第6話 母の教え
母は 94歳で2年前に他界したが穏やかに静かに死んでいった。直接の死因は肺炎だそうだが苦しいはずだったのに母は一度も辛いとか苦しいとか言ったことがなかった。ただ静かに穏やかに死んでいった。母は死ぬことが恐ろしいことだとか怖いことだとか 僕たち子供に見せないようにしていたんじゃないだろうか。だから僕は あまり死が恐ろしいと思ったことがない。もちろん 死は楽しいことではないことは分かっているがあまりにも恐ろしいとか怖いとか思ったことは正直 一度もない。母が死はそれほど恐ろしいものでないと自分自身で教えてくれたからだろうと今も思う。僕が今死ぬことをことさらに恐れなくても済んでいるのは母のおかげだ。母は生きることは楽しいことだといつも楽しそうにしていて教えてくれて、そして死ぬ間際にも死はそれほど恐ろしいものではないと教えてくれたんだ。初めから終わりまで 自分の産んだ子供たちのため 本当に素晴らしい教師だった。母が教えてくれたことの他に何も知らなくても 僕たちは生きることにも死ぬことにも怯えることなく生きていけると思う。僕はこの歳まで本当に死にたいと思ったことは一度もなく、まあなんとかなるだろうと楽観的に考えていられる。それはいつも楽しそうにしていた母がいたから だ。人生はそんなに悪いものじゃない、きっと楽しくなるだろうと思えた。生きることを楽観的に考えられた。
いつも母が僕を死から守ってくれていた。だから僕は この歳になっても生きたいと思っている。全ては母のおかげだ、感謝している。
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