第4話「聞き分けが良いと、話は進む」

景信: お前が防衛団の次期団長だからだ。



守里: は?




景信の顔を、驚いた表情で見る守里。




景信: 防衛団はこれから、敵勢力と全面抗争に移る。これまで通り俺が表に出ることはないんだが、戦いが激化するからな。俺が殺られる可能性が高まる。だから最悪の場合を考えて、次期団長のことをお前に話しておく必要があったんだ。



守里: …次期団長の話は分かったんだけどさ、なんでそれが僕なの?



景信: それは、まず俺の息子というか、俺と同じ血筋だからだ。



守里: 防衛団の団長は世襲制なの?



景信: いや、そういうわけでもないんだが、まぁ色々と理由があるんだよ。



守里: 僕、喧嘩全く強くないんだけど…



景信: 問題ない…



守里: もうこの話を聞いた以上、それを受け入れないということはできないか…



景信: そういうことだ。巻き込んでしまってすまない。



守里: で、僕は何をすればいいの?



景信: それなんだが、基本的に俺ら防衛団の方からお前に対して、やって欲しい事は無い。



守里: どういうこと?



景信: 防衛団と関連のある活動をして、殺されたら元も子もないからな。



守里: 確かに…



景信: お前はこれまで通りに生活してもらっても構わないんだが、防衛団の護衛が付く。



守里: 分かった。でもそんなことしたら、僕が防衛団と関わりがあることを知られるんじゃない?



景信: そこは大丈夫だ。陰ながらに護衛をすることになっている。お前の普段の生活に支障が出ることも、まず無いだろう。



守里: じゃあ護衛される立場として、誰が護衛をするのかを教えて貰ってもいい?



景信: もちろんだ。入って来い。




父さんがそう言うと、扉が開き、僕をここまで連れてきた黒スーツの2人が入ってきた。




守里: え、あなた達が僕の護衛なんですか。めちゃくちゃ目立ちそうですけど。



景信: お前ら自己紹介しろ。



??1: 了解しました。




すると黒スーツはサングラスを外した。




守里: あれ?あなた達は…



??1: はい。いつもお世話になっております。坊ちゃんの家に配達をやっております。"森田哲也もりた てつや"と申します。



??2: 同じく"矢口義隆やぐち よしたか"っす。



守里: 道理でいつも同じ人が配達に来るなって思ってたんですよ。ずっと僕の護衛をしていたんですね。



景信: そうだ。俺がこの2人にお前の護衛を命じていたんだ。



森田: 坊ちゃんの家に来る荷物に危険物が入っていたらマズイですからね、私達が事前に中身を検査して、直接配達していたんですよ。



矢口: これからも同じ形で護衛していくんで、よろしくお願いするっす。



守里: はい、よろしくお願いします。



景信: この2人は敵側に正体がバレていないからな。学校内の護衛は流石にできないんだが、家に居る時と、どこかに出かける時にはこの2人が護衛に付く。



森田: 坊ちゃんからある程度離れて、護衛してますから。なんか用がある時は電話して下さい。



矢口: あと、車を出すこともできるっすからね。



景信: この2人をこき使ってやれ笑



守里: 分かった。



景信: で、あともう1人紹介したいやつがいるんだが。



守里: 誰なの?



景信: もうすぐ来るはずなんだけどな。




ダッダッダッダ



ドンッ



勢いよく扉が開いた。




??: いやーごめんごめん、遅れた。



景信: やっと来たか、遅いよ〜日村さん。



日村: ちょっと色々とあってね。



守里: あれ?日村おじさんじゃん、久しぶり。



日村: おう!守里君久しぶりだね。



守里: 僕が中1の時に会って以来かな。



日村: うん〜多分そんぐらいだと思う。で、設楽さんどこまで話したの?



景信: 防衛団と、護衛のことはもう話したよ。



日村: じゃあまだ1番重要なことは、話してないんだね。



守里: 重要なことって?




まだなんかあんのかよ…




景信: 今から話すよ。とその前に日村さん自己紹介。



日村: あ、そうだね。俺は防衛団の副団長をしている"日村正樹ひむら まさき"。って名前は知ってるか笑



守里: あ、そうなんだ。父さんのことをよろしくお願いします。



日村: うん、君の父さんは俺が絶対に守るよ。



景信: ハッハッハ、カッコいいこと言うじゃない日村さん。



日村: だろ笑



守里: やっぱり仲良いね。



景信: まぁ日村さんとは昔からの仲だから。



日村: じゃあほら、設楽さん。守里君に話してあげな。



景信: そうだな。守里、これから話すことが、1番重要だ。



守里: なに?



景信: 俺な、再婚することにした。



守里: …え、どういうこと?父さんは今から敵と戦うことになるんでしょ。そんな時期に再婚だなんて、何を考えてるの?



景信: うん、お前の言いたいことはよく分かる。だがな、男は恋をしてしまったら止められねぇんだ。



守里: 何カッコいいこと言おうとしてんだよ。



景信: 絶対に嫁は守りきるから。



守里: ふぅ…まぁいいんじゃない?僕の家に来るわけじゃないんでしょ。



そう言っていると、奥の扉が開いた。




ガチャ




??: そうよ〜、私は景信さんの近くで、景信さんを手助けするから。



守里: えーっと…



景信: かおり…俺の方から紹介しようと思ったのに。守里、この人が俺の再婚相手の…



??: "白城しらきかおり"と言います。守里君よろしくね。



守里: すっげぇ美人だな〜…あ、いやすみません。



かおり: フフフ、嬉しいこと言ってくれるじゃない。流石、景信さんの息子ね。



守里: かおりさん、よろしくお願いします。



景信: だろ笑、守里は俺に似てるからな。



守里: それは嫌かも笑



景信: なんでだよ笑



かおり: 仲がいいのね。



守里: ところで、かおりさんは父さんのどこに惹かれたんですか?



景信: おいおい笑



かおり: それはね、景信さんの強さと優しさにかな。



守里: へぇ〜



かおり: 景信さんが私を救ってくれたのよ。もう、あの時の景信さん本当にカッコよかったんだから。



守里: 父さんがねぇ〜



景信: ちょうど2年前ぐらいかな、かおりさんの家が例の敵勢力に狙われててな。



かおり: 私がもうダメって思ったところで、景信さんが私の前に手を差し伸べてくれたのよ。



◆◆◆◆◆◆◆



約1年半前



ドンドンドン




「おいおい、早く出てこいよ!」



「もう逃げ場はないよ〜」




なんで私達がこんな目に会わなきゃいけないの。




「なんであいつはこんな、綺麗な嫁達の事を、俺らに教えずに死んじまったのかねぇ。」



「ククク、そんな事言うなよ。俺らが殺ったんだし。」



「それもそうだなw」




あいつらがあの人を…




「そちらから来てくれないなら、無理やり行くしかないですね。」




あの子達だけでも守らないと。




「では行きますよーw」




もうダメか…




「あ、てめぇ誰だ。お前らさっさと殺れよ。」




バタバタ




「クソ、こいつ強い」




ドスッ




「グハァ」



「グヘ」




外から声が聞こえなくなった?


何が起こったの?




「大丈夫ですか?」




え…




「もうこの家を取り囲んでたヤツらはいなくなったんで、安心していいですよ。」




助かったの?




「この家も引っ越した方がいいですから、落ち着いたらこの番号に電話してください。私たちが責任を持ってお守りするので。」




もう大丈夫なの?安心していいの?




「では、私はこれで…」




ガチャ




景信: え?…



かおり: あなたが助けてくれたんですね。



景信: …無事で何よりです。



かおり: ありがとうございます。



景信: いえいえ、当然のことをしたまでです。それに私の仕事でもありますから。



かおり: …



景信: この番号に電話をかけて下さいね。新しい家を用意しておきますので。そこで皆さんで暮らしてください。



かおり: 本当にありがとうございます。



景信: では…



◆◆◆◆◆◆◆



かおり: まだこの時は、景信さんのことを命の恩人としか思ってなかったんだけどね。でもどうしてもまた、景信さんに会いたくなって、探したのよ。



景信: 俺はあの時以降、会わないようにって思ってたんだけどさ。仕事場に行ったら、居たのよ。もうびっくりして笑



かおり: 大変だったのよ笑、景信さんを探すの。



守里: どうやって、かおりさんは父さんを見つけたの?



かおり: 秘密よ笑、強いて言うなら愛の力かしら笑



景信: 絶対に見つからないような場所にいたからね。ヤバいと思って、システムの見直しをしたよ。



かおり: そこから定期的に景信さんと会うようになって、会う度に景信さんに惹かれていってね。



景信: 俺もかおりと話していく内に好きになって、この前プロポーズしたんだよ。



守里: そっか。



日村: 設楽さんずっと緊張してたんだよ。プロポーズするまで笑



景信: それは言わない約束だろ笑、日村さん。



かおり: プロポーズしてくれて、本当に嬉しかったんだから。



守里: 父さんは、かおりさんをしっかりと守らないとだね。



景信: 命に替えても守るよ。



かおり: もうっ!景信さんカッコいいんだから〜




ギュッ




日村: またイチャイチャして笑。まぁ、これで守里君に伝えなければならないことは全部伝えたのかな。



景信: おう!重要なことはこれぐらいか。もう一旦離れてよ、かおり。



かおり: いやだ〜




父さんも満更でもない感じだな笑




守里: じゃあ僕は帰っていい?



日村: そうだね。



景信: もう中々会うこともないだろうけど、元気でな。



かおり: 守里君、じゃあね。景信さんのことは任せて。



守里: よろしくお願いします。



景信: あっ日村さん例のものは?



日村: そうだそうだ、最後にこれを渡さないとだった。



守里: なに?




日村さんが懐から最新型の携帯電話を出した。




景信: それはな、俺らとの連絡手段だ。森田とかと連絡を取る時に、お前の携帯じゃ変だろ。



日村: それに、俺や景信さんの番号も入ってるから、何かあった時はこれに連絡してくれ。



景信: あくまで、緊急の時だけだぞ、寂しいからって連絡してくんなよ笑



かおり: あらあら、別にいいじゃないの笑、ねぇ守里君。



守里: いやいや、そこまで子供じゃないよ。じゃあ有効活用するね。ありがとう。




そう言って携帯を受け取った。




守里: 父さん、じゃあね。あと、死なないでね。



景信: もちろんだ。じゃあな。



日村: 頑張ってね。



かおり: 守里君バイバイ!!




こうして、守里はその部屋を後にした。





to be continued

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