第3話 ジークリオン・オブリージュ教皇猊下

そう、夢!

夢なら良いよね?

思う存分観賞しても!

ああ、目が喜んでいる。


紗良はうっとりとジークリオンを見つめた。


ジークリオンは攻略対象者の中で一、二位を争う美形だ。

つまり、紗良の愛して愛して愛してやまない最推しフェルリアンさまの次に麗しい顔だった。神さまありがとう! 素敵な夢を見せてくれて! ジークリオンは息をのむほど美しい。


気がつくと、ジークリオンの銀色に輝く長い髪が紗良に触れそうなほど近くにあった。


ジークリオンは目を細めて紗良を見ていた。

まるで紗良の一挙一動を観察しているようだ。


でも紗良はそんな事など気にならなかった。

だって、ジークリオンの顔を眺めるのに忙しいから。


鼻筋がスッと通っていて、切れ長の涼やかな目はストイックな感じで……それなのに、陶器のように極め細やかな白い肌に薄いけれど艶やかな唇は色気がある。神秘的な美とエロさの融合。……これはもう国宝級の美術品だ。地上に降りた天使? いやいや、そんな生易しいものじゃない。


心の中で合掌した。


神さま本当にありがとう。

素晴らしいものを見せてくれて。


でも、でもね、本当はフェルリアンさまに会いたかったです!

それが残念でたまりません!


そうだ!


早く目覚めて、今日買った『月光の贄姫』のファンブックを見なければ!

その中ならフェルリアンさまがいる。

ああ、フェルリアンさまの優美なお姿を目に焼き付けたい。

蕩けるような深い海色の瞳を早く見たい。


起きないと。

早く夢から覚めないと。


紗良は夢から目覚めるべく、お腹に力を入れて頬を両手でバチン!と思い切り叩いた。


「一体、何をやっている? 」


紗良の頬を叩いた両手をジークリオンは掴んだ。


「止めないでください! 私は夢から覚めたいんです! 」


紗良の抗議にジークリオンは眉をひそめた。

先ほどからジークリオンの顔を凝視してるかと思えば、時折その瞳を蕩けさせるこの娘は何だろうと見ていれば、いきなりこの娘は娘自身の顔を叩いたのだ。わけがわからん。

ここに出現したということは聖女で間違いないだろう。


「これは夢ではありません。貴女は私たちの世界に召喚された聖女です。」


ジークリオンは静に言葉を紡いだ。

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