第13話 解析作業
神託Lvが上がった事で判明したスキルとその効果は以下の通り。
・神託 …… 脳内アナウンスが聞こえる。Lvに応じて情報量が増える。
・鑑定 …… 探索者、敵性体の情報がわかる。自分よりLv×10上のレベルの相手まで確認可能。
・熱耐性 …… 温度差によるダメージをLv×1%分減衰。
・奇跡 …… Lv×10%の確率で攻撃判定を無効化
・心眼 …… 半径Lv×10m範囲の情報が得られる。
・天罰 …… Lv×1回分、広範囲雷魔法が発動する。固定ダメージ1,000,000。(CT24時間)
・偽装 …… 自分レベル+Lv×1以下の相手からの鑑定に対し、ステータスの表示を任意に誤認させられる。
・再生 …… 最大HPのLv×1%/分回復する。
・共有 …… Lvに応じて様々な無形のものを共有できる。
・分身 …… Lv×1人の分身体を生成できる。分身の得た情報は常時共有される。
・無限収納 …… 生命体以外を無限に収納できる。任意のものにLv-1個の取り出し口を付与できる。
・泳者 …… 水中行動が出来るようになる(窒息無効)。また、水中での移動がLv×10%早くなる。
色々と突っ込みたいところはある。ダメージが数値化されている以上HPも数値化されているはずだが、どうやってわかるんだ、とか。まあ、内容については色々突っ込みたいところはあったが、無駄な調査をしなくて良くなったことに関しては非常に満足している。記載内容に無い部分まで網羅するべきかもしれないが、仕様の抜け穴を探している暇はない。
鑑定を使えば第三者のスキルも分かるので、ついでに家族のスキルも神託で調査した結果が以下の通り。
・慈恵(栗花) …… 回復魔法の効果がLv×10%増加。
・天運(李空) …… 運がLv×10%増加。
・混沌(桃) …… 魔力がLv×20%増加。ただし、フレンドリーファイアするようになる。
栗花と李空のスキルはツッコミどころはあるけど、別に害があるわけではないので問題はないのだが、娘の桃のスキルは非常に問題がある。
『フレンドリーファイアするようになる』
まるで悪夢のような一文である。
ロールが魔王な上に、周囲に被害が及ぶとか、本当にダンジョン製作者はクソヤローだな。
うちの可愛い娘になんてもの付けやがる。
これで、迂闊に娘をパワーレベリングするわけにも行かなくなった。
むしろ極低レベルを維持するべきか。
しかし、そうなると他の自衛手段を考えなければ……。
うごごご、頭が割れそうだ。
フレンドリーファイア出来ないというのはネットで見たが、ささくれ取る程度の自傷はできた。範囲攻撃系の魔法等が安全設計で味方を巻き込まない仕様になってるとか? でも自爆は出来る? 敵味方判定をどうやっているかは分からないが。
そう言えば天罰も雷魔法らしいな。ついに魔法が使えるようになったわけだが、スキル以外での魔法行使って出来るものなのか? 修行するとか? それとも習得用アイテムかスキルでもあるんだろうか?
疑問は取り留めもなく湧いて来るが、実用面で考えよう。
レベルと大量のスキル、称号を保有してしまった俺にとって偽装はかなり使えるスキルだ。
正直次樋口さんにあったときなんて言い訳したものかと思っていたのだ。
ステータスウィンドウを開いて偽装と口にすると、レベルの横には+と-の表示が現れ、タップすることで、表向きの情報を選択できる。スキルについても表示、非表示と、スキルLvの調整が可能なので、強く盛ることは出来ないが、弱い方向にであればいくらでも盛れる仕様となっていた。
さっそくレベル1当初のステータスに変更。
一度ウィンドウを閉じてもう一度開いても情報が保持されていることを確認して満足する。
まあ、当然偽装を看破する系統のスキルもあるだろうが、レアスキル以上になるだろうし、レベルで上をいかれる心配は当面ないと信じているので大丈夫であろう。
スキルで解説を見て結局よくわからなかったのが共有である。Lvに応じて様々な無形のものを共有できる、とあるので、誰かと何かを共有することだと思うのだが、こればかりは一人では検証のしようがない。付き合ってくれる誰かが必要だ。
「そんなわけで、頼むよ栗花」
「どんなわけよ」
「新しいスキルの検証。ざっくりとしたスキルの効果は分かってるんだけど、詳細が不明でさ。あ、因みに栗花のスキル慈恵は、回復魔法の効果が上がるらしいよ」
という事で、子供を寝かしつけた後に仕事中だった栗花の元まで来る。
「回復魔法? 使えないけど?」
「だよね。まあ、そこで共有スキルの検証なんだけど……」
無形のもの。
キーワードはこの部分だろう。物品であれば勝手に貸し借りすれば言い訳で、スキルである理由もない。
となると、ダンジョンに関わる数値的な部分だと推察できる。或いはスキルも共有できるのかもしれないが、Lvに応じてとあることから、共有Lvが上がるにつれて共有できる種類が増えるものと推察される。神託と同じ感じだろう。
さて、それでは何が共有されるのか。
数値的な物だとすれば、配分するために共有スキルを発動することで表示が出ると思うのだが。
「共有」
予想通り、俺の目の前にウィンドウがポップする。
凍野杏弥 取得経験値 11,233,240
凍野栗花 取得経験値 0 [+][-]
「キタコレ!」
「な、なな、何よ変な声上げて」
びっくりする栗花に謝りつつ、しかしほくそ笑むのを止められない。
数値化が可能ということは、経験値テーブルを厳密に導き出せる。
個人差がある可能性もあるが、指針くらいにはなるだろう。
攻略情報としてはこの上ない。
ある一定の法則に基づいて経験値の配分と、次のレベルまでの数値が決定しているのであれば、レベルアップの為の狩りも効率化できるし、最大レベルまでの必要経験値の予測も立てられるというもの。
後は、このウィンドウで栗花に経験値を振りながら、どこで栗花のレベルが上がり、どこで俺のレベルが下がったかを検証すれば……。
「ブツブツと気持ち悪いわよ杏弥」
「やべ、口に出てた? けど、これで色々と捗りそうだったからさー」
試しにポチポチと経験値を栗花に振ってみる。
1100振ったところで栗花のレベルが2に上がった。
更にポチポチと上げていくと、2300でレベル3、3600でレベル4に上がる。
「おやおや」
「何?」
因みに栗花は先程からPCを弄って仕事中である。気を散らせてゴメンよ。
「2から3で+1200、3から4で+1300ということは、さらに+1400すると、レベル5に……なったな」
つまり次のレベルまでの必要経験値は1000+現在レベル×100ということか。
任意のレベルまでの経験値を求める式は……、計算面倒だからスマホのスプレットシートで累積経験値計算して、グラフ挿入してトレンドラインで二次関数で近似すれば……。
任意のレベルxまでの累積必要経験値は50x2+950x-1000となるから、俺の現在レベル464までの必要経験値は11,204,600。お、あってるっぽいな。
レベル3桁は確定しているので、999がカンストだと仮定すると、カンストに必要な経験値は……、50,848,100。
割と途方も無いような数値に見えないことも無いが、赤竜討伐で一撃一千万超の経験値が入ったことを考えると、そうでもない。
いや、レベル差250あってこその取得経験値で、本来実現性の無い話だったのかもしれないが。
「共有で経験値を一旦全部栗花に預けてレベルを1に戻して、また同じことを繰り返せば?」
レベルが上がった事で日常生活に困っていることはない。というか、レベルが上がった事で何某かの能力が上がった実感がない。
別に体力が上がったとも感じないし、力が強くなったわけでも、足が早くなったわけでもない。
運動不足四十代の体のままである。少しは期待したのが無駄だった。
レベル464まで上がってこれなのだから、レベルが上がる弊害については基本的に考えなくていいだろう。逆に上げる必要性が問われるわけだが。
ただ、まるで無意味とも思えない。
少なくとも設定してあるということは、高い方がダンジョン攻略には有利となるはずである。
そこまで無意味な事をしていないと、まだ見ぬダンジョン製作者の良識を信じるしかない。
あんなチュートリアルダンジョンを作る奴の良識が果たして信用に足るかと言われると疑問ではあるが。
「しかし、連続で倒すとなるとガソリン増殖法は手間だな」
無限収納があるおかげで、運搬に関しては大分楽になるが、それでも何往復もしなくてはならないことに変わりはない。
臭いもキツイし、やらかした際の被害を考えるとあまり好ましい方法でもない。
別に本来はガソリンである必要もないのだ。要は、赤竜を窒息させればいいわけで。
「ちょっと出かけてくる」
「こんな時間に?」
既に夜中もいいところだが、思いついたら試さずにはいられない。むしろ、このまま寝る方が気持ち悪い。
「栗花も無理しないでね」
「ぼちぼち寝るわよ。いってらっしゃい」
「おやすみ」
栗花の頭をよしよしと撫でてから、俺は自宅を出たのだった。
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