第6話

さて、他の人たちにも話をしておこう。と思っていたところに、男性二人組がやってきた。


空「やぁ、少しいいかな?」


響「はい?あ、いいですよ。私は日野 響です」


空「僕は花園 空(はなぞのそら)。よろしくな」


海「俺は種子島 海(たねがしま かい)です。よろしくです」


響「よろしくお願いします」


この人たちは、双子というわけではないのだろうが、なんとなく顔が似ている。花園さんは天然パーマ、種子島さんは髪の毛が半分黒半分白になっているので、そこで判別をつけるしかなさそうだ。


そう思いつつ、一織ちゃんの方を見ると、なんだか落ち着きがない様子だ。そういえば、杉本さんが話しかけてきたときはそんな様子だった。ほんの少しで冷静さを取り戻していたが。


そんな彼女に対して、花園さんが話しかけた。


空「どうかした?なんだか落ち着きがなさそうだけど」


一織「んーーーーーーーーーーーー」


響「一織ちゃん?」


一織「ん?あ、なんでもないです」


いや、これは何か考え込んでいるやつだな。伸ばし棒を十本も使うほどだ。相当考え込んでるな。


空「いやいや、なんでもないわけがないでしょ?本当にどうした?」


一織「い、え、あっとですね」


海「あ、もしかしてですけど、『どうしよ有名人すぐそこにいるよ!え?マジで?現実なの!?』とか考えちゃってます?」


和那「そんな都合のいい話があるかな」


一織「……えーっと、種子島さんの言う通りです」


海「っしゃおらぁ!」


和那「あ、あるんだ…」


一織「なんだったら、本当は杉本さんに話しかけられた時点で限界でした…」


本当にそうなんだよな?心なしか不自然な間が空いていたような気がしたのだが。というか、緊張しているようにはまるで見えないが。私が疑いすぎているのか?


そこに水を差すように、一人の女性が話しかけた。


楓「はぁ、バカバカしい。呑気でいられていいわね」


和那「ちょっとアンタ、そんな言い方ないでしょ」


楓「は?あたしはただ本当のことを言っただけよ。こっちにはそんな余裕ないってのに、そこのガキみたいなのはそんなことも分からないのね」


言い方が厳しい。それに、相手のことをまるで考えていなさそうだ。一織ちゃんも、「悪かったなガキで」みたいな顔をしている。トラブルはなるべく避けたいが、もしかして厳しいか?


空「まぁ、とりあえず自己紹介だけでも…な?」


楓「何?そんなこと、私がする必要あるの?私ほどの知名度があって?」


一織「…………あー、なんだっけー。見たことある気がするけど、思い出せないなー」


一織ちゃんがわざとらしい棒読みでそう言った。絶対ガキ呼ばわりされて怒っている、と私は思った。


楓「赤間 楓(あかま かえで)。これでいいでしょ?」


彼女は、性格は大変よろしくないが、見た目は抜群に良いスタイルをしている。なんだかんだ私も男なので、その胸の大きさには惹かれてしまった。男性人気の高さが伺える。


そして、彼女が自己紹介を終えてすぐに、ドアをバンバンと叩く音がした。鍵は開いているのに、と思いつつドアを開けると、そこには小動物みたいな可愛さを感じさせる女性がいた。


つぼみ「あの、えっと、こんにちは…」


響「こんにちは。あなたは…」


つぼみ「山田 つぼみ(やまだ つぼみ)です…アイドルしてます…お願いします…」


彼女の容姿や声は可愛いという表現がしっくりくる。のだが、彼女は常に何かに怯えたかのような態度をしている。それこそ、黒い天使・アズリエルなんかに。


そういえば、山田さんが自分の仕事を教えてくれたので、他の人たちの仕事についてもまとめておこう。


杉本さんは、自分で言っていたが、モデルだ。そのスタイルの良さからファッション雑誌に載ればそれだけで見た人を虜にする、とかそういった感じのことを言われていた。それに、気さくで話しかけやすい人だ。


花園さんはシンガーソングライターだ。それも、電子ピアノの弾き語りという珍しさと現代の若者の心を表現した曲の二つの要素で人気を確実なものにしている。彼もまた気さくな人だ。


赤間さんはアナウンサーだ。彼女はアナウンサーとしての技術よりも、各種のバラエティで得た人気が高い。彼女が出る番組は、それだけで話題になっているのだろう。多分。正直、悪態をつかれたことに衝撃があり、そんなことはもはやどうでもいい。


種子島さんはお笑い芸人だ。本来はコンビなのだが、今回は彼単体のようだ。部活の先輩後輩といった芸風のコンビで、彼はその後輩側だ。どうやら素でそんな感じらしいが。


山田さんはアイドルだ。彼女が所属しているグループはあらゆるアイドルグループの中でも特に有名であり、彼女はそのグループの主力メンバーだ。いつもの大人しさとパフォーマンス時のギャップで人気なのだ。


ついでに言っておくと、紫陽さんは声優だ。最近の作品はとりあえずで彼を出して間違いないと言われるほどの実力の持ち主だ。それでいて話が面白い。そのため、どんどん人気になっているのだ。


あと、松原さんは俳優だ。とりあえず顔が良い。ついでにどんな役にも向いていると言われるほどの天性の才能があった。そのため、引っ張りだこだったのだ。


そして、彼ら彼女らは一つの番組で共演していた。まだ松原さんの死体しか見ていないが、一体何があったのか、疑ってしまう。そうでなければ、境界島にこの人たちを集める意味がない。


黒い天使・アズリエル。その正体は彼らの中にいるのか。それとも、紫陽さんの妹の蓮花さんか、あるいはこの島の誰かか。案外無関係なのだろうか。そんな疑問を、私は巡らせていた。

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