第5話女神とギリシャ彫刻
「アリー、ほらこれも食べて、あーん」
女神が私に餌付けをしてくる。
否、
白銀の髪、エメラルドのような瞳、子供が2人もいるようには思えない引き締まった体。そう、私のお母様が、心配そうな顔で、食事の世話をしてくれている。
合算、30歳のアラサーに「あーん」はきついわ…。
さらに、言うなら「あーん」してくれるのは、絶世の美女ときた。
羞恥で顔が赤くなるのも、致し方ない。
「はっ!お嬢様の顔が赤い。ね、熱が上がったのではないですか、奥様?お医者様を、お医者様を呼ばねば!!!」
ボニー、それはもういいわ。
「ちがうのです、おかあさま。しばらくおかあさまにあまえることが、なかったものですから、えーと、その、はずかしいのですわ。しゅくじょとして。」
まあ!といって大きな瞳に涙を浮かべ、ぎゅっとしてくるお母さま。
引き締まった体からは想像もできなかった、豊満なお胸を持つ美女からの抱擁、新しい扉が開きそうです。
「アリー、私の天使。いくつになっても甘えてよいのですよ。アリーが熱を出して目が覚めないと聞き、生きた心地がしなかったわ。お願いだから、私に甘やかされてちょうだい。ね?」
潤んだ瞳での懇願。幼女とはいえ、胸にクリーンヒットよ、お母様。
美女のお願いは喜んで叶えましょう。思う存分甘やかすがよい。
「ああ、アリー。生きた心地がしなかったのは私も同じだ。領地へ向かう途中、一報を聞き、おまえを置いて行った自分が許せなく・・・っ、引き返して向かうにも、時間がかかり、なぜ私は、転移の魔法を死ぬ気で身につけておかなかったのかと…私たちを許してくれアリー…」
おお、神々しい彫刻がしゃべった。
否、
シャンパンゴールドの髪にアメジスト色の瞳。これまた、子供が2人もいるとは思えない美丈夫。そう、お父様だ。さすが、雨恋。
「おとうさま、おいていったのは、ながたびにたえられないと、かんがえたからでしょ?ごめんなさい、しんぱいをかけて…。」
お父様とお母様は、領地の視察へ向かう途中だったのをわざわざ引き返してきたらしい。
「なぜ謝る?心配など、いくつでもかけてよいのだ。」
私と同じ色のアメジストの瞳が、これまた潤み出す。
しかし、2人で仕事をキャンセルしたのは、うーん。
「ねえ、おとうさま?ねつもさがり、げんきになりましたし、おとうさまだけでも、りょうちにむかったらどうでしょう?」
ふふ。安心して、「仕事と私、どっちが大事なの?」なんていう、重い女じゃないのよ。
あら?お父様の美しい顔がガビーンとなっているわ。顔色も蒼白ね。心配だわ。
「ーーっ、お前たちより大切なものなんて…。仕事には行かない!!」
…家族ファーストは素敵ですが、領地・領民は大切にしなさい…。
そして、仕事もしなさい…。
スンとしていると、お母さまが微笑みながらお父様を連れて行ったわ。
私には聞かせられない話かしら?お父様、うなだれながらも、おとなしくついていくのね。
ふむふむ、我が家のパワーバランスを見たわ。
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