第8話 いたずらネズミ
次のミッションは、ノアの予定に合わせて行うことにした。
今度はお兄様とも一緒にお外でお昼ご飯したい!お兄様一緒に行こ!!
シアが夕食時にこう言えば、両親から一発でオッケーが出る。
―――自分で言うのもなんだけど、こんなに甘やかしていたら、ろくな子に育たないんじゃない?
ノアはピクニックが楽しみなのか、ワクワクした顔をしていたが、両親がシアにデレデレで許可を出したら、複雑そうな表情になっていた。
きっとまた何でシアには甘いんだとか考えているんだろう。
でも両親がニコニコなのは、兄妹が仲良くなったのが嬉しいのもあるのだろう。
ノアの予定に合わせると、次にミッションが出来るのは2日後という事になった。
そこでセオはそれまでに、空いた時間に試しにまた一人でミンタ草を採りに行ってみたそうだ。
「多分ですが・・・私一人の時にミッションをやってみても、魔力量や体力に変化がなかった気がします。」
とのことだ。
―――うーん。私が一緒じゃないと、ミッションをやってもレベルが上がらない?それとも、セオはもうミンタ草くらいではレベルアップが感じられなくなるくらい強くなった??
今後検証が必要かもしれない。
ミンタ草の群生しているところは既に刈りつくしてしまったので、ノアとのミッションはいたずらネズミの駆除にした。
シアの体力は、既にいたずらネズミに齧られるくらいでは死なないだろうと、セオのお墨付きが出ている。
レベルが上がると防御力も上がり、怪我もしにくくなるのだ。
「はあ?いたずらネズミの駆除???」
無理言って一緒に出掛けることにしておいて、ネズミを捕まえると聞いたノアは、わけがわからないといった感じだ。
そのノアに、セオがざっと異世界の事とミッションの事を説明する。
相手は8歳である。どこまで理解できたかは未知数だ。
まあこれから一緒に行動していくうちに、おいおい分かっていくことだろう。
「いたずらネズミってどの辺にいるのかなー。」
シアがつぶやいた。
「その辺の草むらや畑に普通にいますよ。家や屋敷に潜り込むケースもありますが、流石に伯爵家の屋敷は対策していてほぼ出ませんね。」
セオがそう言いながら、またゆっくりと庭園を歩いて行く。
気分は完全にハイキングである。
しばらく歩いていくと、野原のような開けた場所に出た。
着いた途端にモモちゃんとクロエが、嬉しそうに全力で駆け出した。
「わあ!素敵。」
本当にこの伯爵家の庭は広かった。きっと辺境伯ならではだろう。
屋敷の正面は貴族らしく作り込まれた庭園だけど、裏に回ると自然を生かした森や野原が広がっている。
この調子なら色々なミッションが自宅の庭で出来てしまいそうだ。
最初は深窓の伯爵令嬢なんかじゃなくて、自由な庶民に転生したかったと思ったものだが、こう考えると良い家に転生したものだ。
―――それにしてもどうしよう。
この野原にいたずらネズミがいたとして、シアはまだ攻撃魔法などは覚えていなかった。
「すでに昨日、いくつか罠を仕掛けておきました。」
「え!本当!?」
さすがセオだ。シアの不安をものともせず、全て用意してくれていたらしい。
「はい。屋敷に普通にネズミ用の罠がありましたので、それを仕掛けただけですけど。あ、これです。」
「お~3匹も入ってる。」
覗き込んでみると、一つ目の罠の中には三匹もいたずらネズミが入っていた。
罠は固くて丈夫な木で出来た箱で、ネズミの歯でもそうそう簡単に削れないようだ。
罠に入るのは簡単だけど、出るのは「かえし」があって難しいような構造になっている。
次の罠には2匹。これで合わせてミッションクリアの5匹に届いた。
―――これ殺さなきゃダメかな? 捕まえた時点で駆除とか・・・無理?
ミッションクリア!
試しに心の中で呟いてみる。
お!!ミッションクリアマーク点灯!
「セオ!これ罠に捕まえるだけで、ミッションクリアになるみたい。」
「そうですか。では罠をどんどん集めてきましょう。」
何もしないで罠が運ばれてくるのを待つのもなんなので、シアもせめて罠を運ぶのを手伝う。
セオは「お嬢様が運ばなくても・・・。」と言ってくれたが、この先も一緒にミッションをこなす仲間なのだから、今から甘やかさないようにと頼む。
「ノア!この5匹を駆除したぞって思いながら、『ミッションクリア!』って心に思ってみて。」
「・・・・ノアだと?」
しまった、本人の前では「お兄様」と呼んでいたのだった。
どうも8歳の子がお兄様という感じがしなくて、本人がいないところではノアノア呼んでいたので出てしまった。
―――まあいいや。このまま押し通そう。
「うん。やってみて!」
「・・・・・・?・・・・・!?」
訝し気な表情でしばらくいたずらネズミを眺めていたノアが、突然ハッと目を見張る。
「なんだこれは。」
「だからミッション。クリアすると魔力量と体力があがるの。」
「そんな事があるなんて・・・。」
実はノアは、シアと似て魔力量が少なそうだった。
ノア本人がそれを気にしている様子もあったので、魔力量が増えた事が嬉しそうだ。
罠を集めるのはすぐに終わったので、用が済んだいたずらネズミはまたまた護衛がどこかへ運んでいく。
まだ時間が早かったので、3人で適当に庭を散歩してからお昼ご飯を食べた。
―――あーやっぱり楽しいな。この何やってもどんどんレベルが上がる初心者の頃が一番楽しいのよね。転生して良かった。
それに・・・ゲームでは一人きりだったけど、今はセオとノアが一緒にミッションをやってくれる。前の世界では1人でゲームをやれれば十分だった。人との付き合いに疲れて、むしろ1人の方がよかった。
だけど誰かとミッションをやるのは、それほど悪くない気分だった。
気になるのは☆5の街の男の子の無実を晴らそうというミッションだが・・・・。
―――庭で出来るだけレベルと上げたら、タイミングを見て街に行ってみたいな。
そう思ったシアだった。
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