9月

『お迎え』

女はいつも外を見ていた。薄ら笑みを浮かべて、囁き声で誰かに話しかけているようだった。日がな、一日。

えらく日差しの眩しい日、女は珍しく大きな声で「あぁ、やっと」と発して立ち上がり、目の前の窓を開けてそのまますぅと消えてしまった。

残ったのは、パラパラと散らばる向日葵の種だけだった。

(2022/09/04)


『となり』

君の後頭部ばかり見てる。君はずんずん前へ進んでしまうから、私はいつも君を後ろから追いかけてる。

ね、私たち、付き合ってるんだよね?

気持ちを込めて、手に触れた。

歩調の緩んだ君が、私の隣に並ぶ。

何だ、こんな簡単なことで、隣に並べたんだ。

私は君と一緒に歩く。手をつないで、隣を歩く。

(2022/09/07)


『ひかり』

世界の端っこにポツンと一人残されたような気持ちになって立ち止まった。恐怖と寂しさがぐるぐる渦巻いてその場にうずくまってしまう。

「大丈夫?」

声が聞こえて顔を上げた。からからに乾いた喉があなたの名前で震えて、笑ったあなたが手を差し出す。

あぁいつだって、その手をくれるのはあなただ。

(2022/09/22)

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