第八話

シノスケ:…何故だ

ツバキ:申し訳ありません、シノスケ様

シノスケ:俺が聞きたいのは謝罪ではない!なぜお前が此処に居る⁉︎

ツバキ:私が人を殺してしまったからでございます

シノスケ:ありえない、何かの間違いだ。お前が人を殺せる筈がない、出来るわけがない

ツバキ:いいえ、私は人殺しでございます

シノスケ:戯けたことを抜かすな‼︎いくらお前といえど、我が妻を貶めることは許さんぞ‼︎

ツバキ:…いいえ、シノスケ様。私は元から卑しい人間だったのです

ツバキ:私は、この罪を償わなければならないのです

シノスケ:──ツバキ、お前は、本当に人を殺したのか

ツバキ:…はい

ツバキ:貴方様は処刑人です。罪人である私の首を刎ねなければなりません


シノスケ:(上手く息が出来ない)

シノスケ:(初めて処刑をした時ですら、これほど動揺した事など無かったのに)


斬りたくない

刎ねたくない

殺したくない

だというのに、シノスケは刀を振り上げていました


シノスケ:(──刀をしまえ、振り下ろせばどうなるか、一番良く知っているだろう)

シノスケ:(──振り下ろせ、ツバキは罪を犯したのだ、一番納得できる理由だろう)


断罪の免罪符を掲げ、人を殺す


シノスケ:(──この世で最も愛する者だぞ)

シノスケ:(──この世の命に区別はない)


そんな生き方を、今更曲げられるはずもなく


シノスケ:(待て、辞めてくれ、駄目だ──)

シノスケ:(そうだ、止まるな、お前は──)


こうして、かの処刑人は美しい花を落としたのです

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