④多様性

 女子短大に進学したので学生は女子しかいないのだが、仲間達の一人称は「私」「僕」「俺」など様々だった。「彼女」という本来三人称を一人称で用いる子もいた。LGBTの類いのワードがまだ広まっていない時代だったが、「僕」や「俺」を使う女子大生を周囲も私自身も、何故かスルッと受け入れていた。

 また、私は元々アニメや漫画が好きなオタク気質であり、学部の関係なのかアニメ好きの同級生はとても多かったので居心地の良い場所ではあったが、アニメや漫画以外にも小説オタク、お笑いオタク、美容オタク等の色んなオタクが存在し、同じだけ非オタの同級生もいた。


 様々な人種がいて皆等しく仲が良い――はさすがに大袈裟だが、個人の特性をあげつらう学生はいなかったと思う。

 少し奇異な一人称も、オタク属性も、短大では迫害の理由にはならなかった。そもそも短大で誰かを迫害する光景はいなかったが。底辺高は充分な迫害の理由へとひっくり返る。


 高校時代、カラーリング等の校則を破る不良達は個性を受け容れろと教師に反抗していたのをよく見かけたが、彼らは見た目の個性だけを求めており、他人の内面の個性は受け入れようとはしなかった。

 他人と少し変わった内面を攻撃の理由にしない。一人称が「僕」の女性をいちいち非難する必要はない。オタク趣味をからかいの理由にする必要はない。こんな当たり前のことが短大でようやく身を持って知れたのだ。

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