女の子
「幻獣がどうしてこの森に…?戦ってるのはハンターか?」
4足歩行タイプの幻獣は牛のような見た目をしているが、牛よりも遥かに鋭い角を持っている。
対してハンターの方は茶色い髪をした体格的には女性のよう。
息が上がっているのか動きが鈍く、幻獣の攻撃を躱すのがやっとな感じだった。
「これはまずいかもな。」
ダイスが戦闘に参加するつもりで一歩を踏み出そうとしたその瞬間だった。
とてつもない魔力と闘気をハンターの方から感じた。
「こ、これは…?」
あまりの衝撃に恐怖すらも覚えたダイスが見たものは信じられない光景だった。
ハンターの体が光に包まれ多少ではあるが見た目が変わっていく。
茶色だった神が美しいとすら感じるほど白くなり、手には鋭い爪が伸びていた。
その変身が終わった瞬間にハンターはその場から消え、次の瞬間には牛の首が地面に落ちた。
一瞬の間にハンターは牛に向かって突撃し首を落とすという、およそ人間では到底不可能な離れ業を成したのだ。
「何だ今のは?」
あっという間の出来事に若干放心状態のダイス。
幻獣を倒したハンターは先ほどと同じ状態に戻っていた。
「あの見た目はまるで幻獣…。」
ダイスがそう呟いた後にハンターはその場に倒れた。
すぐさまハンターに駆け寄りダイスは辺りを見渡す。
「やっぱり誰もいないな。幻獣と戦ってたって事はハンターでいいんだろうけど。とりあえず…。おーい。生きてるかー?」
呼びかけにハンターは応じない。
どうやら気絶しているようだが、どうするべきか悩むダイス。
「このまま放置してもまた幻獣が出てきたらヤバいよなー。戦闘を見ちゃったし目の前で倒れられたらもうしょうがないか。」
ダイスはハンターを腕を肩にかけその場を離れる事にし、ひとまず休憩していた岩場に戻る事にした。
身体に触れて初めて気づく。
「女の子だ。女のハンターって結構いるもんなんだな。」
この女ハンターが倒した牛は角を残し、身体は消え去っていた。
「幻獣は死体が残らないけど、部位は生きてる間に破壊したら残るってのは本当だったんだ。とりあえず拾っとこうかな。」
ダイスは幻獣の角を拾い上げ森を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
岩場に戻った頃には辺りは暗くなってきており今日はこれ以上は進めないと判断したダイスは野営をする。
「うぅーん…。」
「起きたか?」
夕飯の準備をしていると、寝かせていた女ハンターが目を覚ました。
「ここは…?アンタは…?」
「俺はダイス!森で君が倒れたからここまで運んできたんだ。」
「森で倒れた…?まさかあの幻獣との戦いを…?」
「最後の方だけ見させてもらった。」
「クッ!!!!」
戦いを見た事を告げると女ハンターは起き上がり、ダイスの背後をとろうとした。
しかし幻獣との戦いで見せたほどの速さはなく、容易に腕を掴み動きを封じるダイス。
「ハイハイ、落ち着いて!俺はハンターだし、君は怪我してるんだからとりあえず大人しくしようねー。」
「はぁはぁ…。クソッ…!」
ダイスは女ハンターをなだめてその場に座らせ、用意していた夕飯を差し出す。
「変なもんは入ってないから食えよ。美味いかどうかは保証しないけどな。」
「あ、ありがとう…。」
若干の警戒は解けたと思ったダイスも食事をとる事にした。
夕飯を終えお互いに少し落ち着いた時、女ハンターが話し出す。
「アンタは…怖くないの?私の事…。」
「ふぇ?」
いきなり突拍子もない事を聞かれたからか、間抜けな返事で返してしまうダイス。
「最後の方って事は見たんだろう…。変身した私の姿を…。」
「ああ見たよ。あれは魔法か?それとも…。」
「どうせ今の私じゃアンタには勝てないし正直に話すけど、私は
「幻神獣?何だそれ?幻獣じゃないのか?」
「違うわよ!!あんな野蛮な奴らと一緒にしないで!!」
「おお、悪い…。」
(いきなり怒りだしちゃった…。)
「私は白き神アルカライドによって生み出された幻神獣。幻獣とは全然違う存在よ。」
「白き神って、あのおとぎ話に出てくる神様の事か?」
「おとぎ話…。そうね、今の時代ではもうそうなっていてもおかしくないわね。」
ダイスは困惑している。
幻獣ではない幻神獣と名乗る女の子。
見た目は人間の女のでしかないが、ダイス自身がしっかりと変身する所を目撃していたがために困惑してしまっている。
(幻神獣と幻獣って一体どんな関係なんだ…?)
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