女子高生は押し入る
おじさまの後にピッタリとついてマンションへ入ります。
おじさまがスーツのポケットから鍵を出されました。
「こんばんは」
「ん? あぁ、こんばんは」
おじさまへ挨拶をすると、おじさまも挨拶を返して下さいました。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
おじさまがオートロックの扉を開けて、私を先に通して下さいます。
とても良い人、そしてとても良い声です。
私はエレベーターの上ボタンを押し、エレベーターを呼びます。
おじさまは私から少し離れた位置で止まり、同じくエレベーターを待っておられます。
紳士です。
エレベーターが到着し、私が先に入ります。
「何階ですか?」
「十階です」
「えっ、そうなんですか?
私も十階です」
そう言って、私は十階のボタンを押しました。
「え、そうですか?
初めて会いますね」
「そうですね、初めまして、です」
初めまして、ではないですが。
これは運命の再会なのです。
でも今はこれで良いのです。
後でたっぷり喜びを分かち合うのです。
エレベーターが十階に到着しました。
私は『開』ボタンを押して待機します。
「これはこれは。お先に失礼します」
おじさまが先にエレベーターを出られました。
私は足音を立てず、少し離れてその背中について行きます。
おじさまが一番奥の部屋の鍵を開けられたタイミングで走り寄り、わずかに開いたドアに滑り込んで部屋へと入ります。
「え!?
ちょっと、何事!?」
「お願いします!
少しの間匿って下さい!」
驚いておられるおじさまにしがみ付き、ぶるぶると震えます。
この震えはわざとではなく、おじさまに抱き着いている事に対する感動から来るものです。
胸いっぱいにおじさまの匂いを吸い込みます。
はぁ……、ここが天国でしたか。
「匿う?
もしかしてストーカー!?」
「はい」
そうです、私がストーカーです。
いや、ストーカーではありません。
これは純愛なのです。
玄関の鍵を掛けておきます。
「ここはオートロックだから大丈夫……。
いや、このマンション内にストーカーが住んでるのか?」
いえ、ストーカーは住んでません。
私はこれから住む事になるかも知れませんが。
「とりあえず詳しい事情を聞こうか。
場合によっては警察を呼ばないといけないし」
「警察はダメです!」
私が捕まってしまいます。
「何か事情があるのか……。
おじさんに話せる内容かい?」
「はい!」
おじさまには聞いて頂きたいお話が山のようにあるのです。
三年分の私の思い、是非とも受け取って頂かないと!
「そうか、とりあえず中へどうぞ」
こうして私は、おじさまの部屋へお呼ばれする事となりました。
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