第9話「会合、濃いボディガード達①」

慣れて来たと言っても良い学園生活

そう、慣れて来たのだ、と言うことはだ

その日の放課後に凛が知らせてきたんだよ。


「非常に残念なお知らせがあります

真澄、この学園に来てから一週間です

もう、慣れてきましたわね」

「うん?何?その嫌な言い回し」

「他のボディガードと言えば理解して貰えますかしら」

「・・・あっ」

「察して理解して貰えたようですわね」

「僕もついているから大丈夫だよ輪道君」


苦虫を噛み締めたような顔をする凛と

凄く警戒しながら俺の隣に来たアリス


「よぉ、今回はオレも一緒に行ってやる

あの連中はある意味で危険だからな」

「番長!」

「良いか輪道、オレから離れんなよ

あの連中は興味ある対象ならボディガード相手であっても害があるんだ」

「何でそんな人達をボディガードにねじこんだの?!」

「先公どもが何を考えてるかは知らねぇが

多少は言葉を理解する連中だからな

もしもの時の保険だろ」


番長も苦々しい顔をして舌打ちしている

通常のボディガードはクラスが一緒のアリス

番長と自由に動く生徒会長の凛の3人だ。

もしもこの3人が病気や怪我などで休む時に

居ないと危険だからだろう数合わせで多少でもまともな者がその人達だと言う。


「特に注意するべき者は二人ですわ」

「だな、輪道、これだけは外見的特徴と名前を伝えておく」

「よろしいですか?」

「あ、ああ」


一人目、「黒百合華 麗香(くろゆりばな れいか)」三年生のSクラス、ランキング8位で

世界有数の資産家の娘で黒髪で縦ロールをしているから分かりやすいと言う

男嫌いな人らしく性格も男子に対して苛烈らしい

二人目「魅尋 杏瑚(みひろ あんこ)」一年生のSクラス、ランキング10位で能力制御が余り出来ていなくて無意識に能力が発現している時が多くて──


「え?みひろ?」

「あん?なんだ?知ってるやつか?」

「それってさ、能力が魅了ってやつ?」

「ああ、なんだよ、知り合いかよ」

「前に近所に住んでてさ、小、中と一緒で後輩で幼なじみだったんだよ。

能力が中学のおわりに発現して学園都市に引っ越ししたんだ」

「・・・なら、そいつならいけるか?」

「ですわね、味方に引き入れられそうですわ」

「輪道君の知り合いなら大丈夫そうだよね?」


何故か3人とも俺の知り合いなら大丈夫と言う謎の信頼感を見いだしている。

アンの奴、元気かなぁ、ランキング高いし

元気そうだな?問題は一切俺から連絡をして無かったことだ、どうしてかって?

あいつが引っ越ししてからケータイを水没させたんだよ。

ツルッと手を滑らせて洗面所で顔洗うのに溜めていた水の中さ、完全にデータが吹き飛んで他の会える友達には再び連絡先を教えて貰ったんだけどアンの奴から家に電話がくるかなと思っていたら今まで連絡が来なかったんだよ。

俺、嫌われてたのかな?と思って気を遣ってあいつの親の連絡先を俺の親に聞いて連絡しなかったんだ。

こんな事を3人に言わなくても良いかな?

俺はそう思い口を閉じておく事にした。

しかし、それは悪手であるとは思っていなかったんだ。


他のボディガードを集めてある教室に案内された俺、不安が半分、久しぶりにアンに会える嬉しさ半分でドキドキしてる。


「第3応接室、ここですわね」

「オレが先に入る、生徒会長は次、輪道と伏義野は一緒に入ってこい」

「わかった」

「わかったよ、万場君」


先に入る番長、続いて入る凛、アリスはいつでも転移出来るように俺の腕に組んで一緒に入った。

応接室に入った瞬間、向けられる複数の視線

興味の色合いが強い視線だけど

一際殺意がこもった視線を、俺に向けている

一人の女子生徒がいた。

カラスの濡れた羽のごとく漆黒で光の加減では青く見える懐かしいきれいな髪を腰まで

伸ばしてその先を俺がプレゼントした藍色のリボンで結んでいる。

切れ長の瞳は冷たい印象を抱かれることが多いがいつも優しい目をしていたあいつが

一年半で見違えるくらいにキレイになっていた。

そのあいつが俺を見て殺意を抱いている瞳を向けているんだ。


「・・・・・」

「えっと、何か凄く睨まれてるよ?もしかして?」

「後輩で幼なじみだ」

「うそでしょ?人を殺しそうな瞳で輪道君を睨みつけてきてるよ?!」

「・・・」


怒ってる、凄く怒ってるよあいつ

え?なんで?連絡して来なかったのあいつだよね?俺、まってたんだけど?


「何かしたの?」

「わからん」

「ケンカ別れしたとかは?」

「してない、と言うか連絡を待ってたくらいだぞ」

「えぇー、じゃあどうして?」

「ううーん・・・」


よくよく別れ際を思い出そうと唸っていると


「では、顔合わせと自己紹介をお願いいたしますわ、

まずは3年生から」

「では、わたくしから三年Sクラスの

「黒百合華 麗香」と申しあげますの

輪道君とお呼びしてもよろしくて?」

「あ、はい、よろしくお願いします

どうお呼びすれば?」

「そうね・・・ふふっ特別に名前で呼ぶ事を許して差し上げますの呼んで頂けまして?」

「先輩に対しておそれ多いのですが承知致しました、麗香先輩!」


何だかよく分からないが3人が言うほど俺

邪険にされてなくない?

そう思い3人に目配せするが3人とも物凄く驚いた顔をして固まっていた。

再起動した凛が恐る恐る麗香先輩に問う


「れ、麗香?真澄は、男ですわよ?」

「ええ、もちろん、そうですの間違えてはおりませんのよ?」


とても融和に笑顔で答える麗香先輩に未だ信じられないモノを見たような反応をする3人いや、ここに集まっているもの達全員驚いた顔をしていた。


「あー、どう言った心境だ?」

「貴方には関係ありませんの、話しかけないでくださいまし」


あ、いつもの通りだと、再起動した全員

するとどうして?と、疑問点が出てくる。


「そうですのね、皆様はその事が気になりますのね?」

「良かったら理由を教えてもらえるかしら?」

「ええ、よろしくてよ、わたくしはあのバス事故の時、たまたま彼と一緒のバスにいたのですの」


・・・・・はあっ?!と、その場にいた俺以外の人達が驚愕する。

俺はあ、そうなんだと思っただけだった。

しかし、次の言葉に俺は絶句した。


「輪道君が急に席を立ち上がり運転席の方へ歩いて行く時わたくしは自分の身体が動かないことに気が付きましたの」

「え?」

「あの後知った学園集会での輪道君の事と

その能力を知り事象の強制力の事を知りましたの、あの場所に輪道君がいなかったらと言う恐怖、そして、あの場所に居てくださった事の感謝と」


そして、と麗香先輩は俺の方へ向いてとても綺麗な笑顔をしてゆっくりと近付いてきた。

俺の右手を両手で包み込むと麗香先輩のとても大きな母性の象徴に押し付ける。


「え?」

「わたくし、初めてですの、殿方に心を·····

奪われたのは」

「はい?」

「命を救われたのもあるのでしょうが

今の今までずっと、そして今も輪道君、あなた様の事が胸の中で大きくなり続けていますのよ?」

「あー、うん?その、それって?」

「あなた様に一目惚れ致しましたの」


頬を赤く染めてそう答えた麗香先輩に凛が切れた。


「真澄はぁ!あたくしの!旦那様ですわぁ!」


その突進をヒョイと躱す麗香先輩、再び突進する凛、すかさずそれを止めた番長。


「離しなさいっ!この泥棒猫を鮮血でそめてあげますわ!」

「やめろ、生徒会長が暴れてどうすんだ

落ち着きやがれ」

「あらあら、凶暴な子猫ですのね、恐いですの輪道君♥」


そう言って俺の右腕に抱き着く麗香先輩

柔らかっ!?えっ?何コレ?どういう状況?


「離れなさいっ!」

「いくら生徒会長だからと言っても恋愛は

自由ではありませんの?」

「ううぅっ!!」

「落ち着きやがれっつーの、輪道、お前ガツガツした奴はどう思う?」

「え?苦手」


そう言った瞬間、凛が大人しくなり、

麗香先輩がスルリと腕を放したのだった。


「コホン、えぇー、自己紹介の続きをおねがいしますわ」

「そうですの次の方、よろしくお願い致しますの」

「・・・はあー」

「番長、お疲れ」

「・・・後で飲みもんくらいおごれ」

「おうよ」


まだ先が長そうなボディガードの顔合わせは最初から違う意味で危険だった

しかし、俺を睨み付けるアンの奴の視線は

変わらなかったんだ。






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