デイジー①
〇場所不明・暗闇(時刻不明)
庭師が立っている。こちらに向かってお辞儀をしてから、話し始める。
(庭師):
「デイジーさんは現在中学二年生。
お母様のローズさんを見習ってか、男の子ですが外見はどう見てもロングヘアの女の子。学校では
デイジーさんには最近少々憂鬱なことがあります。学校で何かとデイジーさんに突っかかったり、ちょっとした意地悪をしてくる男の子がいるのです。通りがかりに足を蹴っ飛ばしてきたり、デイジーさんのいうことに何かと反発するようなことを言ってみたり……。デイジーさんには全く思い当たることがありません。璃々さんに言わせると……」
〇デイジーの学校・教室(昼)
話し込んでいるデイジーと璃々。休み時間らしく、教室の中は少し騒がしい雰囲気。庭師と同じ顔をした男子生徒が通りすぎる。
璃々:
「(不思議そうな顔をして)
なんだろね? わかんないことは本人に聞くしかないんじゃない?」
(庭師):
「璃々さんらしいコメントですが、聞いたところで答えてくれるものでしょうか? ……と思う間もなく、ご当人に聞きに行ってしまいました」
ちょうど二人のそばを通りすぎようとした博之を呼び止めるように、璃々が博之に話しかける。
璃々:
「ちょっと! 博之くん! デイジーになんか恨みでもあるの?」
博之:
「(にやっと笑って)
何のことだよ。俺がなんかしたか?」
(庭師):
「案の定、博之さんと呼ばれた男の子は薄ら笑いを浮かべてスットボケておられます。それとも本当に心当たりがないのでしょうか?」
デイジー:
「(関心したように)
璃々は行動の人だねぇ」
璃々:
「(にっこり笑って)
ん! あたしのモットーは悩むより動け! なの」
デイジーの心の声:
「(ふっと笑って)
璃々らしい。かわいいな」
(庭師):
「ともかく、デイジーさんは目下どうしようもないので様子を見ることにしました。博之くんのご様子を見ていると、ちょっとした意地悪も毎日ではありません。波が来るかのように何か仕掛けてきたかと思うと、すっと何もしなくなります。確かにこれでは、気のせいかと思えなくもありませんね。
璃々さんはガキ大将のスチューこと、スチュワートくんに相談することも考えたのですが、もう少しはっきりしてからでないと相談しづらいな、と思っていました。
デイジーさんはママにでも聞いてみようかな、とも思いましたが、実はローズさんとは、つい先日ちょっとした言い合いをしたばかりでしたので、もうローズさんに頼るのも癪だったようです。ちょっと位我慢した方がマシと思われたようですね。」
〇デイジーの学校・教室(昼)
璃々が、デイジーに向かって手招きをしている。教室内で話している美咲と博之に視線を投げながら、近寄ってきたデイジーの耳元に顔を近づける。
(庭師):
「そんな時、璃々さんがあることに気が付いて、デイジーさんの耳元でこう囁きました」
璃々:
「博之くん、最近みーちゃんと仲がいいみたいね?」
(庭師):
「みーちゃんとは、本当は美咲さんと仰るのですが、ご本人が『みー子ねえ……』と仰るのが癖なので、周りの方々もいつの間にか『みー子ちゃん』とか、『みーちゃん』とお呼びするようになりました。璃々さん曰く、『計算高いタイプに見える』そうで……」
〇デイジーの回想、学校・放課後の廊下(昼)
デイジーが書類の束を持っていると、美咲が駆け寄ってくる。
デイジーの心の声:
「(考え込むような様子で)
そういえばちょっと前のことになるけど、妙にみー子ちゃんがあたしに近づいて来ては、色々話しかけてきたり、重いものを持ってると手を貸したがったり、一緒に帰りたがったりってことがあった……」
(庭師):
「デイジーさんとしては、妙にもったりと話す美咲さんの話口や、そもそも美咲さんがよく口にする、TVのバラエティ番組などの話題に興味が持てなかったので、距離を置こうとされたようです」
〇デイジーの回想、学校・教室(昼)
デイジーが博之の前を通り過ぎようとすると、足を引っかけられる。
デイジーの心の声:
「(ふと気が付いたように)
そういえば、博之くんがあたしに意地悪してくるようになったのもその頃からだったような……」
〇デイジーの学校・教室(昼)
デイジーが璃々の方に近づいて話しかける。
(庭師):
「デイジーさんが璃々さんにそのことをお話しすると、璃々さんは我が意を得たりとばかりにニカッと笑ってこう仰いました」
璃々:
「それだよ! 博之くん、みーちゃんのことが好きなんだね、んで、きっとみーちゃんがデイジーのことを博之くんに話したんだよ」
デイジー:
「話したって?」
璃々:
「きっとデイジーがみーちゃんに冷たくしたとかなんとか……。でも博之くん自身は別にデイジーのことなんとも思ってないから、普段は何ともないけど、みーちゃんにデイジーのことをあれこれ言われた時だけデイジーが憎らしくなるんじゃない?」
デイジーの心の声:
「(顔を引きつらせて)
そんなことあるのかな……。よくわかんないけど、こういう時の璃々の言うことってよく当たるんだよね……」
(庭師):
「デイジーさんは、なんとハタ迷惑な、とも思われましたが、その後に続けて璃々さんが言ったことを聞いて一概に美咲さんの事も悪く思えなくなってしまわれました」
璃々:
「きっとね、みーちゃんはデイジーのことが好きなんだよ」
デイジーの心の声:
「(えっという顔をして)
そうなのかな。そうだとちょっと胸が痛むかな……。無理して付き合うとかっていうのは無理だけど、好きな人に相手にされないって辛いよね。ママなら何て言うかな……」
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