第2話 弱体化された魔法
そして時は経ち、すでに5年間が過ぎていた。
生まれたばかりの乳児期では、泣くことしかできず、何なら歩けないので、色々手助けしてもらわないといけなかった。何もできないのは苦痛だったな。
そして、現在自身がいるのは椅子の上だった。机の上には大きいいちごがたくさん乗ったケーキがあり、その両隣には俺の両親がいた。
母親の方は純人間だが、父親の方は髪が赤く、魔族特有の魔力が流れている。
「「5歳のお誕生日おめでとう。レイト」」
「...いつもありがとうね。父さん、母さん」
「「......」」
...え、無反応になった。どうしたんだろ。少ししたあと、両親の目から涙が溢れてきた。
「ど、どうしたの?」
すると、体が暖かくなった。両親に抱かれたからだ。
「2人...とも?」
「ありがとうね...レイト」
「絶対に幸せにしてやるからな...」
「ありがとう。父さん、母さん」
*
「のんびり屋台を回るか」
俺は、腕についている腕時計というものを見る。前世の世界にはなかったものだ。
これは二人がさっき、誕生日プレゼントとしてくれた。そして現在、夜の8時半を回ったところだ。
父親に「外に出て星を観察したい」と言ったら、出さしてくれた。まあ、本当はあるきながら魔法の技術や制御をできるようにするための練習だけどな。
「でも、魔法は本当に使われなくなったんだな...」
近所の繁華街のようなところに来たが、どの屋台も明るい。ステラが言っていた電気エネルギーとういやつだ。前から魔法だけではできることが少ないと思っていたから、これを機に電気エネルギーというものも学んでいこうと思った。
「お、坊主」
誰からか声をかけられた。何かと思って後ろを振り返ると、赤い髪の大男が立っていた。後ろに背負っている大剣を見て、冒険者かなと俺は推測した。俺は、少々身構えた。
すると大男は手を横に振って、敵ではないという意志表示をした。
「そんな身構えなくていいぜ。お前一人か?お母さんとお父さんはどこに行ったん...」
大男は、俺を見たまま少し硬直した。
「...なるほどな。お前は
俺は、自分の服を見る。確かに服の襟に変なものがかかっていた。家も豪華ではあったしな。
でかこれが、現在の伯爵家の目印か。正直、上下関係はなくなったと思ったが、やはり200年近く経ってもあまり変わらないものなんだな。
「そりゃこんな幼いのに魔力が異次元なんだな。さすがの俺でもびっくりするわ」
「いや、別に決闘だったら負けていますよ。魔力があっても制御したことありませんし」
「...いや、お前はもうかなりのレベルのことまでできるだろ」
大男はそう言って大きく笑う。そして、繁華街のはずれを指差す。
「ちょっとお前の魔法を見てみたくなった。見してくれないか?」
「別にいですけど、こんなところじゃ被害が...」
「だから外に行こうってことだ」
外...おそらく城門の外だろう。そもそも外には何があるかわからないからな。見るだけ見て、撃ったりして運動するか。
「うん、じゃあいこうかな。軽い運動にもなりそうだし」
「軽い運動か...だいぶ魔物は弱くない方だけどな」
「殺されそうになっても、君がいるから大丈夫かなと思って...」
この人は、前世の軍団長と近い雰囲気がある。おそらく長生きしている者だろうから、かなりの強さだと思う。
「じゃあいこう」
俺たちは城門のある所へ足を進める。
「俺の名前はグラブだ。おまえは?」
「シオ...じゃなくてレイトだね」
「レイトか、いい名前だな」
「そう?」
俺たちは会話をしながら門の前に向かう。会話をしながらだったからか、気が付かない間に着いた。門には門番が二人いて、そのうちの一人がやってきた。
「レイト伯子殿下...この男は」
「僕の護衛です。怪しいものではないので大丈夫ですよ」
「そうですか、本当ならいいですけど...」
門番の一人はそのままさっきまでいた定位置に戻っていった。
そもそもこの門番とグラブが戦ったら絶対に瞬殺だろうし。
そんなことを思いながら俺は、門の下をくぐり抜け、広大な大地につく。緑の草原の草原が、そよ風とともに吹かれていた。
「今は夜だからたまに強い魔物が来るかもしれないな。例えば...そういうとあんま思いつかんな」
「う〜ん、メデューサとかダークナイトとかかな?」
「どっちもAランクの上位層と下位層に位置する魔物じゃねえか...それよりはだいぶ弱いとは思うぜ」
へえ、前世ではメデューサがBランクでダークナイトがCランクだったんだけどな...
討伐難易度が上がっているってことはやっぱり戦闘技術が落ちているんだな。
これじゃあドラゴン系が出たら国家滅亡しちゃうな。
「そういうのは騎士団と魔法師団が討伐してくれんのさ」
「ふ〜ん、そんなのがあるんだね」
でも、そういうところも実力は落ちてきているんだろうな...メデューサ倒すのに騎士団の小部隊一つくらいが犠牲になりそう。
「まあ、そんなのはあとでいいから、いいから」
グラブは魔法を放つのを主に目で催促してくる。そんな目で見てくんなよ...
「仕方ないなぁ...」
「どれどれぇ?」
まずやろうと思う魔法は火属性の中級魔法である
その為、手の周りに魔法陣をえがく。そして、とき
「
手のひらから火の玉...というよりも火の塊だろうか。玉という原型はなく、大きく、そして真っ直ぐ放たれた火の塊は、通った草原を見事に焼き尽くしていく。
「...前の体よりも、だいぶ弱くなっているな」
だいたい威力が六分の一くらいになっていた。やはりまだ子供の身体なのが原因なのか、うまく魔力を放出することができない。グラブはどうかというと、メッチャクチャ笑っている。
「お前、本当に草原消えるぞ」
「え...」
周りを見渡すと、先程の
俺は、前世の練習用の場所である黒曜樹の森ではないことをこのときだけ忘れていた。
「...仕方ないな、手伝ってやるから。お前も水魔...」
「大丈夫、
俺は、魔法陣を一気に8個生成して、たくさんの火元へ水を放っていく。
その水の玉も直径30センチはあり、その水の玉は火に向かっていき、消火していく。
そして、あまり時間のかからないうちに、俺はすべての火を消火した。
魔法を連発したが、魔力はあまり減ってはいなく、上級魔法を数回連発できる程度には残っている。俺は体をグラブに向ける。
「こんな感じです」
「ものすごい破壊力だったし、魔法の属性を2つも持っているなんてな...」
「いや...ほぼ全部の属性は操れますよ」
俺の元々の適性である属性は火・水・風・土の基本的な4属性だ。これでも凄い方って言っちゃえばそうではある。だけど、それでも魔王になれるほどではなかった。
だから...光と闇の2属性と、炎と雷の上級属性の適性を自力で手に入れた。
「必死に努力していればこうなります」
「まじでどんなことをしてたんだ?」
「 ただの努力です」
そう、俺はただの努力で魔王まで成り上がってきた。
魔法制御の練習をずっとしていた思い出があるな。暇だったよな〜。
でも、こいつならまだ全然強くなれると思うけどね。
「俺はもう少しこの辺の敵を倒しているが、残るか?」
俺は、腕時計を見る。針は夜の9時半頃を指していた。
そろそろ帰らないと両親に心配されてしまうな。
「そろそろ帰らないといけないから。またいつかで」
「まあ、そうだな。どっかであったらな」
俺は後ろを向き、その場をあとにしようとする。
すると、冷たい風が頬にあたった。今は春だが、まだ夜になると冷え込むな。
「...今日は早く帰ったほうがいいぞ。風を引いてしまう」
「いや、全然...うん、そうだな...そうする」
グラブは寒くなさそうに言っていたが、鳥肌が凄い立っていた。外見が筋肉ムキムキでも所詮は中身はスカスカなんだな〜と思った。
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