第7話

そんな私の疑問とは別に、蓮花さんがこんなことを聞いた。


蓮花「そういえば、皆さんはどうしてここに来たんですか?」


その瞬間だった。たった一瞬で、コテージが凍りついたように静まり返った。私だけでなく、一織ちゃんや蓮花さんにもそのことは伝わったようだ。


しかし、その対応は全く異なっていた。蓮花さんは「静まり返った」という事実しか分かっていないが、一織ちゃんは「今回ここに来た原因」を思い返していた。そこが、二人の差だ。


蓮花「え?どうしたんですか、みんな揃って黙っちゃって」


つぼみ「…………っ」


一織「根室さん…その質問をする、ということは、あなたにとっても相当リスキーなのではないですか?」


蓮花「リスキー?どうして」


一織「ここにいる人たちに来た理由を尋ねるなら、自分が来た理由も話しておくべきです…特に、今回なんかは」


芸能人に話しかけられてドキドキしていた、さっきまでの年相応な彼女とは大違いだ。今の彼女は、彼女なりに冷静な判断をしているのだ。


ということは、彼女はここにいる理由を理解していたのだろう。自分と照らし合わせた結果ともとれる。


しかし、蓮花さんはそれを嫌がっていた。その判断も何もおかしなことではない。こんな理由を易々と話せるはずがないのだ。一織ちゃんにそれは通用しなかったらしいが。


蓮花「一織ちゃん、それはあまり良くないんじゃないかな…」


一織「どうしてですか?」


蓮花「どうしてって、あんなことは話せないよ」


一織「なるほど…でしたら、私から話しましょう」


蓮花「ちょっ…え?」


私も止めようとか考えなかったが、どの道こうしなければ行けない気はしたので止めなかった。それにしても大胆なことをするものだ。


一織「私たちがここに来たのは、この人、根室 蓮花にとある荷物が届いたからです」


つぼみ「に…荷物って、何ですか…?」


一織「それはですね…根室さん、『あれ』、当然持ってきましたよね?」


蓮花「う、うん」


一織「じゃあ、それをお借りしてもいいですか?」


蓮花「え?いいけど…」


蓮花さんはそう言うと、自分が持ってきた箱を取り出した。中身は、もちろん松原さんの生首だ。


蓮花「はい、どうぞ」


一織「ありがとうございます」


和那「ちょっと、何がしたいのよ」


一織「そんなに大したことではない、かもしれません」


楓「んなことはどうでもいいのよ。さっさと言いたいことを言いなさい」


一織「あ、いいんですか。じゃあ、もう話しちゃいましょうかね。これです」


一織ちゃんはそう言って、箱を見せた。すると、分かりやすく動揺した人がいた。


楓「な、何よ、それ」


一織「箱ですよ。『中身を取り除いたら』、ただの箱です」


つぼみ「な、中身を取り除いたら…?」


楓「なんなのよ、アンタさっきからさ!」


一織「逆に聞きますけど、あなたはどうして動揺しているんですか?」


楓「そ、それは…」


一織「もしかしてですけど、こんな感じの箱、見覚えがあるんですか?」


すると、一人ずつ、その箱について言及しだした。


つぼみ「わ、私、それと同じようなの、持ってます…」


和那「え?私もそれっぽいのあるんだけど」


空「実は、僕もなんだよね」


海「え?俺もっすよ」


楓「…はぁ、あたしもよ」


響「なんだって…ちょっとその中身を確認させていただいてもいいですか?」


私がそう言うと、それぞれが箱を取り出した。大小様々だ。そして、その中身を見せてもらった。


響「なるほど、これが皆さんが持ってきたものですか。まさか、全員持ってきているなんて…」


一織「どうします?響さん、開けます?」


響「もちろんだよ。ただ、これは私たちだけで見たほうがいいかな」


一織「そうかもですね」


すると、以外な人がそれに反対した。


つぼみ「だ、だめ…」


響「え?」


一織「山田さん、今、なんて言いました?」


つぼみ「だめ…その中身、わ、私も見たい…」


響「どうして、そこまでして…」


つぼみ「なんでかは分からない、けど、知りたい…!」


そんな彼女に、今度は賛同する声が挙がった。


和那「それを言うなら、わたしだって」


海「俺もっすよ。あんなの、他に持ってる人がいるとも思わなかったですし」


花園さんと赤間さんはそんなことに賛同しなかった。しかし、単純に考えたら、多数派は見たい人たちだ。ここは、こちらを優先すべきだろう。


響「分かりました。…じゃあ、いきますよ」

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