第14話
私たちの後に続いて、コテージにいた人たちが次々に教会に来た。
空「な、なんだよ、これ」
海「え…嘘、ですよね、さすがに…」
響「…いえ、嘘なんかじゃありませんよ。ここにいるのは、山田さんの死体です」
和那「どうして…どうしてなの…?」
死体を目の前にして穏やかではいられなくなったようだ。当たり前のことではあるが、もしこの中に犯人がいるのならば、どれだけ演技が上手なのだろうかと思う。
しかし、どうして教会に集まったのだろうか。コテージに杉本さんが駆け込んだときに教会に来るように言ってはいたが、それだけで集まるのか?
それに、コテージにいた全員がいないことも気になる。蓮花さんと赤間さん。彼女たちだけいない理由は何故なのだろうか?
そう思っていると、かなり遅れて蓮花さんが現れた。
蓮花「どうしたんですか」
空「どうしたもこうしたもないよ!だって、山田が…!」
蓮花「山田って、あの人が、どうかしたんですか?」
響「…殺されたんですよ」
蓮花「え!?そんな、本当!?」
一織「本当ですよ。見たくないなら、こちらには近づかないほうがいいです」
蓮花「そんな、まさか、殺人事件が起きたっていうの?」
響「えぇ、間違いないでしょう」
この言葉に、空さんが反応を見せた。
空「ちょ、ちょっと待ってくれよ。『殺人事件』だなんて、まるで俺たちを疑っているみたいじゃないか!」
響「そうです。私は、ここにいる誰かが犯人だという可能性を視野に入れています」
空「で、でも、これが首吊り自殺だって可能性もあるだろ!?」
響「じゃあ、どうして右腕が欠損しているんですか?」
空「…っ!?」
響「確かにここで首吊りをした可能性というのも考えられます。だとしても、右腕を切り落とせますか?」
空「そ、そのぐらい、できなくはないだろ」
響「どうでしょうね。力と覚悟があって、切り落とした後に首吊りをする余裕があると。しかも、自分の首に縄を縛ると。そんなことができるんですか?」
空「ぐっ…」
すると、意外な人物が花園さんに意外なことを聞いた。
蓮花「花園さん、あなた、なんだか焦っていませんか?」
空「い、いや、そんなことは…」
和那「言われてみれば、なんかおかしいかも。殺人ってとこにやたらと反応してたし」
空「いや、だって…」
海「しかも、自殺なんじゃないかとずっと疑ってたしなぁ」
空「な、なんなんだよ!全員揃って!それじゃまるで、僕が犯人みたいだろ!」
蓮花「そんな、私たちはあなたの様子が変だと思っただけで…」
空「うるさい、違う、違う!あいつも、あいつだって…!」
あいつ?誰のことだ?
響「花園さん、あなた、今回が違うというだけで過去に人殺しか、それに近い経験があるんじゃないですか?」
空「は?な、何を言ってるんだ」
響「いえ、ただ気になっただけです。でも、『あいつ』というのが引っかかりまして」
和那「…もしかしてだけど、あんた、さくらを殺したんじゃ…」
空「違う!あれは、勝手に自殺しただけで…!」
響「勝手?どういうことですかね、それは」
空「あ、クソッ!それは!」
私たちが彼に問い詰めていくと、段々と彼も本性を表した。そして、追い詰められて彼はこんなことを言い出した。
空「はー、そういうことか。お前らグルなんだろ?僕を犯人に仕立て上げるために寄ってたかって言いたい放題ってか。じゃあ、僕をどっかに閉じ込めてみればどうだよ!そうすりゃ、これ以上誰も殺せない。いいだろ、それで!」
彼の気迫に、足が震えてしまった。そんな状況を、ある疑問が塗り替えた。
一織「あれ?そういえば、赤間さんはまだ来ないんですか?」
響「え?」
そうだ。コテージにいたメンバーのうち、彼女だけはまだ来ていない。
蓮花「もしかして、今回の犯人は赤間さん…?」
空「ほ、ほら、どうだよ。僕が犯人じゃないって証明されたじゃないか」
一織「何を言ってるんですか。まだ赤間さんが犯人だと決まったわけではありませんよ」
空「………」
しかし、実際に疑わしいことは間違いない。だとすると、彼女はどこへ行ったのだろうか。
その時だった。教会にもう一人現れた。赤間さんだと思っていたのだが…
剣持「な、なんだ、これは」
響「え!?剣持さん!?」
剣持「ん?そこにいるのは、探偵か?」
響「はい。響です」
和那「だ、誰?」
一織「この島の警察の方ですよ」
空「け、警察?」
警察が来たということで、花園さんは多少焦りを見せたが、特に何も起こらなかった。
剣持「どうも、剣持と申します。いったい、何があったんですか?」
響「…殺人事件ですよ」
剣持「さ、殺人事件だと!?」
一織「この人が被害者です」
剣持「どれどれ…」
彼は死体の様子をしばらく観察してから、こう言った。
剣持「ここは一度封鎖させていただきます」
こうして、私たちは現場から追い出された。もし現場に露骨な変化があったのならば、犯人は剣持さんになるのだろうか?
私たちはコテージに戻った。最初にしたのは、まだコテージにいるであろう赤間さんを呼ぶことだ。
和那「楓、いる?いるなら返事して」
と言ったが、まるで返事など返ってこない。嫌な予感がして、私は部屋を開けさせた。そこには誰もいない。荷物こそ人がいた形跡を残していたが、人がいないということは目に見えて分かる。
まさか、本当に彼女が犯人なのか?それとも、誰かが彼女を隠したのか?それは、この時点では分からなかった。
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