10月
『ハサミ』
首吊りの木に、ハサミババァが棲みついたんだ。ブランと吊り下がったが最後、忽ち現れて、身の丈ほどの鋏をジャキン。ドサリと落ちた体にガミガミ叫んで消える。今じゃその木を首吊りと呼ぶ人も少なくなった。
暗い顔した誰かがいたら、ついってってみなよ、ジャキンと綱切るババァが見られるかもよ。
(2022/10/02)
『あしたは』
布団に潜り込んで、ごめんね、と呟く。
ごめん。ごめんなさい。ごめんね。今なら何でもなく口にできるのに、キミの前に立つと頭が真っ白になっちゃって、何にも言えなくなっちゃう。困ったな。
大好きなキミと遊べないのは嫌だから、絶対、きっと、明日には。
ちゃんとごめんねって、キミに言うんだ。
(2022/10/06)
『救世主』
「世界を救う代わりに皆が私を忘れてしまう」なんて物語みたいな事があったなら。
フザケた質問に、君とまた出会ってまた恋をするよ。と言ってくれたあなた。
そうね、信じる。
世界の危機がまたあって、私が全てを解決したとしても、私はあなたに会いに来て、また恋に落ちてもらうんだわ。きっとね。
(2022/10/11)
『さよなら』
一緒にいられなくなる予感はあった。本当は最初から、あなたは私に興味がなかったんだよね。
ねぇ、最後に一度、私の手を握ったのはどうして?
そこから気持ちが根を張って、簡単に忘れられなくなってしまった。
だけどいつか、ちゃんと引っこ抜くから。それまで想っていることだけは、どうか許して。
(2022/10/13)
『自由』
暗闇に放り出されたような気分だった。前も後ろも分からない。眼前の自分の手すら見えないような闇の中。どこに何があるのか、進んでしまってもいいのか。立ち止まってばかりはいられないのに。
だけど、今なら何でもできる。
明かりをつけてくれる代わりに全てを決めたあの人は、もういないのだから。
(2022/10/14)
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