第11話「蓮花の思い」
ガチャ
守里: ただいま!
桜: ただいま。
結真: あら、おかえり!
守里: 色々と問題なかった?
結真: うん!ただ、足りないものとかあるから、今週末に買い物に行こうかなって思ってる。
守里: 分かった。
結真: じゃあ2人とも荷物置いて、手洗っておいで。
守里 桜: はーい。
2人は手を洗い、リラックスタイムへ。
結真: 桜はお友達できた?
桜: うん!できたよ!
結真: 良かったね、大事にしなよ。
桜: もちろん!
守里: そういえば美月さんは?
結真: 30分前ぐらいには帰ってきて、今は部屋にいると思う。
守里: そうなんだ、終礼終わったら、すぐに学校を出ちゃったみたいで。
結真: まぁ、あの子はそんな感じだと思うから、今のところは。
今のところはって…
守里: じゃあ蓮花さんも部屋?
結真: いや、それがまだ帰ってきてないのよ。
桜: え?でも能中は今日、昼までなんじゃ…
結真: そのはずなんだけどね。私も早く帰ってくるんじゃないかなって思ってたんだけど、友達とでも遊んでるんじゃない?
守里: そうかもね。まぁ少ししたら帰ってくるか。
桜: …
そして時間が経ち、夜9時…
守里達は夕食を済ませ、守里がお風呂に入ろうとしていた頃。
守里: まだ蓮花さん帰ってこないのか…
結真: さすがに、遅すぎだね。
守里: もしかしたら、道に迷ってるのかも。
桜: いや…
結真: 電話かけてみようか。
プルルルル
蓮花に電話をかけるが…
結真: つながらない。
守里: なんか事故にでも巻き込まれたんじゃ…
桜: もしかして…
守里: 探しに行かないと!!
結真: 待って!闇雲に探しても!
守里: でも、居場所の手がかりがないなら、走り回って見つけるしかないよ!
桜: じゃあ、さくも行く!
守里: それはダメ!!もう暗いから危ないし、土地勘のある僕が行くのが1番良い。絶対、蓮花さんを連れて帰ってくるから、待ってて。
そう言って、守里は家を飛び出して行った。
結真: 蓮花、どこに行ったんだろ…
桜: ねぇお姉ちゃん、蓮花はもしかしたらこの家に居たくないのかもね…
結真: 確かにあの子は、あの時のトラウマが未だに強く残ってるから、守里をまだ受け入れられてないし…
桜: 蓮花…
◇◇◇
家の外に出た守里は、そのまま走り、人通りの多い通りまで出る。
蓮花さん、どこにいるんだろ…
歩きのはずだから、そこまで離れたところには行ってないと思うんだけどな…
もし、何か事件に巻き込まれていたら…
あ、あの人達に力を借りれないかな…
守里は、日村からもらった携帯を取り出し、電話をかける。
ブーブー
ピ
森田 T: どうしたんですか、坊ちゃん。
守里 T: 森田さん、いきなりで申し訳ないんですが、人を探してもらっていいですか?
森田 T: 人探しですね。もちろん了解です。それで、どなたを?
守里 T: 蓮花さんです。
森田 T: …蓮花さんというと、団長の奥様の1番下の娘さんですよね?
守里 T: はい。
森田 T: 近くの防衛団員と協力して必ず見つけます。
守里 T: よろしくお願いします。見つけたら、すぐに僕に知らせてください。
森田 T: はい!お任せください。
ピ
ポツポツ
守里: あ…
ザー
森田との電話を終えたタイミングで、雨が降り出した。
守里: クソ、こんな時に…でも探さないと。
一旦、蓮花さんを探しつつ、能中に向かおう。
どうか無事でいてくれ…
守里は再び走り出した。
◇◇◇
能中前
守里: ハアハア、いない。
家からここまでにはいないか…
伊衛能高校と自宅の中間ぐらいにある、伊衛能中学校の正門前まで来た守里は、未だに蓮花を見つけられていなかった。
もうちょっと遠くまで探そう。
ブーブー
守里が再び走り出そうとしたところで、守里の携帯が音を鳴らした。
◈◈◈◈
雨の降る中一人の少女が橋の下で佇んでいる。
はぁ…
あのお家に帰りたくない…
守里君はあいつらとは違うって分かってるのに…
どうしても受け入れられない…
あの時の光景がフラッシュバックしちゃう…
もう嫌だ…
今の自分が嫌い…
昔に戻りたい…
また家族みんなで暮らしてた頃に戻りたい…
蓮花: うぅ…
蓮花の目に涙が溜まる。
お母さん。
お父さん。
結真お姉ちゃん。
美月お姉ちゃん。
桜お姉ちゃん。
蓮花どうしよう…
「蓮花さん!!」
蓮花: え?…
蓮花が後ろを振り向くと、びしょ濡れで、息を切らした守里が立っていた。
◈◈◈
守里: 大丈夫?怪我してない?
そう言って守里が、蓮花に近づく。
蓮花: あ、いや…大丈夫ですから!
しかし蓮花は俯いて、守里から遠ざかってしまう。
守里: え…
蓮花: ご、ごめんなさい…大丈夫だから、大丈夫だから。
守里: いやあの…
蓮花: 守里君はなんも悪くないから、蓮花は大丈夫だから…
蓮花は、ただ大丈夫だからと呟く。
守里: 落ち着いて、蓮花さん。一旦家に帰ろう。こんな雨の中じゃ風邪ひいちゃう。
蓮花: いや!!もう放っておいてください!蓮花は大丈夫ですから!
守里: 放っておけるわけないよ。
蓮花: いいから、もう蓮花に構わないで下さい。
守里: そんなの無理に決まってるじゃないか!!
守里が叫ぶ。
蓮花: …
守里: そうやって泣いてる蓮花さんを放っておけるわけないじゃないか!
蓮花: 放っておいてよ!!
蓮花も守里に対抗するように叫ぶ。
守里: 家族が泣いてるのに、それを見て見ぬふりすることはできないだろ!!
蓮花: 家族って…まだ一日じゃない!!そんなのほぼ他人でしょ!!!
守里: 他人なわけあるか!家族にいつからなんて関係ない!!もう僕達は家族なんだよ!!
蓮花: 家族…
守里: 蓮花さんがまだ、僕のことを家族だと認めてないことは分かってる。でも、僕からしたら蓮花さんは、僕の大切な家族なんだよ!!
蓮花: …
蓮花は守里の言葉を聞き…
守里: お姉ちゃん達も心配してるから、家に帰ろう…蓮花さん。
雨音が響く中、少しづつ、蓮花の気持ちが口からあふれてくる。
蓮花: 昔に戻りたい…
守里: え?…
蓮花: お母さんとお父さんとお姉ちゃん達、みんなで暮らしてたあの頃に戻りたいの…
守里: 蓮花さん…
蓮花: 分かってるよ…もう戻れないって。でも、ふと考えちゃうんだ。あの頃に戻れたら、こんなに悩まなくてもいいから。
守里: …
蓮花: 蓮花も守里君を家族って認めてないわけじゃないの…でもどうしてもアイツらが…
守里: アイツらって…いや大丈夫、ツラいだろうから言わなくても…
蓮花: いや、言う。
蓮花は、自分の心に刻まれているトラウマについて話し始めた。
蓮花: 蓮花達がここに来るよりずっと前にね、急にお父さんが家に帰って来なくなっちゃって、そしたら家に、たくさん男の人達が来るようになったの。
かおりさんの話の中にもあったな。
蓮花: 最初は家の周りを取り囲んで、叫びながら扉や壁をずっと叩いてきただけだったんだけど、しばらくしたらずっと蓮花達に付きまとうようになって…グスン…怖くて…
蓮花の瞳に、再び涙が溜まる。
蓮花: それがトラウマになっちゃって、男の人を見るとどうしても…
守里: …
蓮花: 男の人達が家に来なくなった後、お母さんとお姉ちゃん達で暮らしてても、やっぱりどうしてもまた、アイツらが来るんじゃないかって不安で…
そうだったのか…
かおりさんからも聞いたけど、蓮花さん達家族には、こんな過去があったんだ。
でも…
守里: もう大丈夫だから、ソイツらが蓮花ちゃん達に近づくことは絶対にないよ。
蓮花: なんでそんなことが分かるの?
守里: それは…
白城家を襲っていた奴らは、防衛団が全員捕縛していて、白城姉妹の引越しについても、防衛団の裏からのサポートにより、敵組織への情報漏洩の可能性もほとんどないみたい。
それに僕の家は、森田さんと矢口さんに守られてるから、その敵組織が蓮花さん達、白城姉妹に接触することはないと思う。
でも、ここで防衛団の話をするわけには行かない…
守里: …僕が絶対に守るから。
蓮花: 守里君…
守里: 家族は絶対に傷つけさせないから、大丈夫だよ、蓮花さん。
暖かく力強い守里の想いを受け、蓮花の心の扉が開き始める。
蓮花: …
守里: まだすぐには無理かもだけど、なんかあったら頼って。僕は蓮花さんのお兄ちゃんなんだから。
蓮花: …あ、ありがとうニコッ
守里: っ!!
守里は初めて蓮花の笑顔を見る。
そして、蓮花の気持ちにひと段落が着いたところで、雨が止んだ。
守里: あ、雨止んだ。
蓮花: そうだね。
守里: もう大丈夫?
蓮花: うん、なんか守里君に話したら落ち着いたよ。
守里: そっか良かった。
蓮花:(守里君なら…)
守里: もう家に帰れる?
蓮花: う、うん!帰ろ!!
守里: 結真お姉ちゃん達も心配してるだろうから、早く帰らないとだね。
そう言って、守里は蓮花に手を差し出す。
蓮花: うん!!
守里と蓮花は手を繋いで家へと歩き出した。
森田: いやー良かった、坊っちゃん。
矢口: 妹さんと仲良くなれて良かった。
森田: 俺らも探し回ったかいがあったな。
矢口: あぁ。
遠くで守里達を見守っていたこの2人も、安堵していた。
to be continued
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