第2話(2)いったいどこへ連れて行くつもり…?
「早く着替えて!」とメイリンは言った。
「なぜだ、このまま行けばいいじゃないか」とシエロは言った。
「都心とは離れているからとはいえ、この街も大都市の一角なのよ。それなりの準備はしなさいよ。せめて私が横であるいて恥ずかしくない格好をしてくれないといやよ」
「わたしが出かける必要があるのか?」
「当たり前でしょ、こんなところでご飯をデリバリーなんてしたらまた転がってる容器のゴミが増えるだけでしょうが」
メイリンは周囲に転がっているゴミを汚らしそうに眺めたあと、シエロをそのままの眼差しで見つめた。いわゆるごみを見るような目というやつだ。近くに対象物がある分無駄にリアルで解像度が高い。
「わかったよ。いまから着替えるから待っていてくれ」
シエロはだらだらとベッドから出ると、メイリンを横切って洗面所へと向かった。昨日も夜遅くまで起きていたせいで頭が冬の鉛みたに重たかった。
顔を10回くらいバシャバシャと水で洗い、髪の毛を整えるとその倍くらい口をゆすいだ。
部屋まで戻るとクローゼットから、お気に入りの服を取り出した。少ししわがよっているが問題ないだろう。ベッドの方を見るとメイリンがシエロのベッドで寝転んで、手鏡を見ながら自分の顔を、まるで完成した絵画の出来栄えを確認する芸術家のようにあらゆる角度から眺めていた。
「では行こうか」とシエロは言った。
「え、本当にその恰好で行くの?」
メイリンが怪訝な顔をしながら、シエロの一張羅を上から下へ、下から上へ視線を往復させた。
「なにか問題があるかな」
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