3st round
第31話「三周目」
七月四日(金)
「……はっ!」
オレが再び目を開けた時、そこには見知った天井が広がっていた。窓の外から鳥の声が聞こえる。明るい。朝だ。
次の瞬間、スマホのアラームが鳴った。オレはそれに釣られて、ベッドから飛び起きた。そのままスマホを確認する。
(七月四日金曜日、戻ってきたっ)
四日の朝に戻っている。すかさずスマホのカレンダーを確認する。間違いない、七月四日だ。
***
「あら、今日は早いのね」
いつも何度もスマホのアラームをスヌーズしてしまい、遅刻ギリギリになってしまうので、既に制服を着て身支度を整え、居間いるオレの姿を見て、母親は驚いていた。
「ご飯食べて行く、時間くらいあるんでしょ?」
少しでも早く登校し、如月がいるか確認したかったが、今日は決戦だ。ちゃんと腹に入れておいた方がいい。
「うん」
***
朝食をとっている途中に、将暉からメッセージがやってきた。
『今日の告白楽しみにしてる』
予定通りだ。大丈夫、まだ如月はこの世界に存在している。
***
オレは逸る気持ちを抑えられず、走って学校に向かった。殆ど全速疾走。こんなにがむしゃらに走ったのは、部活を辞めて以来だった。
昔はもっと走れたのに、体力が落ちてることが身に染みた。悔しい。今まで自堕落に生活してきた自分が、オレは情けなくなった。ただ左足は痛くない。大丈夫、まだ走れる。
***
オレは大分早めに学校に着いたと思っていたが、もうグラウンドでは、運動部の朝練が始まっていた。昔は自分もそうだった。そんな当たり前に朝練してる奴らを見るのが嫌で、自分はいつも遅刻ギリギリに来ていたのかも知れないと、今更ながら思った。
外から朝練している奴らの声は、遠くに聞こえつつも、校内には人っ子一人おらず、シーンと静まり返っていた。怖いくらいだ。
昇降口で上履きに履き替える。誰もいない廊下を歩いていると、世界に自分だけが取り残されたような……異世界にでも迷い込んだ気分になった。
***
顔の筋肉がひきつる。オレは深呼吸し、自分の教室のドアのノブに手を掛けた。入ったら、まず席数の確認だ。二回目の時、座席数が一つ減っていたからだ。
(頼むっ)
オレは目を瞑り、祈るようにそのドアを開けた。そよそよと風の気配を感じる。勇気を出して片目を開ける。
――そこには
窓際に一人の少女が立っていた。
信じられなかった。
ずっと、ずっと会いたかった人がそこに立っていた。目頭が熱くなり、慌てて手でそれを抑える。その少女は、そんなオレを不思議そうに見ていた。
つづく
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