13 しんがり達
高峰家・地下隠れアジト――景山と零華が、相も変わらずのクロナノテントウからの三方分割中モニター監視中……。12時30分。上階リビングのテレビでは……爆破された摩天楼街を初動捜査するNY‐POLICEらのシーンが映っている……。
高峰家モニター監視中の望月零華が、目を輝かせると。内臓コントロールされた視線で無線マウスが動き……高峰家リビングソファで転寝中の花楓の映像をアップにする。
「我が君ぃ……巷に籍無しって、罪よね」と、また目を輝かせる零華。今度は公園で腰砕け状態の奈菜未のアップ俯瞰映像。「青春というのよね。こういうことって、我が君ィ」
「今のところ、追跡痕跡なしだ」と、景山が操作している別途PC画面に、『NON‐PROGRAM』のデカ文字。
「俺にはなかった。甘酸っぱい年のころはまだ、サイボーグじゃなかったのにな」と、PC画面から目を切って、おすまし顔を向けている零華を見る景山。
「高峰家の口座に……建前元旦那死亡保険金分割払い非課税で、500万移動したよ」
「おお。サンキュー。零華。田舎の橋の下に捨てた、どこぞやの生みの親が一番悪いんだ。が、本音だぜ」微笑みあう望月零華と、景山数希。
今度は、展望エレベーターにその他3人と乗る優理華の、監視映像となる。
住宅街の公園前の路地――帰る奈菜未と夏未と孝美……。
「進展ね、奈菜未」と、手ぶらの孝美が、奈菜未の肩をソフトに叩く。
「ん。超緊張だったし」と、マイバッグを腕に通し持つ奈菜未が、今更ながら照れる。
「でかした。奈菜未」と、大きめマイバッグを下げた夏未が、奈菜未の頭を撫でる。
「よかったし。二人も指定してくれた、先輩の配慮だし」と、胸をなでおろす奈菜未。
60番街タワービルの展望カフェの――少しと言って地方では長蛇に値する待ち客の推定20メートルの列に並ぶ……秀実がやや前にいて、後ろの土屋の横に優理華がいて、後ろに山の如しの遠山。クロナノテントウが、頭上で空撮している……。
「ゴールデンウィークって、みんな、郊外に行くんじゃ?」と、優理華。
「そうよねぇ」と、秀実。
「まだできて、一週間ぐらいだから」と、遠山。
「いやいや、地方のゴールデンウィークは都心に来るんじゃ?」と、土屋。
「ううん……博識。栄君って」と、山をふりかえり薄笑みの眼差しを向ける優理華。
高峰家・ⅬDKリビング――つけっぱテレビでは……摩天楼街を懸命に走る主役のデカと準主役の一般市民……シーン。ソファで、静かな寝息進行形状態の花楓。
「かあさん。アタシ、夕方から……」と、戸口から顔を覗かせる奈菜未。「……60番街タワービルに、行って、くる……し。夏未らと」とフッと息を口から吐いて、「寝てるし」と、また廊下へと行ってしまう奈菜未。直後にトントントン……と、階段を駆け上がっていく軽やかな足音が……。
高峰家・地下隠れアジト――景山と零華が、クロナノテントウからの三方分割中モニター監視継続中……。14時30分。
自室でクローゼットから少しの内外衣装をベッドに出し、姿見で合わせ中の奈菜未……。
60番街タワービルの展望カフェに、その他3人と並んでいた優理華が、ようやく席に案内され……超絶絶景の窓際テーブル席に、男女千鳥で着く……。
深紅のライダースーツ姿の花楓が……玄関内の上がり框に座ってライダーブーツを履く。
と言った格俯瞰映像が3分割中のモニターに届き……アップになる。
「高峰家正面アップだ。零華」と、景山。
「ドスコイ、我が君」と目をパチクリな感じで輝かせる零華が「なんかジェラ」とぼやく。
モニターの画像が、高峰家玄関からガレージ外観を投影される。
「我が君。スケベ的プロモーションショットのバックアップ、撮るの?」と、零華。
「いいや。ドラレコの要領でいいぜ。肝心なときのみだ、零華」と、朗らかな景山。
「ドスコイ。我が君」
「ご出勤だぜ。花楓の奴」と、朗らかながら……涼しい眼差しをする景山。
同・玄関の外――玄関を鍵で閉めて……ガレージへと入っていく花楓。ブローン! と音がして、ガレージシャッターが勝手に開き……花楓が深紅愛車の単車に跨って、発進していく……と、クロナノテントウの固定後方映像になり、シャッターが勝手に閉じる……。
同・地下隠れアジト――三方分割のモニター監視映像の前で……零華と景山が寛いでいる。14時40分。60番街タワービルの展望カフェ店内が、アップになる。
60番街タワービルの展望カフェ店内――優理華を挟むように遠山と土屋がいて、その若干後方に秀実が……オールガラス張りの窓際テーブル席に着いている。
「2時間待った分、たっぷり居座ってやる」と、ラミネートメニューを見る優理華。
「待たせすぎよね。どれにしようかな?」と、隣の遠山とメニューを共用する秀実。
「……なんだ。肉系ないな」と、遠山。
「……基本カフェだから軽食ですな。先輩」と、斜向かいの遠山を見る土屋。
「そうよねぇ、栄君。どれにする?」と、右横の土屋をメニューを共用する優理華。
「キレイだ!」と、横を見て土屋が囁く。
「え? いきなり? いやだ、告白?」と、一気に照れまくる優理華。
「同意……」と、言いかけた遠山。
「綺麗ですよ」と、向いている土屋のその先には……。都心の街並みの向こうに……澄み切った空気のようで、くっきりとした背後に富士の山が映えている。
「バえぇー」と、窓外に向けてスマホを向ける優理華。
「夕焼けなら尚いいぜぇ……」と、遠山。秀実も見とれている絶景。
「似合わないから……」と再びメニューに視線を落とす優理華。「富士見パフェにしよっと」
メニューに、ホワイトチョコの雪を乗せた青っぽい富士の山で、周囲にオレンジ色のソースの湖の平たい皿に盛った『富士見パフェ』が載っている。
同・ビルの社長室――ブラウス襟にスカーフを巻いた一糸も通さぬ襟元のスーツ姿の女性に、壁中のパソコンの事前監査チェックを受けている金崎金雄。
「CEO? SN(シークレットマネー)はお使いになりました?」と、背を向けた女性。
「いいや」と、凭れ、デンと社長座りしたデスクで見守っている金崎金雄。
「0ですよ、SNが」と、スーツフィット感でボディラインは小ぶりでクッキリの女性。
「そんなぁ!」と、驚くも、パソコンに近づこうとしない金崎。
「探ってみますね」と、顔だけ一旦向けて、またパソコンに集中する女性。
「ああ、宜しく頼むよ。しかし、キューピーサニー似の秘書のカレンちゃん!」
「あの、飛び込み秘書さん? 教えたのです? ここを」
「どうして、突然、辞表したのか? 教えた。だが、あんな細腕で何ができる?」
「セクハラが過ぎたのでは?」と心配しつつも……下唇をソフトに噛む女性司法書士。
「え?」と、引き出しの中からリモコンを出して、壁掛けモニターに向けてオンする金崎。
「煙り、立ちませんよ。火の無いところにはね、CEO」
「してないしてな、まだ」と、手を振る仕草の金崎が、正面をガン見する。
壁掛け大型モニターで、『快傑キャノンガール』アニメが流れはじめる……。
高峰家・地下隠れアジト――三方分割のモニターの前で監視継続中の零華。傍らレトルトカレーを食う景山。18時30分。端午の節句フェア中の60番街タワービルの夜で一層煌びやかなメインエントランスが、アップになり……奈菜未らその他3人が俯瞰で映る。
夜の60番街タワービルのメインエントランス――7つの鯉幟が下がったその下に7つの甲冑のディスプレイ前の人だかりに塗れ……眺めつつ奈菜未と深山が横並びして歩いていく。夏未と孝美がその後ろを、展望エレベーター搭乗口へとゆっくり歩いている。
立ち止まる奈菜未が真上を見る! ビル中が天井まで吹き抜けがガラス張りで抜けていて反射した大輪の満月が……月光を注いでいる……。
「きれぇ……」と、呟く奈菜未。頭部の青蝶のバレッタが輝いているようにも見える。
「ああホントだね」と、奈菜未と一糸の隙間並びしている深山も足を止めて天を仰ぐ。
夏未と孝美も上を見るが……やや左の頭部で何やら青き輝きに、気になって見る夏未。
「奈菜未。蝶が。ピカッとシアンブルーだよ」
つられた孝美も見て。「反射じゃないよ」と、目を開いて驚く。
「へえ? そう……ヒト科絶滅するし!」と、いきなり青白い閃光を放った奈菜未が……シルエットとなって輝きの中に浮き上がる。察知したクロナノテントウが離脱して、その頭上でホバリングする。フラッシュしつつ……変形するシルエット! 閃光が止んで露になった姿は……ブルーに輝く羽の、アゲハ蝶スタイルでヒトガタのキューミンが……ゆっくりと直立姿勢のまま宙に浮かんでいく……。
「奈菜未、ちゃん」と、深山も目を剥くように見守っている。
夏未も孝美も引っつきあって見守っている。
2階バルコニー高さで浮遊して……いつにない涼し気笑みを浮かべている奈菜未の容姿とハイブリット化したアゲハ蝶タイプのフェアリー融合生命体のキューミン!
高峰家・地下隠れアジト――零華監視中の壁掛けモニターが、『EⅯERGENCY!』と、赤く文字化で点滅し……緊急事態を繰り返し警告している。転寝中だった景山が流石に目を覚ます……。「我が君。奈菜未さんに異常事態な感じよ」と、振り向く零華。
「データーだせ」「ドスコイ」と、60番街タワービルのメインエントランスの空中で浮遊している奈菜未ハイブリットな不思議生命体に焦点を合わせて、データー文字が出る。
――……身長170……スリーサイズ88・55・77……――
「通常高峰奈菜未と異なるデータよ、我が君。モデル的!」「心電図や脈拍は?」
「16歳女子の基準値内だよ。いつもより低いかなだけど、頗る健康体よ」
キューミンと化して浮遊する奈菜未のモニターを見る景山。「これは……ミックモン」
夜の60番街タワービルのメインエントランス――7つの鯉幟が下がったその下に7つの甲冑のディスプレイの空洞吹き抜けで浮遊しているキューミンを、その部分だけあけてドーナツのように輪をなして見ている一般のお客ら……の中の夏未と孝美。
「うわぁー。化け物だ……」「ありえない……」と、逃げる幾人かの一般客と塗れて物陰に走る深山剣斗。
「レアだ」「ヤバめウケるぅ」とパシャパシャとスマホで写真を撮る比較的若めのお客たち……の頭上を旋回するキューミン! 黄色い粉をふり播いて破壊するそれらのスマホ。
2階の店舗展開カフェの吹き抜け窓際に一人悩む深山香夏子警部の姿……さすがに爆音に、目を向ける。セルフを片付けないことを徘徊スタッフに、拝み手で謝って……颯爽と飛び出してくる香夏子警部。手摺から身を乗りだし、崖下の様子を一目見る……。
懐から拳銃を抜き、「貴女!」と銃口を、浮遊中のキューミンに向け構える香夏子警部。
「ミックモンね。ヒト科の化学力を舐めないでね。何らかのDNA塩基との相性で融合」
「……」と冷ややかな笑みが謎めいた顔色になるキューミン。
「あの日以来、公安案件預かりで、密かに進めてきた異世界からなる侵略激を探って、事あれば阻止する部署として発足されたのよ。ヒト科、私たちはヒトガタとし、フェアリーハイブリット生命体をミックモンと称してね」
「そして、僕が、それを阻止する……救世主の」と物陰から赤茶と紫色のミックスの閃光に包まれた……ヒトガタ大の楕円の輝きが飛び出してきて……「スタングンさ」とクワガタの羽を広げたヒトガタ生命体ミックモンの……ミックソンが登場してその宙で対峙する。
キューミンがひと羽ばたきしBT(バタフライ)フレアを羽全容内側からイエロー光線弾をいきなり見舞わせる……。と、器用に甲殻の前羽で盾代わりに身を守り……ノコ刃の頭部の右顎をブーメランの如く投げる。で、キューミンボディにヒットして……気を失ったキューミンがふらふらと降下する……が、すかさずスタングンが飛んで、キャッチして、夏未らの足下に置いて……物陰に飛び去って行く。
高峰家・地下隠れアジト――景山と零華が、足下で香夏子警部に解放される戻った奈菜未を心配する夏未と孝美のモニター映像監視中……。22時30分。来る深山剣斗も映る。
「行くぜ。零華」「え? 何処へ? 我が君」「デートだよ。ここからは……」
おもむろに立ち上がり、『フラッシュ!』と、閃光を纏う望月零華と、景山数希。
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