ハンター酒場と受付嬢

「都に着いた―!!思ったよりも早く着いた気がするぞー。」


「そう?普通に3週間かかったわよ。」


「マジか!?アミと一緒だからかな?」


「え?」


「え?」



 ダイスの天然発言にアミーユは不意を突かれたような感覚を感じて、頬を赤らめる。



(もう~!ダイスといると私のペースが何か乱される気がする!)


「コ…コホン…。それでダイスは都は初めてなの?」


「2回目かなー。小さい頃に父さんの仕事について来た事があって、その時にハンター酒場に連れてってもらったんだ。ってもあんまり記憶にないんだけどな。」


「それじゃあ一緒に酒場に行かないか?私も任務の報告をしなくちゃいけないから丁度いい。」


「いいのか?何から何まで悪いな。」


「気にするな。ダイスは私を助けてくれたし、その礼がまだ出来ていないから。」


(アミって結構義理堅い性格なんだな。)



 都の中心地に近づけば近づくほど色々な出店がある。


 スピリアでは見たこともない食材や加工品、楽しそうなゲームや怪しげなお店まで、ダイスは酒場に着くまでの間をアミーユと楽しむ。



(ふふ、人間の感覚だと弟がいるというのはこういう事なのかな♪)



 アミーユもまんざらではなさそうで、普段立ち寄らない出店などを楽しんでいた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「まさか酒場に着くまでにこんなに時間がかかるなんて…。」


「もうっ!ダイスが遊びすぎて夕方前じゃないの!」


「えぇぇ!?アミだって一緒に夢中になってたじゃないか!猫のぬいぐるみまでちゃっかり買ってるし!」


「こ、これは…!とにかく入るわよ。」



 ようやく到着した二人はハンター酒場に入る。


 ダイスの想像ではどんな屈強な奴らがいるのか、ピリピリした雰囲気だろうと一応の覚悟を決めていた。


 カランカラン…。



「こ、これは!?」



 入口を通ったダイスの目に映りこんできた光景は…。



「普通の居酒屋みたいな感じだ…。」


「そりゃあ酒場だからね。ひとまず私の任務報告からしてもいいかしら?」


「あ、ああ。」



 ダイスの期待を裏切るかの如く酒場は昼間から賑わっていた。


 各テーブルにてハンターが酒を飲みながら語り合ったり、カウンターで1人で飲んでいるハンターもいる。


 一応任務ボードには依頼が大量に貼られていたので、ハンター酒場で間違いはないのだろうが、ダイスは拍子抜けしたのか呆気に取られたような顔をしていた。



「アミーユ!」



 奥の方でアミを呼ぶ声がした。


 ダイスとアミーユは声がした方のカウンターへと歩く。



「ただいま!ノール!」


「もう遅かったじゃないの!やっと帰って来たわね!」


「はは、ごめんごめん。ちょっと手間取って。」


「しっかり任務は達成してきたのね~。あらその子は?」


「ここに帰ってくる途中で知り合ったんだ。スピリア出身の…」


「ダイスです。」


「ダイス君ね。お姉さんは『ノール・ネット』っていうのよ。よろしくね~。」



 ハンター酒場のカウンターであらゆる業務を担当する受付嬢ノール・ネット。


 綺麗な金髪でとてもかわいく、紅一点の看板娘だが年齢は非公表。



「アミーユはこの任務達成報告書を書いてきてね。ダイス君はお姉さんとお話ししましょう~♪」


「それじゃあ私は書いてくるから。ダイス、ノールは変な奴だけど仕事はしっかりしているから、色々聞いておきなさい。」


「もう!一言余計よ~!」



 アミーユは別のカウンターにある報告書に記入するため席を外す。



「それでダイス君はハンターの資格は持ってるのかしら?」


「はい!これ!」



 ダイスは自分のハンター免許を見せる。



「発行日は~、あらつい最近なのね。それじゃあ免許のランク制度は知ってるかしら~?」


「ランク制度?」


「そう。免許の名前の部分が今は白でしょ?ここの色で幻獣ハンターをランク分けしてるのよ~。」


「へえ知らなかったな。」

(そういや免許の発行の時にもらったガイドブックとか何にも読んでなかったなー。)


「説明するからちゃんと覚えておいてね~。ハンター免許は6段階でクラス分けされてて、下から白、青、緑、赤、銀、金の6色になってるわ~。」


「俺は新米だから白からスタートって事だな!」


「そうよ~。それで任務の方の説明なんだけど、依頼書の中にはどの色以上のハンターのみ受注可能とかって書いてあるのがあるから、自分の色に合った任務を選んで受注するのよ~。特に記載されてなかったら白でも大丈夫だからね~。」


「わかりやすく説明してくれてありがとうございます。」


「そんなにかしこまらなくていいわよ~。ダイス君のお姉さんだと思って接してね~。」


「ハハ…。」



 独特のキャラを持っているノールにダイスは若干たじろいでいる。


 あらかたの説明を受け終わる頃に報告書を書き終わったアミーユが戻ってきた。



「はいノール。お願いね。」


「は~い。あら…アミーユこれって!?」



 先ほどまでのほほんとしていたノールだが、報告書を見ると真剣な顔つきに変わっていった。

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