第21話 見えてきた真実
それから20分ほどの混乱、いや、大混乱のあと。
とりあえず関係者全員が椅子に座り、事情説明という名の尋問が始まった。
ちなみにジェオジュオハーレーはまだ気絶していたので、近くのソファに転がされている。
「……つまり、ウィンはハトになっていたけど、あの白いハトとは別のハトになっていて」
「う、うん」
「その姿を治すため、森の錬金術師のお世話になっていたと」
「その通りです」
アリエラが頷いた。ハトというにはちょっと苦しい生き物になっていたことはこの際隠しておく。
サン・キャンベルはどでかいため息をついた。さっきからため息をつきすぎて、呼吸しているんだかため息をついているんだがよく分からなくなっていた。
「旦那さま、申し訳ありません。私がお嬢さまに入れ知恵をしたのです」
「アリエラは悪くないよ、そもそも私がハトになったのが原因だから」
「それは本当にそうなんですが」
「あっ、そこは庇ってくれないのね」
アリエラとウィン。2人で庇いあったり罪を押し付けたりしている前で、サン・キャンベルは眉間を押さえた。
「いや、いい。そこに関しては今は置いておこう。ウィンとは今度じっくり話し合うよ」
サン・キャンベルは顔を上げ、リオとレグルスの方に視線を向ける。
レグルスは反射的に姿勢を正し、リオはだるそうに視線を返した。
「まずは2人にお礼を言おう。私の娘を助けてくれて、本当にありがとう。今すぐにでもお礼をしたいところなんだが、少し待ってもらっても構わないだろうか」
ウィンは表情を暗くした。ことのいきさつは父から聞いている。自分たちが帰るほんの少し前に、リリーがさらわれてしまったのだ。しかも、自分の身代わりに。もう少し早く帰っていれば、と悔やまれてならない。
「でも、いったいどうしてミレイユがそんなことを? あの人はジェオジュオハーレーを手に入れたんだよ」
身分違いの恋は成就した。彼女がウィンを狙う理由はないはずだ。
サン・キャンベルは口元で手を組み、深く息を吐いた。
「……ミレイユの目的は、ジェオジュオハーレーではなかったのかもしれないね」
「え?」
「ウィン。お前の悪評が出回っていたのは知っているね」
「え、ええ。悪の錬金術師をバックにつけて、ジェオジュオハーレーを惚れ薬で操ったり、ミレイユに嫌がらせしたり、元婚約者をボコボコにしたりしたっていう、でたらめなうわさでしょう」
「お嬢さま、じゃっかん真実が混ざっています」
大人しく話を聞いていたレグルスはそっとリオに耳打ちする。
「兄弟子、どれがほんとうだと思うっす?」
「知りませんよ」
2人の疑問をよそに話は続く。
「このうわさは、またたく間に街中に広まった。誰かが意図的に流したのではないかと思うほどにね。では、その『誰か』はなぜそんなことをするのか?」
サン・キャンベルはすぐに分かった。
8年前に領地を拡大して以来、こういう悪意をさんざん受け止めてきたからだ。
「おそらくミレイユの狙いは、キャンベル家の評判を下げ、領民の信頼を下げることだ」
「そんな……」
ウィンはがくぜんとした。
ミレイユには、ジェオジュオハーレーの身の上話に絶妙なタイミングで合いの手を入れていた女の子くらいの印象しかなかった。
だが今の話が事実なら、あのミュージカル婚約破棄からの一連の流れをすべて仕組むほどの策士だったということになる。
「犯人がミレイユだとして、不明なのは動機だ。ここまで手の込んだことをするのだ、よほどキャンベル家に恨みがあるのだろう」
サン・キャンベルはソファの上で気絶しているジェオジュオハーレーに近づいた。
「ということで、それを探るためにもこいつを叩き起こそう」
ウィンは父親の横顔が鬼の形相へと変化する瞬間を見てしまった。
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