ういういー!
ノールの真剣な態度にゴクリと唾を飲み込むダイス。
(な、何だ…?)
「もう~、適当に書きすぎで全然分かんないわ~。」
(そういう事かよ!!)
「適当とは失礼ね!大体の数は書いてあるからそれでいいでしょ!」
「う~ん、困ったわねぇ…。ちなみに魔石はちゃんと持ってきてるかしら?」
「ああ!忘れてた!」
そう言い出すとアミーユは自分のリュックから幻獣討伐の証となる魔石を取り出した。
1,2,3,4と、どんどん出てくる魔石の数にダイスは引き気味になっていた。
「15,16っと。これで全部よ。」
「は~い。もう報告書もなくしてこれだけで任務完了にすればいいのに面倒くさいわねぇ~。」
「いやいや、受付嬢がそれを言っちゃダメじゃない?」
「あはは~。確かにそうね~。それじゃあこれで処理しておくから少し時間もらうわねぇ~。それまでの間ダイス君の初任務の依頼探しでも手伝ってあげなさい~。」
「はいはい、わかったわよ。それじゃあダイス、依頼掲示板でも見ましょうか。」
アミーユは無事に依頼を達成し、報酬を用意されるまでの時間でダイスの初任務の依頼を探す手伝いをする事となった。
ダイスは2人の独特な雰囲気で成り立つ仲に飲み込まれそうになっていたが、初任務と聞いて我に返る。
大きな掲示板には多数の依頼書が貼られており、ハンターは好きな依頼を自分の任務として受注できる。
ダイスは数ある依頼をジーっと見つめて自分に合う依頼を探していた。
「はぁ…。」
突然急に溜息のような声を出したアミーユにダイスは問いかけた。
「どうしたんだ?」
「んー?私の求めている依頼がないからちょっとね。」
「求めている依頼?」
「うん。まあない以上はどうにもならないからいいわ。それよりダイスはやってみたい依頼はあった?」
自分の依頼について振られたダイスは多数の依頼書の中から1枚を取る。
【ランク制限なし。小型幻獣の討伐】
「これにしてみるよ。今の俺がどれくらい通用するのかも知っておきたいし。」
「お手頃なのがあったわね。それじゃあその依頼書をノールの所に持っていきましょう。」
ダイスが手に取った依頼書は、都から歩いて数時間ほどの距離にある林の中で出現した小型幻獣の討伐依頼。
木の伐採や木の実などを取りに行った民間人が怪我をするなどの被害にあったため、今日発行されたばかりの依頼だった。
「ノールさん、これをお願いします。」
「あら~、新米さんには丁度良いのが発行されてたのね~。それじゃあすぐに受注処理するから免許出してくれる~?」
言われるがままにダイスは免許をカウンターに出す。
「………。」
少しの沈黙があった。
「あの~、アミーユの免許はまだかしら~?」
「え!?何で私まで!?依頼を受けるのはダイスよ!?」
「それは分かってるわよ~。同伴受注者にアミーユも登録しなくちゃいけないから早く出しなさ~い♪」
「いやだからこれはダイスの依頼で…。」
「あら?自分で連れてきた新米なのに、依頼だけ受けさせて後は知らんぷりかしら?ましてや年下のかわいい子を1人で幻獣討伐になんて…。」
「あーもう!わかったわよ!ほら!」
アミーユはしぶしぶ自分の免許をノールに差し出す。
ちらっと名前の所が金色なのをダイスは見ていた。
(すげぇ…ゴールドクラスか。俺も早くランクを上げて…。)
「ダイス君~、焦っちゃダメよ~。新米ハンターはまずはしっかり生き残れるように強くなるのが最優先だからね~。」
「あ、はい…。」
(なんでこの人俺の考えてる事分かったんだろう…。)
書類の手続きをしておりダイスの方を見てもいないノールだったが、ダイスの心を読んだかの如く、逸る気持ちのダイスをなだめた。
「全く、ノールには敵わないわね。」
全てを見通しているかのようなノールに対し屈託のない優しい顔をするアミーユがそこにはいた。
「お待たせ~。それじゃあこれが依頼引き受け書よ~。期限はそれなりにあるけど、なるべく早く終わらせてあげるのが自分のランクを上げる秘訣の1つだからね~。頑張って~。あ!あとこれアミーユの任務報酬よ~。」
アミーユはダイスと出会う前に受注した任務の分の報酬を受け取った。
「ありがとうございます。それじゃあ行ってきます!」
(普通に話しているだけなのに、しっかりとハンターを育成しようとするアドバイスが入っているなんて、受付嬢の鏡みたいな人だな。)
無事に依頼を受けた二人は酒場を出て、買い物に行く。
今日のところはひとまず準備と場所の確認などをし、明日の朝から討伐任務に赴く事にしたのだ。
道具屋で、ある程度の怪我にも対処できるように薬草を少々、幻獣を探すのに手間取って夜まで掛かるかもしれないので食料もある程度多めに購入し準備が整う。
「これで明日の用意は出来たなー。後は泊まる場所っと。アミ、どこか安い宿知ってる?」
「ん?宿なんか取らずに私の家に来ればいいんじゃない?」
「え?アミは家持ちなのか?」
「これでもゴールドハンターだからね。別の国や町に行ったら宿をとるけど、あくまで拠点はこの都だから家を買っておいたのよ。」
「いやでも女の子の家にいきなり泊まるなんて…。」
自分で言っていて恥ずかしくなったダイスの顔は真っ赤になっていた。
「照れてるなんてまだ子供ね~。都に来るまでの間にダイスは変な奴じゃないって分かったから私は大丈夫だし、部屋も余ってるからダイスも何も気にしなくて大丈夫よ。」
「そうか、ありがとう。それじゃあお言葉に甘えてお邪魔させていただくよ。」
「ういういー!それじゃあ帰るわよー!」
今日1日で見た町の外では見られなかったアミーユの別の顔にダイスは少し安心したような表情を見せる。
出店通りから少し歩いた先にあるアミーユの家は1人で暮らすには余りあるほど、かなり大きめの家だった。
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