第9話 過去との踏ん切り

僕と目の前の少女は道中話をしていた。

少女「ねえ、あなたってどれくれいこの世界を知っているの?」

シ「この世界というか裏の世界はな...実は全く知らん」

少女「え?」

シ「悪いけど、全然知らないんだよ。さっきの研究所で手に入れた書類とか日記とかをペラペラ読んだだけ」

少女「そうなの?」

シ「まあな。そもそも裏の世界とは言ったが色々なところに組織があり、それらが悪さをしているだけだからな」

少女「そうなの」

シ「それぐらい。まあ悪さは相当だからもしかしたら世界を支配できることがいつかできてしまう研究とかもあるかもしれんけどな」

少女「全然知らないのね...」

シ「まあ、私は別に全知全能でもなんでもない、ただの魔族だしな」

少女「それとさ、あなたってわたしの名前知ってるよね、なんで君とかで言うの?」

僕は少し上を見て、

シ「ロード家の一員として思われたいなら、その名前で呼んでやる」

少女「...君でいいわね」

夜の街は本当に静かだ。

少女「まさか戻って来れるなんてね」

シ「すぐにここからは離れるけどな、あんたの場合顔がお偉いさん方にはわかるんだし」

少女「そうね...」

少し寂しそうな顔をして最後の景色を見ているような顔でいる。

シ「なに寂しそうな顔してんだ?顔を変えたり、私みたいに仮面被ればいつでもこれるけどな」

少女「あ、そうね」

そもそも魔王特権でもいいけどな、言わないけど。

あっという間にロード家に着いた。

少女「今わたしがどんな気分かわかる?」

シ「さっぱりわからん」

少女「不思議とね、すごい心が今落ち着いている」

この冷静さ、やはり僕の目に狂いはない。

シ「ちなみに本当だとわかった場合君はどうするんだ?」

少女「...どうすればいいのか、わからない。その時の気分に任せるのがここは一番いいかなって思う」

シ「そうか」

そういって少女は一人屋敷へと消えていった。

さあて僕は拠点とか色々探しておかないとな、といってももう決めてはいるし、ちょっくら屋敷に戻って色々取ってくるか。

多分一人でも大丈夫だろうし、なんか危険そうならすぐに戻ってくればいい。

そしてまた仮面の男も暗闇へと消えていった。




長い間この家で育ってきた。

なのになぜか感じる感情は他人の家に来るような感覚。

親の前より先に自分の部屋に寄っていくことにした。

もう二度とここには戻れない。

大切なものがたくさんあった。

どれかを持ってきてもいいと言われた。

しかし何故だかどれも持っていきたくなかった。

前までの宝物はここでおしまいにして新たにスタートするからなにも持っていかない。

前までのものを引っ張っていくことはしたくないと心に思っていた。

少女「さよなら、ライム」

わたしはそう言い残してこの部屋を出た。




両親の部屋の前に来た。

重くないはずの扉に時間をかけて開ける。

両親が寝ていた。

わたしは両親を起こした。

二人ともびっくりしていた。

もちろん声が漏れないようなレプリカのアーティファクトを入れている。

ライム父「ラ、ライムよくぞ戻ってこれた」

ライム母「え、ええ、これはお祝いをしなくてはね」

二人の顔に喜びの感情はなかった。

ただ驚きと焦りしかなかった。

少女「もう全部知ってるの、二人がわたしを渡す契約など色々とね」

ライム父「違うんだ、あれは脅されて」

少女「その代わりに地位をもらう?いいえ逆でしょ?地位をもらうかわりに、でしょ?」

ライム父「貴様が生きている以上、このロード家は終わる。悪いが犠牲になってくれ!」

父が近くにあった剣を振り、母が魔法を打ってきた。

わたしは即座に避けて二人を殺した。

ライム「偽りの愛をくれるあなたたちにはもはや何の感情も残らない。さようなら」

もう悔いも未練も本当になくなった。

わたしはこの場を後にした。

少女「そういえば、この家にあるアーティファクトは持ってくか」

私はここを後にした。

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