつぶつ言っているのですか?」
「うわ!ボニー、いつからそこに?」
「き、きちんとノックは致しましたよ。そろそろ夕方ですし、窓を閉めに参ったのです。」
ああ、そうなのね。専属侍女の権限を使って、もうお医者様の忠告を無視したのかと思ったわ。
本当ね、確かに、少し肌寒くなってきたわ。
「それにしても、お嬢様は、なぜシュナイダー辺境伯のご令息のことを知っておられるのですか?」
むむ?
「いま、なんて?」
「ですから、お嬢様、先ほどからノエル様と連呼していたではありませんか。ノエル・シュナイダー辺境伯令息様のことですよね。シュナイダー辺境伯家とノヴァック侯爵家は昔から交流があり、取引相手でもあるのですよ。あ、先日、旦那様方が領地へ向かったのも、小麦の取引があったからですし。うーん、お兄様であられるユーグ様は、シュナイダー辺境伯令息様と交流があったと思いますが、お嬢様は、お会いになったことは、ありませんよね?」
「その、お、おにいさまからきいたのよ。」
ボニー、あなたのその、「なぜに連呼を?」という顔には、答えてあげないわよ。
スルーよ。
それにしても、あんなに、あんなに意気込んでいたのに、ノエル様の家名はあっさり分かった。
しかも、ボニーの口から…。くっ
そういえば、ボニー、聞かれてもいないのに大事な情報を一気に言ったわね。
私に有益だったとしても、その口の軽さは致命的よ。
大事なことはボニーに相談しないことに決めたわ、うん。
「もしかして、わたしをよんだ?」
扉から、ひょこっという効果音とともに、エンジェルスマイルを惜しみなく向けながら現れたお兄様。
あら、本を抱えていらっしゃるわ。
「ごほんをよんであげようとおもって…めいわくだった?」
迷惑とは何ぞ?天使は人々の願いを神に伝える存在。
「まあ、おにいさま、ちょうど、ほんをよんでいただきたい きぶんでしたの、うれしいですわ。」
私の願いは、きっと本を読んでいただくことだったに違いない。天使が願いを間違えるわけがないもの。例え、合算年齢から考えると、本当は読み聞かせるのが、こちらだったとしても…。
ああ、天使が、ウキウキ顔をして、小走りにやってくるわ。
だめよ、ボニー手を貸しちゃ。お兄様のベットによじ登る姿が、悶絶級にかわいいのだから。
ほらみて、やり切った感全開のほんのり赤いお顔。心の中でスタンディングオベーションよ。
ふふ、いったいどんな本を読んでくれるのかしら、楽しみだわ。
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