第4話目指すもの

ああ、でも私、アイリーンということは、愛しの推しの顔を見ながら死ねるのね!


なんとか、痛みを感じることなくいけるかしら。微笑みを浮かべていたくらいだから大丈夫よね。

きっとノエル様が痛みを感じる隙を与えることなく、シュバっとひと思いにやってくださるのだわ。さすが、ノエル様。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





いやいや、ダメよ私。早まるな。



少年のあどけなさを残した青年のノエル様

騎士として成長していく凛々しいノエル様

大人の余裕を漂わせるノエル様

時を重ね、刻まれた皺すら男前であろうノエル様



全部見たい。


つまり死ねない。



ええ、ノエル様の色々なお姿をこの目に焼き付けるには、時間はいくらあっても足りないわ。

前世では見ることができなかったオフショットもいいわね。

ああ、何を着ても似合うにきまっている。


婚約破棄は、えーと確か15歳だったかしら。

嫌よ、嫌!そんなに早くに死ぬわけにはいかないわ。







「…うさま、アイリーンお嬢様!!!」


「な、なになに、なんですのボニー、きゅうに、みみもとで おおきなこえをだして」


「急ではありません。鏡を渡してから、眉をしかめたりへらへらしたり…顔が面白いことになっていましたよ。」




この美幼女を捕まえて、顔が面白いって何よ。失礼しちゃうわ。





「何度呼び掛けても、聞こえていないようでしたし…はっ!まさか、熱のせいで耳の聞こえが…お医者さまーーーー」



「…ボニー、おいしゃさまは もういいの、ほら、ちゃんと、かいわになっているでしょ。それより、ちょっとつかれたから ねむりたいわ。ひとりにしてくれる?」



25歳までの前世の記憶、5歳まで生きた今世の記憶。口調も感情もごちゃごちゃでまだ一つになっていないのよ。

心配してくれるボニーには悪いけど、ちょっと一人になりたいのよね。



「本当の本当に大丈夫なのですね。ちょっとでもおかしいと思ったら、すぐに、このボニーをお呼びくださいね。廊下に控えておりますから!!」



過保護ねー。本当は、部屋の中にいたいのよね。ごめんなさい。

何度も振り返り、しぶしぶといった感じで出ていくボニーを見送り、ふわふわのベットに仰向けで寝転がる。




ふぅーーーーーーー


なんにしても、目標は決まったわ。「死なない」よ。


そもそも、私の死によって、ノエル様に最悪感を植え付けるなど、なんて忌々しいのかしら。

輝かしい未来の足かせに、この私がなるなど、本末転倒。


安心してください、ノエル様。

このアイリーン、処刑されるようなことは一切いたしませんわ!!!

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