2,魔女マリアと昼寝猫




 その子は「にゃんにゃん」と鳴くし、女の子のようなので、「にゃんこ」と名付けた。


 にゃんこと暮らし始めてからの、私の生活は充実していた。


「にゃーん」


 ああ、脳が蕩ける。


 なんてまぁかわいいんだろう。


 クリクリとしたお目々で餌をねだられると、いくらでも食べさせてあげたくなる。


 この子のご飯代を稼ぐためと思うと、薬草作りもはかどった。


 以前はなかなか成果の出ない研究に、鬱屈とする日もあったが、


「にゃん」


 にゃんこと一緒なら、魔導書の細かい文字を追うのも苦にならない。


 しかも本を読む時のこの子ときたら、私の膝の上にちょこんと座るのだ。


 私の腕の間から顔を出して、魔導書を読む姿ときたら、まるでかわいさの権化。


 胸がキュンキュンして、何度も手が何度も止まってしまう。


「ニャー」

「ああ、ごめんね」


 そうすると、にゃんこは鳴き声で、ページをめくるのを催促してくる。


「にゃあ」


 にゃんこは時々、ページの一部に前肢を置いて私を振り返ることがある。


「ん? もしかして、この魔法に興味があるのかい?」

「にゃ」

「そうだねぇ、これは空を飛ぶ魔法で……」


 なんとなく教えて欲しそうだったので、私は分かりやすいように魔導書の内容を話してあげる。


 まさか本当に理解できると思ってやっているわけではないけれど、ついやってしまう。


 まるで弟子でもできた気分だ。


「その内、にゃんこも魔法が使えるようになったりしてね」

「にゃあーん」

「ああああかわいいいいいいい」


 別に魔法なんて使えなくていい。


 ただ毎日傍にいてさえくれれば。


 それだけ幸せだ。


 そう思っていたある日――突然彼らはやってきた。


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