第3話「ようこそ!地獄の底へ?」

ギフトモールの地下駐車場




守里: えーっと確か46番だったよな。




駐車場内をうろつきつつ、目的地を探す。




守里: ここら辺のはずなんだけど…ん?




前方に異様な雰囲気を放つ車がある。




守里: いやいや、あれなわけないよな笑




もう一度手紙に書いてある番号を確認してみる。




守里: ふん、46番。




再び視線を前方に向ける。




守里: え、あの黒いリムジンが止まってる所が目的地かよ…近づきたくすらないのに…




渋々、守里はそのリムジンに向かって歩みを進め、リムジンの前に立つ。


リムジンの窓はスモークになっていて、中が見えない。




守里: いや、まだ父さんが来てないだけかもしれないしな。




そう言いつつ、スマホを確認すると、14時になっている。



あの几帳面な父さんが時間に遅れるってことはないと思うんだけど…


誰にでも想定外のことは起こるからな。気長に待とう。



そんな風に守里が思っていると…



ガチャ



後ろのリムジンの扉が開く。




守里: え…




守里が後ろを振り向くと、そこには黒いスーツを着て、黒のサングラスをかけた男が立っていた。




??1: 坊ちゃん、お待ちしておりました。どうぞお乗り下さい。




そう言って、スーツの男はドアを開けた。




守里: いや、あの…人違いです。




??1: いえ、お父上の方から坊ちゃんを乗せて来るようにと言われておりますので。ニコッ




守里: は、はぁ…




父さんが来るわけじゃないのかよ、ってか…




守里: 怖…




??1: …




スーツの男が扉を開けたまま、笑顔でこちらを見てくる。



いや怖い怖い怖い怖い…


これは乗らないとヤバいやつかも。




守里: 分かりました〜ニコッ




こちらも負けじと笑顔で返す。




守里: し、失礼します。




??1: どうぞ。




守里は勇気を振り絞って、黒のリムジンに乗り込んだ。




守里: うわ、座り心地が良すぎる…




緊張しつつも、座席の座り心地に驚く。



するとスーツの男が電話をかけ始めた。



ピ




??1 T: 坊ちゃんを車に乗せた。そっちはどうだ、駐車場に怪しいヤツはいないか。




いや、誘拐犯かよ。


やっぱり乗らない方が良かったか。




??1 T: 分かった。すぐに戻って来い。




ピ



もう1人誰か来るのか。


そうなると、とうとう逃げられなくなるぞ。


??1がこちらを振り返る。




??1: 坊ちゃん、もうすぐで出発しますんで、もう少々お待ちくださいね。ニコッ




守里: は、は、はい。分かりました。




怖っ!この人の笑顔やっぱ怖っ!



逃げたい気持ちを抑えたまま、数分待っていると…



ガチャ




??2: お待たせ、兄貴。




黒いスーツを着て、サングラスをかけた男が運転席に乗ってきた。




??1: おい!遅いぞ。坊ちゃんをお待たせするんじゃない。



??2: すいません。坊ちゃん。



守里: い、いえ〜お構いなく〜



最初の人の方が偉いのか。


にしても2人とも黒ずくめとは趣味が悪い…


某ハンターかよ。




??1: では坊ちゃん、出発しますんで。



守里: は、はい。



??2: 安全運転で行くっすよ。




どこに連れていかれるんだろ。


どうか父さんのところであってくれ。



守里が自身の無事を願い、俯いている間に、車は駐車場を出る。



ちなみにその間の会話はない。


一応逃走することも考えて、外を見ておこう。



そのまま車は、守里が住む町を越して、隣町の方へ進んで行った。



いや、どこまで行くのよ。


もうここら辺は土地勘があんまりないから、逃げきれないわ。


さよなら皆さん。今までありがとうございました。



守里が感謝を述べている時、古びたビルの地下駐車場に、車が入った。



また地下かよ。



車が止まり、??1が外に出る。



ガチャ




??2: あと半分っすよ、坊ちゃん。



守里: はい…




まだ半分なのかよ。


どこまで行くんだ…



外に出た??1が駐車場の壁をノックする。



何をやってるんだ?



すると壁がスライドし、黒のスーツにサングラスをかけた男が出てきた。



はい、3人目の黒スーツが現れました!!


しかも忍者屋敷かよ!ここは!!




??1: ボソボソ




え?なんか言ってる…ルート?



??1の暗号を聞くと、黒スーツは頷き、壁の向こう側に戻って、??1も車に戻ってきた。



一体何が起こるんだ。



ゴゴゴゴゴコ



へ?



目の前の壁が開いた。




??2: さっ行くっすよ。




守里を乗せた車はそこの中に入っていった。



はぁ、もう何が何だか分からないよ。


さらに地下の方に行くのか…


僕が行くのは地獄の底かな笑





またしばらくして、車が止まった。



ずっと地下を進んでいたため、もうここがどこかは分からない。



??1が再び外に出て、守里の横のドアを開ける。



ガチャ




??1: さっ坊ちゃん、降りて下さい。もうすぐで、お父上とお会いできますよ。



守里: は、はい。降ります。



守里は恐る恐るリムジンから降り、??2も降りる。




??2: さぁ行きましょっか。




??1と??2が守里を挟む形で進んでいく。



はぁ…


本当に父さんに会えるのだろうか。




お、あれはエレベーターか。



前方にエレベーターが見える。




??1: 坊ちゃん、乗って下さい。




守里は言われるとおりに、エレベーターに乗り込む。



??1は2と6を同時に押した。



え?どういうこと?


また新たに数字が追加された。


▽?…数字ですらないじゃないか。



そのボタンが押され、エレベーターはさらに下に進む。



また下かよ〜〜〜



チーン




??1: こっちです。




??1について行くと、重厚な扉が見える。




??2: とうとうお父上との対面っすよ。ここからは1人でお願いするっす。



守里: え、はい。




ここから1人か…


この扉の先には何があるんだ。



そう思いつつ、守里は扉を押し開いた。



ギギギギギ



扉を開き、前方を見た守里の視界に入ったのは、高級そうな椅子に座った男だった。




??: よっ!!久しぶりだな!守里。元気にしてたか?



守里: 父さん!!




目の前にいたのは、守里の父親である"設楽景信したら かげのぶ"だった。




景信: いやーほんとに久々だな。中3の春の引越しの時以来か。最近どうだ?



守里: 楽しく過ごしてるよ、日向子や飛香、春時と一緒に。



景信: 相変わらず、日向子ちゃん達と仲良しそうで安心だ。




景信は笑顔で、暖かい視線を守里に向ける。




守里: ってか、色々と聞きたいことがあるんだけど。



景信: お、なんだ。せっかく会えたんだから、答えてやるよ。



守里: じゃあ、まずはここはどこなの?、いきなり黒いリムジンに乗せられて、1時間ぐらい走って来て…



景信: ハッハッハ、それはすまなかったな。でも、ここがどこかはちょっと答えられないな。



守里: えーいまさっき答えるって言ったじゃん。



景信: いや、その質問に答えることはできないんだが、俺が今からお前に伝えることを聞いたら、理由が分かると思うぞ。



守里: じゃあ、それを聞かせてよ。



景信: 分かった。ただし、これを聞いたら、これまで通りの生活は出来なくなるぞ。



守里: え、そんな話を自分の息子に聞かせようとしてるの?



景信: まぁな。でもお前が聞きたくないって言っても、聞いてもらうから。



守里: じゃあ選択肢ないじゃん。



景信: そうだな。俺も出来れば、お前にこのことを伝えたくはなかったんだが。



守里: うん。



景信: 伝えなければならなくなった。




そう言って、景信は守里の目をじっと見る。


その目を見て、守里は…




守里: 分かった。聞くよ。



景信: そう言ってくれて良かった。では話そう。




どんな話をされるんだろう…




景信: まずは、俺は"防衛団ぼうえいだん"というグループの団長をしている。




ぼ、ぼうえいだん?




守里: は?、頭でも打ったの?



景信: まぁまぁ、これからちゃんと説明するから聞いてなさい。




ということで、父さんは話を再開した。



僕は初っ端のインパクトが強くて、若干ぼーっとしてたけど、なんとか話は理解した。


ざっと父さんの話をまとめると、こんな感じだ。



防衛団というのは、僕の住む町を中心とした"伊衛能いえの"と呼ばれる地域の治安の悪化を防ぐグループであり、警察とも協力関係にあると。


僕の住む町周辺に、反社会組織や、暴走族がいないのは防衛団のおかげみたいで、防衛団の団員が各地で見張り、外敵の侵入と内部での反社会的組織の発生を裏で未然に防いでいるとのことだ。




守里: へ〜父さんはそんなグループの頭を張っているのか。



景信: 凄いだろ〜で、お前のさっきの質問に関することなんだが、防衛団は今、これまでに類を見ないような、大きな勢力に攻撃されている。



守里: これまでと同じように、防ぐことは出来ないの?



景信: それが、相手は中々構成員も多く、資金も潤沢にあるようで、中々難しくてな。4年前に1度、構成員の侵入を許してしまったんだ。当時は今のように防衛団のシステムが上手く働いていなかったからな。



守里: 4年前…



景信: その時以来、内側から防衛網を乱されたりして、中々危険な状態なんだよ。その内側にいる構成員も見つけることができなくてね。



守里: なるほど、それで団長が殺られるわけにいかないから、父さんは身を隠しているのか。



景信: そういうことだ。今、どこか分からない場所でこうやって話しているのも、敵勢力に俺の居場所が知られることを防ぐためだ。



守里: それで、僕にその話をしたわけは?別に、これまで通りで良かったんじゃない?



景信: それはな…お前が防衛団の次期団長だからだ。



守里: え?





to be continued

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