6 休日活動
高峰家ⅬDKフロア――テレビ……「今日は日曜日。9時からは、今推しなこの番組からご視聴くださいね。本日のご紹介イノベーションベスト3ラインナップは……」と、女子リポーターの朝の情報番組を見ている高峰花楓。
黄色と黒の部屋着姿で起きてくる高峰優理華。
「おはよぉ。ママ」と、キッチンへと向かう優理華。
その頭上をついてきたクロナノテントウが、リビングの照明カバーに集る。もう一匹のクロナノテントウがいる。
「ん。おはよ」と、一応振り向く花楓。
「遅花粉症の方でもまだ使えます。こちらのグッズは……ナノフィルターエアーマスクのヘッドフォーン型簡単装置でして……こうして首に掛けまして、タッチスイッチをオンにしますと、顔辺りに舞う花粉やダストなどがナノフィルターへと吸い込まれる仕組みになっていますこの……」と、実践実況をする女子リポーター。
皿に入れた牛乳に浸されたモロコシフレークを持って、リビングテーブルに来る優理華。
「へえー。でも、うちには花粉症はいないよね」と、モグモグモロコシフレークをスプーンですくって口にする優理華。
「うん。今のところはね」と、目はテレビに向いたままの花楓。
「確かあれって、ママのところでやっていたアニメで出てきた、感じだね」と、優理華。
「そうね。ありがちの特撮やアニメで想像した便利そうなアイテムが、実現する例は昔からだわ。近年はテクロノジーが超絶に発展しているしね」
テレビを見つつ……頷きながら、モグモグしている優理華。
同・奈菜未の部屋――半分は開いている二種のカーテンの外は……燦燦とした日光が照りつけている午前中の時間帯だが。まだベッドで、中女体育着上下姿の臍だし大の字で寝入っている高峰奈菜未。お胸の谷間に楕円のシャイニングな輝きが、半分ポッコリと言った感じで出て、「年頃意識は関係ないようね、この子ったら」と、女子ッポイ声が呟く。
「へぇーアタシが、蝶々に成れるの? その羽で飛べるの、かな?」と寝言を呟く奈菜未。
照明機器のカバーに黒い点と化しているクロナノテントウが集っている。
同・地下アジト――ⅬDKフロアと、奈菜未の部屋を、監視モニターを見ている望月零華。ゆったりソファタイプの足つき椅子をリグライニングして転寝中の……景山数希。
「零華が、アンドロイドタイプでよかったわね、我が君。そっちは半分生物のヒト科だから、やっぱり、睡眠いるのね」と、景山の寝顔を見て、ムフッと笑う零華。
同・ⅬDKフロア――リビングで、テレビを見て、寛いでいる花楓。
キッチンのシンクで皿とスプーンを洗っている優理華。
「……が、ベスト今推しツーでした。今推しベストワンは、ダカダカダカ、ジャン! 昨日オープンしました60番街タワービルです。こちらはですねぇー、ビル自体をジャックと豆の木の天に届く蔓をデザインしました形状をしておりまして、意外とねじりを入れることにより強度と柔軟性増しの、企業秘密的構造建築法を取り入れているそうです。本日は、午前と午後、夜の部と各店舗などのイベントが盛りだくさんのようで、ホリディ集客を狙った……」と、初会している現場要員女子リポーターの中継を……スタジオで、視聴者目線で見ていた女子アナへと……「ま、オープンの土日は勝負時でしょう。コマーシャルです」と、お辞儀する女子アナ。
「あら? そのヘアゴム」と、花楓。
「ああこれ、そうよ、誕生日にママにもらった」
「あなたが立志のときにね」と、花楓。
「ううん」と、満悦の優理華。
「何故か、優理華は、小さいころから蜂柄が好きだったわ。黄色と黒、若しくは黄色。黒といった単体でも、必ず組み合わせているわ」
「へぇえ、そう? でも、なんか、落ち着くことは確かよ、ママ」
照明カバーに二つの黒点。程近くの壁にアナログ時計は、9時55分。
「なにかね、二日目の朝から、気になって、つけたいって思ったのよ、ママ」と、優理華。
テレビをなんとなくだが見ている花楓が、優理華を見る。
同・地下アジト――ⅬDKフロアと、奈菜未の部屋を監視モニターで見ている望月零華。
ゆったり御一人様ソファで転寝する景山数希が、「ふわあぁーあ!」と伸びて起きる。
「よし今日は一般的に休日だ。初動調査にもってこいの日だぜ、零華」
「どうして? 我が君」
「新参の見栄えする商業施設っていう奴は、オープンと同時に各種のイベントで客層へアピールする。サービス業にかかわっている業種より、まだまだ巷は週休二日制の所謂会社勤めが多いはずだ」
「……(目をパチクリさせるものの、数秒で普通の目に戻して)なるほど、今探った都心、関東一円の巷の実態は確かに過半数以上が我が君が言った通りの会社のようよ」と、零華。
「こっちも、此奴で探るかぁ……」と、顔をピシャっとする景山。
景山が最新コンピュータシステム完備の中にあって、古ぼけPCノートタイプを起こす。
同・奈菜未の部屋――床半分まで日光の差し込みが照らしている部屋の、そこは絶対日陰のベッドで大の字に寝ている奈菜未。そのお胸の谷間から楕円の輝きが浮かび出て、「もぉーいつまで寝ているんだか? この嬢ちゃんは」と文句を言うキューミンの心の声。
「はっ!」と、目を開きムクッといった具合に上半身を起こし、っと! ベッドの縁で半ケツ状態にあって、滑って、推定高さ40センチ上から床に落ちて尻餅をつく奈菜未。
「いてぇっ!」と、目を覚まし……天井近くの壁のアナログ時計を見る。9時55分。
「そうだ、夏未らといくんだった、60番街タワービルへ」と、尻の痛みなどどこ吹く風で、普通に立ち上がる奈菜未。
中女体育着をベッドに脱ぎ捨てて、クローゼットを開けて、服を選ぶ一応セパレート白一択系インナー姿の奈菜未……。
開けたクローゼットの中に、アニメグッズがどっさりある。ひと昔からシリーズ化で続く一推しキャラの『キューピーサニー』フィギャーをもって手遊びして……今一推し『悪ガキ・ギャリックボーイ』の強イケメンアニメキャラポスターに投げキッスする奈菜未。
「現世の女の子って大胆になるのね、一人だと」と、キューミンの心の声。
「あ! いかないと!」と、外着のワンピースに、眺め丈カーディガンを出す奈菜未。
「汗臭いよ。シャワー浴びて行きなよ」と、何処からともなくキューミンの声がして、キョロキョロして首を傾げつつも、「そうよね」といった具合に、上下の体育着を鷲掴みに手にして、部屋を出て行く奈菜未……の早足にドタドタ階段を降りる音がその部屋にも届く。
同・ⅬDKフロア――優理華と、花楓がリビングソファで寛いでいる。テレビでは、前日オープンしたての商業複合施設の60番街タワービルの紹介をしている。白いバスタオルを巻いて、濡れた髪をハンドタオルでフキフキする奈菜未が入って来てテレビを見る。
「ああアタシ、今日、ここ行く。夏美らと」と、奈菜未。頭上でクロナノテントウが飛ぶ。
「へえ、行くのね。ん」と、花楓。
「今日行っても、人混み状態よ。落ち着いたころ行けばぁ」と、優理華。
「でも、どうしても今日じゃなきゃなことあるし」と、廊下に後ろ歩きする奈菜未……。
「はっはあん! レアなアニメ関係のイベントだねぇ。そのランラン加減は」と、優理華。
サッシ窓上にかかるアナログ時計を見る奈菜未。時刻は10時5分!
奈菜未の様子を見守っている優理華。目はテレビの注いでいる花楓。
「あ! もうこんな時間。駅待ち、遅れるしっ」と、リビングを出て行く奈菜未……。
「……本日の午後には、今推し超絶人気の『快傑キャノンガール』の特典付きイベント催しがあるようで、もう、4階コーナーから誘導ベルトで仕切られた、アニメファンらが50人はオープン前から並んでおりまして、(『整理券・最後尾』の看板札を持つスタッフが映って)ビルの10時オープンと同時にもう超絶な長蛇の列をなしております」と、女子リポーターが紹介する。
「もう遅くない?」と、優理華。
「そうか、これかぁー。ゆうべ広報の担当者が再確認していた得点モノは」と、花楓。
「これって、ママの会社の、アニメなの?」
「んそうよ。奈菜未もどハマりしているわ。でも確か、300人限定とか……」と、花楓。
ドタドタ足音が来て、リビングを廊下から覗く花柄白ワンピに桃色アウター姿の奈菜未。
「じゃ、行ってきます」と、瞬間テキに告げて、また足音を立てて行ってしまう奈菜未。
「気お付けてぇって! もぉー」と、優理華。
「ま、ああいったアニメオタクはありがたいお客なんだから」と、涼しい顔の花楓。
「ママが、後からあげれば」
「それじゃぁ、意味なんじゃない? ああやって、あそこに並んでようやく手にしてこそ、満足するんだから」と、花楓。
「地下鉄乗り継いで、1時間あれば行けるか。でもぉーもう180人越えしてない? オタクの列……」と、再びテレビに映るアニメオタクらの行列を見て疑問視する優理華。
笑って、「ふぅん」とため息に似た音を出して、テレビを見つめている花楓。
某郊外の街中の駅――改札口外で夏未と孝美が待っている。汗だくで走ってくる奈菜未。
「ごめん、いこ」と、二人の腕にボディタッチする奈菜未。チョウのバレッタ摘みのハーフアップヘアスタイル。桃色長め丈カーディガンに、花柄白ワンピ姿の奈菜未ルック!
「常習犯はいいけれど、言い出しっぺでしょ」と、奈菜未にボディタッチ返しする夏未。
「平気なの? 間に合う」と、奈菜未の手を取りなでなでする孝美。
「ううん……行く! 奇跡あるかもだし」と、引っ張り気味に改札口へと向かう奈菜未。
奈菜未ら三人がスマホの電子決済で改札を入っていく……ピッ、ピッ、ピッ! と構内に入り姿見えずだが……女子トークは成されていて……、
「あ、でも何か感じ違うし、奈菜未。あ! 青ラメ系蝶のバレッタだっ」と、夏未の声。
「それでぇ、恒例乱れハーフアップじゃないんだね」と、孝美の声。
「ルーズが売りだったのに、キメキメだしぃー」と、夏未の声……とともに三人が見えてきた……上から階段をホームに出てくる金網越しに見える奈菜未ら三人私服女子。
「変?」と、言いつつも後ろを見せる奈菜未。
「ううん、ベースいいんだから……」と、孝美。
『せめてそのくらいしても、奈菜未は浮かないし』と、夏未と孝美の声が揃う。
体を揺すって照れ隠す奈菜未。後ろからホームに滑り込んでくる電車……。
高峰家――玄関に立つ男子の足……ピンポン! ブルージーンズ裏ポケットにスマホ。
「はーい」と、優理華がカギを開けて出てくる。
「ああ、いらっしゃい」
「奈菜未ちゃん、いますか?」と、ブルージーンズ上は黄緑系ニットパーカーの背中。
「あ、いないけれど、入って。ママ、いるし」と、招き入れる優理華。
「お邪魔します」と、マンティスイラストスマホケース裏ポケインの男子が入っていく。
60番街タワービルの外観――天界へと伸びきった豆の木の蔓のように聳え捻じれている所謂タワービルのメインエントランスへと入っていく沢山の一般客。
同・ビルの後ろ――植え込みと空気出し入れ用空調用換気ダクト外壁の前にいるロイヤルブルージャケットの景山数希と、望月零華。
「零華はメントランスから侵入し、お得意の変貌技で成りすましながら、探って。一番適したスタッフに成りすまして次の新月まで潜入だ」と、指示を出す景山。
「ドスコイ、我が君。でも? どうして新月?」
「真の泥坊ってのはな、暗闇に塗れるってぇのが相場なんだよ、零華」と、ニヒルVサインをかます景山。
「おい、何している!」「こんな人気のないところで」と、二種の男の声がして、見ると、明らかなる警備服を着た男が警棒片手に……威風堂々と来る。
流した目を警備員らに向けた景山が、零華を抱き寄せ、顔を近づける……。
2人の警備員がさらに来る! が、目の前でキスする景山と零華に、にやけて、「何だ。模様してチューしたくなっただけか」「御取込み中失礼、お二人さん。大人だから知っているとは思うが、ここでセックス行動は軽犯罪法に引っかかる可能性があるからな」「程々に」と、ちゃかし去っていく警備員ら……。
キスするとき目を開ける癖の景山が、横目で去り行く警備委員らを確認する。が、離そうとする景山の意に反し、零華が離れようとしない……に、輪をかけて、景山の体をまさぐりだしている……。「おい、仕事だ……」と、一瞬離れた景山の口に、また引っ付く零華の口! 「おい、零華」と、少し離す景山。「だあって、こんなシチュエーションのセックスって……(キスしつつ……)燃える感じじゃない。はじめて外で致すけれど……」と、欲情アゲアゲ女心のスイッチをオフに出来ずにいる零華。
「よし、じゃあこうしよう」
「ううん……」と、口は離すも見つめる視線は離さない零華。
「この仕事がうまく行ったら、ここでしようぜ、セックス」
「でも、さっき、あの人らが……」
「平気さ。俺たちならな」と、意味深に微笑む景山。
目を黄色く光らせて……瞼をパチクリさせて、首を傾げる零華。
「ほんとに、女だなぁ零華は。あるじゃねえか、これが」と、右手首にしているブレスレット型のデバイスを見せる景山。
「ううん……」と、繰り返し頷く零華。微笑んで、勢いよく抱き着いて、ブチュッとキスして、「ドスコイ、我が君」と、潔く離れて、「WRフラッシュ!」と行ってしまう零華。
ニンマリ顔で見送る景山が右手首デバイスにチョキタッチして、「Dフラッシュ!」と、文言を告げる。と、一瞬にして若草色の上下作業服男に変貌して、一部畳半畳分になっているダクトカバーを掌ラバーの薄手袋の手で外し……巨大ファンのプロペラを回転の弱い中心軸のあたりから一瞬に厚手の溶接用手袋にした手で抵抗を与えつつ……プロペラの回転を鈍らせ……止めたプロペラを左手でキープして、大きく空いた隙間から中へと侵入する。右手で稀にアニメや特撮ものでお目見えしたような……離れたところの物を取るための、先が吸盤になっている伸縮自在シールドを出して……先を裏板に引っ付けて、引き寄せると、お見事に収まる畳半畳のダクトカバー。外からは見た目もとどおりの外壁状態。
「見えなきゃ、公設わいせつ罪にはならないよな。それに俺は……巷にはいない存在……」と、声が遠ざかっていく……。
同・メインエントランス――まずは一般客に成りすまし基本白地のピンク縁取りデザインの襟アリショート丈七分袖スプリングジャケットをアウターに、オソロ膝上ギャザー無しスカートで、インナーゆるボーダー柄のライトグレートップス姿の望月零華が人混みに紛れて入ってくる。
傍ら、蝶々モチーフバレッタでハーフアップヘアを整えている高峰奈菜未と夏未、孝美ら3人が入って来て……『快傑キャノンガール・整理券最後尾』看板の列に並ぶ。が、「ここまでです」と看板スタッフが、孝美が並んだところで打ち切る。奈菜未と夏美はその後ろで外れてしまうが、孝美が奈菜未に譲ってくれて、並ぼうとしたとき! 明らかなるアニメオタクのデブ男が空いた隙を見て並んでしまう。
「今、あたしが、先だし」と、クレームする奈菜未。
「あ?」と、睨んで譲らないドブ男。
睨み合うデブ男と、奈菜未ら三人女子!
奈菜未のハーフアップヘア止めバレッタの蝶が、一瞬シャイニングに輝く……。
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