第5話 会場へGO!
腹も膨れてご満悦ということで、表彰式の行われる応接室へと向かった。
会場となる応接室には、すでにスタッフが待機していた。
関係部署の本庁職員で、式に関する事を親切に説明してくれた。
実際のところ、冷や汗と言うか、セーフであった。
なにしろ、“ウケ”を狙って“白ねぎ法被”や“白ねぎTシャツ”で武装して来ようかと考えていたからだ。
そこは思い止まって普通にスーツで来場したが、それでよかったようだ。
他の受賞者もまた、普通にスーツ姿であったからだ。
記念撮影時、自分だけが法被姿では、いくらなんでも悪目立ちに過ぎる。
まあ、それはそれで後世まで語り継がれるであろうが、まあ、無難に行って正解でったと言う事か。
そして、目の前の書類から、他の受賞者の素性も分かった。
今回の受賞に際しては、「食育推進に貢献した事」が選考基準になっていた。
そのため、施設や幼稚園などの調理師、栄養士なのが選出されている。
中には
自分なんぞ、素人に毛の生えた程度の立ち位置なのに。
まあ、自分も去年は食育活動に加えて対外アピールも頑張ったことなのだし、そこが評価されて受賞と相成ったとしておこうか。
「やってみて 言って聞かせて させてみて 褒めてやらねば、人は動かず」
自分が座右の銘とする、山本五十六提督の言葉である。
上に立つ者は偉そうにふんぞり返ることなく、行動によって範を示し、良く働く者にはきっちり褒める。
褒めるの部分は、賞与などの物質的なものから、勲章などの箔付け、あるいは労いの言葉などの精神的なものまで多岐にわたる。
それをしてこそ、人はようやくに動くのだという事だ。
有り体にいえば、表彰なんぞ、賞状を受け取って、記念撮影しておしまいである。
物質的には何の寄与もしないが、ここに“やる気”というより重要な要素が加わる。
人の持つ欲の一つの形として、“承認欲求”が存在する。
他人に存在が認められ、その行動が称賛され、それが快楽へと変じる。
動画配信者などはこの傾向が強い人が多い。目立ちたいがゆえに、アホな手法で盛り上がろうとする輩が絶えないのがいい例であろう。
自分もまた、承認欲求を自認するものだ。
たかが紙切れ1枚と言えど、自身が認められたという証である。
さあ、画面の前の諸君、あなたは今の職場で正当な評価を受けているか?
ちゃんと労いの言葉や褒賞を受け取っているか?
まともな職場はそうであるが、そうでないならそれはブラックな職場か、気の利かない上司の下で働いている証左である。
不満があるならば、直ちに辞表を出そう。
そして、鍬を握って畑を耕そうぜ!(ぉぃ
天気は時にこちらを騙すが、収穫物は嘘を付かないぞ!
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