女子高生は押し倒す

 おじさまは私に可愛い花柄のスリッパを勧めてくれて、部屋に上げて下さりました。

 玄関から右手にトイレ、正面に洗面所兼脱衣場、左手にリビング。

 リビングを入ってさらに左手にダイニングキッチン、リビングの右手奥に寝室らしき扉があります。


「まだ寒いから暖かい飲み物がいいかな?」


 リビングのソファを勧められ、何か飲み物を用意して下さる事に。

 コーヒー、紅茶、緑茶ならすぐに用意出来るとの事だったので、紅茶をお願いします。

 おじさまが電気ケトルに水を入れ、セットしてボタンを押されます。

 手慣れた仕草から、いつもご自分でされているのだろうなという事が分かります。

 花柄の可愛いスリッパは、おじさまの趣味なのでしょうか。

 ちょっと警戒しましたが、室内にその他の女性の影は見当たりません。


「警察を呼んじゃダメだって言うけど、今の状況を誰かに見られたらおじさんが未成年者略取で捕まりそうだなぁ」


「あの、私は十八歳なので、未成年者略取には該当しません」


「そうなんだ、まぁそういう問題じゃないけどね」


 おじさまはそう笑いながら、沸いたお湯をティーカップに注ぎ、紅茶のティーバッグを入れました。

 そういう問題ではないと仰いますが、私は十八歳なのですから大丈夫。これは重要なポイントです。


「はい、おじさんは飲めれば良いからあまり味は気にしないんだ。上手に淹れられた分からないけど、良かったらどうぞ」


 そう言いながら、おじさまはローテーブルに二つのティーカップを置いて下さいました。良く見るとこのティーカップも可愛らしい花柄です。

 何故か二つとも私の前に置かれたのは、どういう意味があるのでしょうか。

 私がそのうちの一つを取ると、おじさまが立ったままもう一つのティーカップを手に取り、口を付けられました。


「ふぅ……、さて。

 詳しい事情を聞かせてもらえるかな?」


「えっと、あの……。

 立たれたままでは話しにくいので、座って頂けませんか?」


 私が座っているのは二人掛け用のソファーです。

 家主であるおじさまが座ったままなのは居心地が悪いです。

 おじさまは私の言葉を受けて、少し考えられてからお返事して下さいました。


「じゃあちょっと待っててくれる?

 スーツじゃ座りにくいから、部屋着に着替えてくるよ」


 ティーカップを置いて、おじさまは寝室の方へ行かれました。

 私はスリッパを脱ぎ、足音を消しておじさまのすぐ後を歩きます。

 おじさまが寝室の扉を開けられたタイミングでおじさまの背中を突き飛ばし、目の前にあったベッドへ押し倒しました。


「ちょっ!?」


 ベッドへ倒れられたおじさまがこちらを振り向こうと仰向けになられたので、私はおじさまの胸を目掛けて飛び込みました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る