第4話 貸し出し⁉

「……これが全容です」


 話終わるころには、ゆんの頭からはシューっと湯気が出ていた。

 まぁそうなるのも無理はない。


 いくら双子の姉で体の関係を認知しているとしても、いきなり女子トイレに連れ込みレイプまがいのことをしたと言うのは恥ずかしい。


「へぇ~。それで凛希飛も乗り気だったんだ」


 ストローでオレンジジュースを飲みながら、日和は俺に視線を向けてくる。

 やはり矛先は俺に向いて来たか。


「乗り気というかまぁ、強引に連れ込まれた側なんだけど俺は」


 嘘は言っていない。個室に入ってからは俺も乗り気だったけど、言わない方が吉だろう。


「いつもと違う場所でするのは興奮した?」


「どんな質問だよ……」


「もし凛希飛がホテルとか家以外で興奮する変態さんなら、ここでも興奮するのかなーって」


「どちらかと言うと変態はゆんだと思うんだが」


「断れなかった凛希飛も十分変態だと思うんだけどな~」


「……仰る通りです」


 グーの根も出ない。確かにいつもと違う場所、ましては学校の女子トイレでなんて、スリルがあって興奮する。新鮮で、いかにも思春期真っ只中のカップルがやりそうなことで生々しい。


「ほら! 私はちゃんと言ったんだから次は日和の番!」


 話を切るように、横からゆんは割り込んできた。


「……コスプレねぇ。どこか貸し出ししてくれるホテルにでも移動するの?」


「そう!」


「でも近くにそんなホテルあったっけ?」


「それは……その……」


「ないよね?」


「うぅ……ここら辺にはないかもしれないけど、ちょっと移動すればある! はず!」


「なかったらどうするの?」


「最悪ドンキで何着か買うよ! もちろん私と凛希飛の自腹で!」


「俺も払う感じなのかよ」


 コスプレを貸し出してくれるラブホなんて、お高めなところしかないし、珍しい。

 現在地からコスプレがありそうなラブホまで3駅ほど行ったところにあるが、時間が時間だ。


 時刻は午後7時。今から行ってことを済ませて帰るとなると、最悪朝帰りなんてこともあり得る。

 明日も学校があるからそれだけは避けたい。


「う~ん……どうしよう~」


 頭を抱えて悩むゆん。


「今日はお開きにして休日にでもゆっくりすればいいんじゃないか? 別に今日やる必要ないし」


「私は今日見たいの! じゃなかったら私が恥かいただけになるでしょ!」


 ゆんはただ日和のコスプレをいち早く見たいだけなのでは? 姉妹愛がすごいな本当に。


「そうえばさ、ここのカラオケコスプレの貸し出しがあるって表に書いてあったんだよね」


 思い出したかのように、日和は人差し指を立てながら言う。


「え、ホント⁉」


「ゆんが思っているものではないだろうけど、エッチなのはあると思うよ? 着方にもよるけど」


「私の思い描くエッチなのがない……けどここにはコスプレがある……どうしよう」


「私はお任せするよゆんに」


 目をバキバキにさせながら悩むゆんに、気楽に答える日和。

 どれだけ真剣に悩んでるんだよ。血走っているぞ目が。


 ここまでくると恐怖すら覚える。恐ろしい姉妹愛……というか歪んだ変態の思考だな。


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