第5話 自費出版

母の女学校時代からの友達は 母も祖父であるおじいさんのこともよく知っていた。名古屋で修行した祖父が開いた和菓子店で何にも修行している弟子がいて 祖父はかなりのやり手だったようで大きな仕事をいくつも取ってきた。当然 祖母のことも友達をよく知っていた菊田家の お嬢さんでお姫様のような人だということも知れ渡っていた。

僕に夢のヒントをくれたのも母だった。

小三の夏休み あの時 文章の書き方を僕に教えてくれたのは母だった。そしてあの時僕の書いた文章を母が褒めてくれた。僕はあの時 文章の書き方というものを母から教えてもらったんだ。そして僕は自分には文章を書く力があるんだと本気で思えた。

絵の方は昔から褒められていたので いくつか賞ももらった。でもそれはもう過去の話で僕はあの後 文章を書くことに興味を持って行った。でも全ては母の あの一言から 始まったことだったんだ。僕の書いたもの 母が上手だと褒めてくれたから僕は文章を書くのが好きになったんだった。

文章の方は 学校の作文コンクール か何かで一度入賞したぐらいであとは鳴かず飛ばずだった。コンクールにもいくつか送ったけれども 小さな賞を取っただけだった。後は自費出版のお誘い ばかりだった。今はもう 年金暮らしで貯金もほとんどないので、自費出版の話は無理だった。

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