第10話「会合、濃いボディガード達②」
俺を睨み付けるアンの視線を受けつつ
自己紹介は続いていった。
「とても驚きですね、あの男嫌いの黒百合華さんが一目惚れとは・・・あ、私は三年Sクラスの「符覽 薫(ふらん かおる)」です」
なんと言うかふんわりとした感じの女性だった。
肩口まで伸ばした髪に緩くウェーブしていて目元まで前髪を伸ばしている、チラリと見え隠れするその瞳は垂れ目気味で優しそうだ。
可愛らしい女性と言う感じだな
本当にこの人が話が通じない感じの人なのだろうか?
「よろしくお願い致します、符覽先輩」
「ええ、よろしくね・・・ところで輪道君は
男の子同士の恋愛に興味はないかしら?」
「はい?」
「君は普通な顔立ちだからお相手は、そうね
ワイルドな万場君が受けで輪道君が攻めなんてものが良いと思うわ」
「え?ちょっ」
「いいえ、待って・・・ここはあえて男の娘な伏義野君に攻めさせて輪道君を受けに」
「符覽先輩!?待って!俺、ノーマルですから!普通に女の子が好きですから!」
突如として暴走しだした符覽先輩の話を肩を掴んで止めにはいる。
だが、何を思ったのだろう、少しだけ顔を赤くしてモジモジしだした。
「・・・えっと、どうかしました?」
「輪道君、こんな皆が見ているなかで私に
愛の告白なんて、私達まだ出会ったばかりよ?
その、そうね、愛に性別が関係ないように
好きになるのにも時間なんて関係ないわよね?
黒百合華さんや生徒会長さんの目もあるし
保留と言うか真剣に考えるから結婚を前提にいれておいても良いかな?」
「なんでだよ!?俺は女の子が好きって言っただけじゃないですか?!」
「大丈夫、2人だけの秘密ね?」
「話が通じない!」
この人、あれだ、腐女子ってやつ?
しかも思い込みも激しい人だ!
なるほど、確かに話が通じない!
そこで動いたのは凛と麗香先輩だ
ただ額に青筋がはいっていたが
二人に応接室の端まで連れていかれた符覽先輩は何やら話している様子
何か第一夫人とか聞こえてくるんだけど?
そこの3人、一体何の話をしているの?
「コホン、気を取り直して、次は2年生組
自己紹介をどうぞ」
「誰からする?」
「あーしは後で」
「・・・」
「いや、なんか言えし」
「あたしからいこっか?」
「よろー」
「・・・(こくり)」
なんかギャルとメガネ女子と沈黙君と言う組み合わせの3人、あれ?この人達クラスメイトじゃね?
そう思っているとメガネ女子が目の前に来た
ショートカットのサッパリとした髪型に真面目そうな感じがする雰囲気、委員長ってかんじだな、人好きそうな顔をして話しかけてきた。
「えっと、輪道君、さっきぶりだけども
会話はしたことなかったよね?」
「あー、うん、したことないな皆、アリスと凛に近寄りがたそうだし」
「自己紹介が遅くなってごめんね?」
「いや、全然、こっちも途中での入学だったし皆と距離があるのは仕方がないと思う
これから仲良くしてくれるかな?」
「・・・ふぅ、良かった、輪道君にそう言って貰えて、あたし「動飼 理歩(どうかい りほ)」です、能力は「動物支配」なの」
「ん?能力言って良いの?凛とか見てのお楽しみですって教えてくれなかったけど」
「良いの、あたしの能力は人以外の動物を操る事が出来る能力なのよ」
「へぇ~すごいな!」
「え?すごい?」
「だってさ、猫とか犬とかもふりほうだいだろ?良いじゃんか俺なんか夢みるだけだぜ?」
キョトンとした顔をしている動飼が突然吹き出して笑いはじめる。
俺なんか変なこといったかな?
しばらく笑った後落ち着いた動飼は俺の手をとる
「輪道君、ありがとう、支配って名前がついているからどうも他の人に受けが悪くてさ
あたし、この能力が嫌いだったんだけど
そうだね、猫と犬がたくさんもふり放題ってとっても良いよね?」
「おう!」
俺と動飼は笑顔で頷き合うすると何やら
不思議な感覚が俺と動飼の間で発生した。
「うん?」
「え?嘘、これって・・・」
なんだろう?ポカポカする?と言えばいいのか?俺の中からポカポカが動飼に向かって
はいっていってる?
「・・・PSY値が、上がった」
「うん?そうなのか?」
「輪道君、今、何したの?」
「うーん、何もしてないな、あえて言うなら
能力が好きになれて良かったなって思っただけだな」
「・・・輪道君の人たらし」
少しだけ顔を赤らめてそう言われた。
なんでジト目なの?あと凛、目を血走らせてこっちをみるのやめて。
かなりご機嫌良く動飼は離れていった。
次はあーしとギャルが前に出てくる。
うん、ギャルだわ、バッチリメイクを決めて
着崩した制服にミニスカート、髪を金パツに染め上げてアクセサリーもじゃらじゃら着けている。
うーん、顔立ちは可愛らしいのでメイクをもう少し薄くした方が良いと思うのだが
好みは人それぞれだから仕方がないか。
「うーっす、マスミッチ、で呼んでオケ?」
「おう!大丈夫だぞ!」
「いししっノリいーね!」
「まあ、前の学校でもそれなりにはクラス付き合いはしてたしな?どんな奴が来てもある程度は会話はするし嫌われてない限りは普通に接するさ」
「ホムホム、んじゃまぁ、あーしは普通?」
「うん?」
「こんなメイクしてっしケバいとか思う?」
「何言ってんだよ、それがお前の普通だろ?」
「・・・ほあわー、マジか」
「まあ、確かにメイクは濃いがそれだけ
気合い入ってるって感じるしオシャレに
常に全力ってやつ?だろ?」
「・・・ふ、ふひひ、いやあーマジで」
唐突に顔をうつむけるギャル、どうした?
俺は首をかしげているとギャルは勢い良く顔をあげた。
「あぶねっ」
「マスミッチ!!」
「ぐへぁっ!?」
勢い良く俺の腹にタックルをかましてきた
ギャルはそのままグリグリと顔をお腹に押し付けてくる。
「いだだだっ削れる!俺のおなか、削れちゃう!!」
「もうっマジ神ってるじゃん!どしてそんな分かりみってくれんの!他なんか全く理解せんのにさあー!」
「ば、番長ッヘルプッ!」
「おい、氷夜守、輪道は身体強度は能力無しの奴らと同じなんだから潰れちまうぞ」
「はっ!?ごめんマスミッチ、大丈夫?」
顔をお腹に押し付けてしまったからかメイクが全部とれてしまっている。
うん、すごい可愛いなパッチリお目目に桜色の唇、やはりメイクを薄くした方が映えるはずだ。
「そろそろ自己紹介しませんこと?」
「あ、サーセン生徒会長チャン、あーしは
「氷夜守 咲那(ひより さな)」だよ、能力はね
「氷結能力」なんだ」
「夏に便利そうだな」
「でしょ~」
「それはそうとメイク落ちちゃってるぞ?」
「ふぎゃっちょっ、待ってスッピンは恥ずいから!」
慌てて顔を隠す氷夜守に俺はあきれたように言ってやった。
「恥ずかしいもんかよ、十分可愛いって」
「ほえ?」
俺は立ち上がり自分の鞄を探る
うん、あったあった。
そんな俺をよそに氷夜守はどんどん顔を赤く染めていっているのだが俺は気にせずに
あるものを持って氷夜守の前に戻った。
「え?あ?か、かわ?!」
「ハイハイ、可愛いって言ったの、ほら、ソコに座って」
「ひゃい!」
はい、座ったな、俺が鞄の中から取り出したのはメイク道具一式だ。
「?チークや口紅にブラシ?」
「じっとしてろ」
「ひゃい!」
俺は手際良く薄くメイクを施す
だがその手は丁寧に、素早く、それぞれを指の間に挟んで使い分けていく。
「はい、完成、鏡をどうぞお姫様」
折り畳みの鏡を氷夜守の前に持っていく
呆然としている周りの方々、鏡を見て氷夜守は驚いた顔をしている。
「は、え?すごっえ?、何これ?どういう?」
「ああ、俺、妹が居てな、たまに妹様に頼まれてメイクしている時があるんだよ
その賜物だな」
「だ、だけど、これってもうプロ」
「あはは、そんなわけないだろ素人だよ」
俺は笑いながら道具をしまった
周りも何故かこいつマジで言ってんのかと言う顔で見てくる、解せぬ。
ふらふらと氷夜守が鏡を見ながら近くに座っている、おお~、と嬉しそうに自分の顔を見ていた。
さてお次は
「・・・」
「おおうッびっくりした」
「・・・・・(こくり)」
「えっと?よろしく?」
「・・・・・・・・・(こくり)」
「うん、良かったら仲良くしてくれるかな?」
「・・・・(こくり、こくり)」
しゃべらねえ!頷いてくれるだけましなのか?!え?嫌われているわけではないよね?
すうっと耳元まで寄ってきた沈黙君
「「影渡 静留(かげわたり しずる)」」
「あ、うん、よろしくな静留!」
「!(こくこくこく)」
静留、とてもキレイな声でした。
さて残るは一年生か、まだ睨んで来ているぞアンの奴、どうしたんだよ。
俺が連絡しなかったから怒ってるのか?
だったら連絡してくれても良いはずだろ
連絡が遅いとか、あいつらしくもない・・・
いや、待てよ?俺、何かわすれてる?
俺はアンとの別れ際を思い出そうとした──
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