第50話 父とテン
ニ「しかし本当に一日いないだけで随分と様変わりするな」
もう何軒もの家が骨組みされている。
流石にまだ家はできていないけど、この調子だと多分三日もすれば何軒かは立っていくんじゃないかな。
何もない森の発展...
この最初の展開が面白かったりするはずなのに。
というか魔族ってもっとのんびりしているんじゃないのか?
うちの大臣とかはもっとのんびりしているのに。
…
僕は考えるのをやめた。
ニ「おっとハド様」
ハ「...なんだか気持ち悪いわね」
ハドが廊下を歩いているところで偶然会えた。
ニ「一体何のことですか?」
ハ「別に〜?」
ニ「そうそう、それと前にお願いされた物を持ってまいりました」
僕はハドにアーティファクトを渡した。
ニ「中に大量の服が入ってますのでサイズもバラバラ、まあ洒落ているかどうかと言われたら全然ですけど」
ハ「今は贅沢なんか言ってられないもんね。まあいつかは叶えるわよ」
ニ「そこらへんはお好きにしてください」
今日のハドはまずお金稼ぎについて考えていた。
表では何をして稼ぐか。
裏では何をして稼ぐか。
そこらへんについては色々な種族を呼んで会議をした。
ハ「みんな、何か良い案はないか?」
“会議は広く”とは言うけどここまで多いと種族間にも色々と問題があるから全員の意見が一致することなんてまずない。
普通にやっても稼げるわけないし。
前世の知識を使うか?
例えば三大発明の火薬、羅針盤、活版印刷術。
火薬...はリスインの方で使いたいし。
羅針盤は似ているものがあるし。
まあ活版印刷術も作ったところですし。
うわ、むずっ。
この世界中世のヨーロッパかと思えば普通に電気とかは使われているし。
でも前世ほどは追いついてないから発展をしようにも材料やら何やらが足りてなさすぎる。
テ「おいニック、お前はなんか決まったか?」
ニ「あれ、テンいたのか」
テ「最初からおったわ!」
ニ「まあ会議に集中していたから、すまんすまん。で会議の内容だが、正直言って何も決まらん」
テ「同じく」
そうして何も決まらないまま会議は終わった。
ハ「まあ決まらないことだってあるわね。とりあえず五日後にまた会議をするからそれまでに良い案を持ってきて欲しい」
いやあこれ決まるんかなあ。
そんなことを思いながら会議室から出た。
テンと僕は会議室を出た後休憩室で休んでいた。
テ「金を稼ぐというのも大変だなー」
ニ「いつの時代でもお金という文化がある限りその悩みから消える人はいないだろうな」
テ「いっそのこと魔王でも脅してお金を取るか?」
ニ「やめてくれ」
本当にやめてくれ。
ニ「ただそう言えばステンド王国は今、良からぬ噂はあるらしいな」
テ「よからぬうわさ?」
僕は立ち上がり、テンの耳の近くで
ニ「なんでも魔王国と戦争するとかどうとか」
テ「なっ!?」
ニ「もしステンド王国が勝てば魔王国は吸収されるだろうな」
テ「それは魔族の多いこことしても非常にまずい
のお」
ニ「まあそこは魔王国に勝ってもらうしかないさ」
テ「そうだな」
ニ「それに魔王国が勝てば放置されたステンド王国を俺らでなんとかできるかもしれないしな」
テ「それはとても美味しい話じゃなあ〜」
僕は席に座った。
テ「そういえば最近魔王が変わったらしいな。今の魔王はどんなやつなんだか」
目の前にいるやつだよ。
テ「あやつはすごいポンコツだったからなあ」
ニ「あやつって。まるで知ってるみたいだな」
テ「まあ一度だけだけど会ったことあるしな」
ニ「そうなのか」
まじか。
ちょっと意外。
僕は少し目を見開いた。
ラ「いつ会ったんだ?」
ニ「もう随分と前だよ。確か前魔王が就任してから、少ししか時間が経ってないぐらいの時。その時は迷子とか言ってたな笑笑。で、魔王は疲れるとか言いながらわしの家に入り込んできやがってさ」
迷惑なのも変わらねえな。
テンは思い出すたびに何回も笑っていた。
テ「しかもお詫びとして家事をするとか言っていたのにとんでもないポンコツでなあ笑笑。魔王が家事できるとも思ってなかったから案の定って感じで面白かったけど」
…そんなのが身内か。
ニ「そうだったのか」
テ「その後はすぐに帰ったよ。魔王としての仕事が山のようにあるらしいって言ってさ。でもあの一日はとても貴重な一日だったよ。私はその日忘れもしない一日になったよ。ポンコツ魔王の一日としてね」
ニ「あんたも無茶苦茶言うねえ」
テ「でも、なんか最近魔王変わったらしいね。いやーわしは全然知らんかったわ」
ニ「その人全然表に出ないですし、顔もほとんどの人が知らないみたいだからね」
テ「でもあやつはもう魔王じゃないのか。随分と早く政治の座から降りたもんだ。ま、おおかた面倒だから息子に全て押し付けようってことだと思うが」
正解。
たった一日で父さんの性格を綺麗に当てられるとは。
すごい洞察力だこと。
テ「まあでもまたいつか会いたいな」
ニ「そう」
テンは思い出しながらそう言った。
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