第23話
海「え?えっ…………え?」
一織「あなたはこの島で山田 つぼみさんと赤間 楓さんを殺した殺人鬼なのですよ」
海「いやいや、何を言ってるんですか。そんな冗談はよしてくださいよ」
一織「ふざけてなんかいません。本気です」
彼女の目は鋭く種子島さんを睨みつけていた。
空「お、お前が犯人だって…?」
海「ちょ、違いますよ。濡れ衣です」
響「まだそんなことを言えるんですか?あなたが犯人だという証拠はさっき示したばかりですよ」
海「あんなもので?たったあんだけのものでどうして俺が犯人だって言えるんですか!?」
一織「あなた、往生際が悪いですよ!」
響「落ち着いて、一織ちゃん。種子島さんが百パー間違っているど言えないよ。あれだけなら別人のなりすましでできてしまうし」
一織「しかし、響さん…」
海「ほら、どうなんですか。これで僕が犯人だとか言えなくなったでしょう」
響「何を言っているんですか?あなたが犯人だっていうことは、これだけが根拠ではないですよ。あなたは気がついていなかったかもしれないですが」
海「………っ」
響「私が最初に疑いをかけたのは、儀式の祭壇でのことです」
和那「祭壇って…楓が殺されたとき?」
響「そうです。そのときのあなたの発言が、私には引っかかっていまして」
海「そんな、変なことを言った記憶なんてありませんよ」
響「まぁ、無意識のうちに言ってしまったのかもしれません。それでは、その発言について、話をしましょう」
私が種子島さんが犯人だと思ったきっかけは、「クソっ!『黒い天使・アズリエル』め!」という言葉だ。
そもそも、この事件の犯人が「黒い天使・アズリエル」と名乗っていることは、私、一織ちゃん、蓮花さんの三人のはずだ。だとすれば、種子島さんが知っていることはおかしい。
死体に刻まれていた名前ではあるのでそれを見て知った可能性はあるのだが、だとすれば彼は箱の中にあった山田さんの右腕を取り出してわざわざ見たことになる。赤音さんの左足は私が蹴ってしまったが、そんなに刻み込まれた文字を読んでいる時間はない。
ということを説明すると、やはり彼は反論を始めた。
海「いやいや、甘い推理ですよ」
響「ほう。それでは、どこが違うのか説明してみてくださいよ」
海「あなたはこの島の伝説上の怪物を知らないんですか?」
響「知っていますよ。『黒い天使・アズリエル』でしょう?」
海「ええ。俺は、松原さんまで含めた三つの殺人事件がその伝説にあった通りだから、犯人が『黒い天使・アズリエル』のふりをしていると考えたんです」
響「あら、そうですか」
こんな反論、論破できるだろうと思っていたが、良く考えればどうやって反論しようか。発言だけなら決して嘘っぽくもないし……。
一織「ん?だとすると、あなたは右腕が二つあったということは知らないと」
海「当たり前じゃないですか。きっと、私たちが寝ているうちに犯人が持ってきたのでしょう」
一織「そうですよね…」
なんだか、彼女の中ではぼんやりとした疑問が生まれていそうだ。それこそ、彼が犯人だというこれ以上もない確証に繋がるものが。
海「ね?これで分かりましたか?俺は犯人じゃありません」
空「でも、この状況で他に誰が犯行できるってんだ?メッセージまで見せられて、信じろとか言われてもなあ…」
海「それなら、こうも考えられますよ。その二人が犯人で、俺に罪を着せようとしてるとか」
和那「ちょっと、いきなり何を言うのよ!」
海「だって、二人がかりでそれっぽいこと言って、俺ばっか責め立てられるんすよ?ほんと怖いですね。よだれ垂らして寝ているアホ面からは想像もつかない」
響「ん?よだれ?」
海「………………あっ、しまった!」
一織「種子島さん。あなたは喋りすぎたようですね」
え?一織ちゃん?まさか、私が気がつかなかっただけで本当によだれ垂らしながら寝てたの?
一織「なるほど。不透明だったところまで見えてきましたよ。あなたは先に山田さんを殺して右腕を切り落とす。そして、それを私が寝ている横を通ってコテージに置いてある箱までわざわざ持っていったと」
海「……っ!」
一織「私が目覚めれば良かったんですがね。そう都合よくはいかないみたいです」
響「じゃあ、あなたからの反論はもうありませんか?」
海「……はい。反論なんてありません。俺が犯人ですよ」
和那「そんな、嘘でしょ……」
海「嘘なんかじゃない。俺が、三人もの人間を殺した犯人ですよ!」
彼はそう言うと、鞄から何かを取り出した。その先端は血で汚れていた。
響「種子島さん!?何をしようとしてるんですか!?」
海「殺すんです。今ここで殺さないと、気が晴れないから」
一織「そんな、復讐で気を晴らそうだなんて…!」
海「分かってる。でも!なんとしてでも殺してやる!花園 空!!」
空「お、何を…」
海「じゃあ答えろ。覚えてるか?佐倉 のあって女」
空「し、知らねえよ」
海「ふざけてんじゃねえ!お前ものあを殺した共犯者だろうが!」
和那「種子島くん!どうしてそんなに必死になるの?ただのADじゃないの?」
海「あんたたちにとってはそうでも、俺にとっては違う。のあは、のあは…!俺の彼女だ!」
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