一緒に行く?

「とーにーかーくー!君は幻獣じゃないし、人間の敵でもないんだろ?」


「ああ、そうだ。」


「だったら俺が君に危害を加える事はないから安心してくれ!それで怪我もしてるし、今日はもう休んだ方がいい。街道とは言っても俺が見張りをするから大丈夫。」


「優しいんだな…。君は。」



 女ハンターが初めて見せた優しい笑顔にダイスは顔を赤らめる。


 照れ隠しのためか、後ろを向き1,2段高い岩の上に座り込むダイス。


 ふと空を見上げると星々がキラキラと光り輝く。


 夜も更けてきて焚火の日が消えかかってきた時、女が話しかける。



「ダイス…だったか?ダイスはどうして幻獣ハンターになったんだ?」


「起きてたのか?早く寝ればいいのに。」


「質問しているんだから答えてくれると嬉しいんだけどな。」


「ハハ、気が強いんだな。俺は父さんのような幻獣ハンターになりたくて幻獣ハンターになったんだ。」


「お父さん…?」


「そ!父さんは俺が10歳の頃に長期任務だって家を出て行ったんだ。高位幻獣を討伐する仕事だって言って。」


「高位幻獣…。」



 女の顔が真剣な顔つきに変わるのをダイスは見逃さなかった。



「俺はまだ幻獣ハンターになったばかりだ。高位幻獣がどういう存在なのかも知らないし、世界の事もまだ全然わからない。だから世界の事を知る、色々な幻獣の事を知る、父さんを探す、その全部が出来るのが幻獣ハンターだったんだ。」


「そうなのね…。でも今のダイスは成年くらいに見えるけど、お父さんは旅立ってからどれくらい経ったの?


「大体8年くらいだな。だから正直生きてるのか死んでるのかもわかんねーんだ。ごめんな、こんな辛気臭い話になっちゃって。」


「いや、私の方こそ軽い気持ちで聞いてしまってすまなかった。」


「だいじょーぶ!俺はあんまり気にしてない!それよりも君の名前はなんていうんだ?幻神獣って呼ぶのもどうかと思ってさ。」


「そう言ってくれてありがとう。私はアミーユ。アミーユ・イリダスという名だ。アルカライド様より頂いた大切な名前だ。」


「アミーユか!じゃあアミでいいな!よろしくなアミ!」


「ふふふ。いきなり省略してきたか。面白いなダイスは。」



 真剣な顔つきがまた優しい顔になっていたアミーユは自分の名を名乗る。


 お互いに名を知り、少し打ち解けた二人は身体をゆっくりと休めるため、眠りにつくことにした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 朝先に目を覚ましたのはアミーユだった。


 上の岩場でダイスがぐっすりと眠っているのを確認すると、火を起こし朝食の準備を始めた。


 ぐつぐつとスープを煮込んでいると辺りにいい匂いが広がる。


 その匂いにつられたのかダイスは目を覚ました。



「おはよう。それは?」


「朝食よ。簡単なスープとパンだけど、食べるでしょ?」


「うん!いただきます!」



 二人は簡単に朝食を終えると、それぞれ出発の準備をしだす。


 準備をしながらダイスはアミーユの方を見ると、ふと気になる部分を見つけた。



「アミ、腕の傷は…?」


「もう治ったわよ?幻神獣だから大抵の怪我は1日で治るのよ。」


「ほおぉ、凄いんだなー。」

(見た目は人間なのにあの傷の治り方…。どうやら幻神獣ってのは認めざるを得ないなぁー。)


「よいしょっと。」



 出発の準備が先に整ったアミーユは自分の荷物を持って立ち上がる。



「ところでダイスはこれからどこへ行くの?」


「俺はひとまず都に行こうと思ってる。ハンター酒場で情報収集したいからな。」


「あら、私も丁度都に帰ろうと思っていたのよ。それなら一緒に行く?」


「そうなのか?それじゃあ折角だからご一緒させてもらおうかな。」



 偶然にもダイスとアミーユの目的地は同じ都。


 ここから都まで約3週間前後の道のりを二人は共にするのだった。


 ダイスの真面目ながらも気楽な性格と、最初は固い態度をとっていたアミーユだったが、話し続けていくと意外にもウマが合っており、二人は道中で色々な話をした。


 ダイスが幻獣ハンターとしてやりたい事、そのためにした修行の話、好きな事などなど。


 幻神獣であるアミーユもダイスに対して親近感が湧いていたのか様々な情報などをダイスに教えたりした。


 アミーユは都でも有名なハンターの1人で、幻神獣である事は内緒でハンター活動をしている事。


 幻獣には様々なタイプがいる事。


 その他にもくだらない話などしながら二人は道中の旅を楽しみ、気が付けば都に辿り着いていた。

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