実際の経験をもとにフランス留学を小説チックに書いてみます~

@machilda_

第1話

本当にここなのか?





今日は、念願の留学初日。今から三時間ほど前に、かれこれ15時間の空の旅を終え、やっとここ、フランスにたどり着いた。僕が降り立ったのはパリのシャルルドゴール空港だった。空港の中は薄い暖色系の明かりで、夕方なのにとても明るく、それでいてあまりにも聞きなれない言葉が周り中から聞こえてきた。憧れの地にようやくたどり着いた高揚感と、この先の生活への何とも言えない不安を掻き立てるようだった。






留学先の大学があるのは残念ながらパリではなかった。パリから特急で30分ほど東に進んだところにあるランスという街だ。そのため僕はどうにかして特急に乗らなければいけなかった。

飛行機が空港に着いたのが17時頃だったから、、、

と思いながら時計を見た。時刻はすでに19時をまわっていた。思っていたよりも入国審査や荷物の受け取りで時間をくってしまっていたらしい。

急がなくちゃ、、

背中にはパンパンに荷物が詰まった40リットルもの大きな黒いリュックを背負い、右手にはファミリー用の青い大きなスーツケースを、左手には先程つい買ってしまった、5ユーロで10個入りのクロワッサンを持っていた。僕はフランスに来たら一番にクロワッサンを食べると決めていたようだ。






そんなこんなでなんとか特急に乗ることができた。特急券の買い方がわからず困っていたところを、本当にたまたま通りすがった現地住みの日本人に助けてもらったりなんてこともあったが、そんなことはもう僕の頭には残っていなかった。なんせあと30分もしないうちに僕の新しい家につくんだから。コロナの影響でさんざん留学が延期になって、もういけないんじゃないかと思ったくらいに待たされた末の、今回の留学だった。つまるところ、僕のフランスでの新生活に対する期待は恐ろしいくらいに、まるで地元の秩父盆地を囲む山々くらいに、高まっていたのだった。






そして冒頭のセリフに戻る。実家を出発してから約20時間。体力もそろそろ限界だ、といった頃にやっと新しい家に着いたのだった。そう、たどり着いたところまでは良かった。しかし、そこにあったのは、家を契約した時に掲載されていたおしゃれな写真とは全くの別物と胸を張って言えるくらいの、今にも草に飲み込まれてしまいそうな家だったのだ。おしゃれな大家さんのお出迎えを期待していたが、実際に僕を出迎えたのは、人、ですらなく、玄関前に入口をふさぐようにして乗り捨てられたコケまみれのベンツだった。今まで感じていなかった疲れが、どっと押し寄せてきたのがわかった。

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