第28話「二周目〜整理〜」
どうしてこんなことに、なってしまったんだろう。オレは見慣れた自室の天井を、ベッドに寝転がりながら、ぼーっと見つめていた。
ゆっくりと目を閉じる。
息を大きく吸い込み、吐き出す。
吐き出す時に、少し気管が震えた。
さらに大きく吸い込む。自分を落ち着かせる時に有効な方法らしい。酸素が脳に行き渡り、物理的にリラックスできるそうだ。
こんな単純なことで、今の不安や緊張から解放させるなら苦労はないと思うけれど、今のオレには他にすがるものもない。
だが深呼吸を繰り返していると、不思議なことに、脈が落ち着いてきた。
オレはゆっくりと目を開けた。
――整理しよう。
どうしてこんなことになったのか。
如月から告白ドッキリを仕返された、祭りの夜、オレは神社の石階段から転げ落ち、瀕死の重傷を負った。
それを見かねた、自称神の黒猫が、代償と引き換えに、オレの時間を巻き戻し、怪我をする前の状態の体に戻してくれた。
その次の日、七月十四日、学校に行くと如月が消えていた。なぜか代償に「如月心乃香」が持っていかれたらしい。
それをなかったことにするために、もう一度、代償を払い、今度は黒猫が最大限戻せる時間軸に戻ったはず――この時間軸では、まだ如月心乃香は消えていないはずなのに。
「……」
何だか頭が混乱してきた。眉間が痛い。オレは目を細めて、答えを探すように宙を睨んだ。
「あっ」
突然、脳裏にある事象が飛び込んできた。脳のシナプスが繋がる感じを、身を持って体験する思いだった。
反射的に身が起き上がり、呼吸が苦しくなる。
(……もしかして。いや、そんなことで)
黒い不安がモヤモヤと胸に広がっていく。嫌な予感というやつだ。
オレは居ても立っても居られなくなって、気が付けば自宅を飛び出していた。
つづく
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