プリンセス&プレデター



おそらく俺のであろう劇物onTheネギトロ丼を手にした瑠璃はネッチャネッチャときったねぇ音を立てながらスプーンで混ぜ交ぜする。混ぜる必要あるかなー。いや分からんでもないけどさ。プリンをカラメルソースが均等に混ざった状態で食べたいからってグッチャグチャに混ぜて食べるのはあると思うけどさ。味は美味しいけどさ。見た目は完全にゲーした奴になるのよね。ドブ色混じれば全てドブ。醤油入れてくれるの有難いけど味を足さないで。混ぜるな混沌。



「降りてください」


「無理」


「…………」



再三の注意喚起も一言で持って切って捨てる詩良先輩に瑠璃が折れる。俺膝の上に居座ることより、俺のお世話することを優先したようで、渋々、膝から降りて隣の席に座り直す。流石に俺膝上で2人でぎゅうぎゅうに座ってる状態じゃ俺にゴハン食べさせるのには無理があるものね。


しかしその場を譲ってでも俺の餌付けをしたいか。瑠璃さんの俺のお世話したいという飽くなき願望はどこから湧いてくるのか……。



「ほら、マヒロ。あーん」



スプーンの上には小さな混沌が乗っていた。ニコニコしながらスプーンを差し出してハイアーンしてくる瑠璃。


食えと?食わないとダメ?見た目ってあんまり気にしないけどさ。中身が大事だと思うけどさ。これは中身もあかんよね?真弘くんコレに何が入ってるか知ってるもん。ドブとゲロとドロでしょ?どう考えても不味いよね?ヤダー!食べたくなーい!


逃げ出したかったが、瑠璃が膝上から引いたことをいい事に詩良先輩が体勢を替え横座りになり、さらに腕を俺の首に巻き付けて体全体で密着してくる。つまりどういうことかと言うと、まったく動けないのね。なるほどね。詩良先輩もグルだった感じね?俺の拘束係ね?そして執行人たる瑠璃が俺に劇物を食わせるっていう食事に見せ掛けたコンビ拷問プレーだったわけね?2人ともやっぱり実は仲良いでしょ?


混沌スプーンは容赦なく俺の口に突っ込まれた。


口の中に混沌が広がる。ワァオッ!こいつは立派に不味いぜ!好物のネギトロ丼だったハズなのに!変なモン入れるからちゃんと台無しだよ!



「ちゃんと噛んで食べるんですよマヒロ。いっぱいありますから残さず食べなさいね」



拷問は続く。



傍から見れば膝上に女の子を乗っけて抱きつかれた状態で別の女の子にハイアーンされてゴハンを食べさせてもらってるという美味しいシチュエーションに見えなくもないのに。


不味いよォ。まだあるの?充分だよォ。もう食べたくないよォ。あと抱きつきが力強いよォ。締まって痛いよォ。



そんなこんなありながらも食事を終えた。



食事の後片付けを始める瑠璃。それを手伝わされている詩良先輩。俺に巻きついて離れようとしなかった詩良先輩であるが「食事を振る舞われたのに片付けの手伝いもしないと?」などなど瑠璃に挑発された結果の「やってやらァ!」である。ちなみに波子は食事を取り終えるとゼンマイが切れた玩具のように机に突っ伏して寝た。メシ食ったら寝る!分かりやすい。


そして俺は椅子に座った状態で拘束されている。鎖で。しかも鉄製の。どこでこんなもん買ってきたんだろうね。よく逃げ出すからってこんなもん買ってこんでも良くない?まあ、逃走阻止のために足の骨を折られないだけマシだと思うことにする。


俺はこれからどうなってしまうのだろうか?


瑠璃に殴り殺されるか詩良先輩に絞め殺されるかのどっちかかな。あと俺の部屋は今どうなってるかな。部屋に封印したエイリアンとシスターの現状は如何に。願望として対消滅してくれてると助かるんだけど。とりあえず突然変異して新たな化け物を産み出さないことだけを祈る。


そして何より気がかりなのは巻き添え封印してしまった灯多理ちゃんだ。無事であって欲しいと心から願う。それにそろそろお腹も空いてるだろうし。なんとか救助したい。


もう全部ゲロってとりあえず救助しにいくか?どうせ俺もう殺されるだろうしな。もうここまで来たらクラスメイト連れ込んでましたって言ったところで殺されるだけなわけだし。どうせ死ぬならその前に愛しの灯多理ちゃんを救ってから死ぬ……。アレなんか俺ちょっとカッコイイ?いやうん。知ってるよ。トータル的に見てただのクズ。



ガチャリ。



不意にリビングの扉が開いた。何奴ッ!?



見るとそこには封印していたはずのシスターとなんかちょっと見たことあるような気はするが知らないボサボサ髪の女の子が居た。うん。なんか見たことはある。見たことはあるけど……あっ、そうだ。アレ。俺のベットの上で暴れてたエイリアンや。滅茶苦茶に奇声あげて、のたうち回ってたのに今はなんかすっごく静かになっとるから直ぐに結びつかなかったけど。間違いない。ヤツだ。



「真弘様!彼女ーー初唯さんが真弘様にお話があるそうです!」



シスターは高らかにそう言った。







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