デストロイ



対処に困っていたエイリアンにムチムチ叡智の権化たる聖職者をぶつける。あのシスターならばエイリアンを浄化して宇宙に還してくれることだろう。諸共封印。一件落着。してないしてない。あの部屋には灯多理ちゃんもおる。安否が非常に気になるところではあるが、その他2人が共倒れしたあとに救出すればよかろう。ごめんね灯多理ちゃん。まだ隠れてて。


どれ、ひと仕事終えたし俺はそろそろおいとまさせていただきましょうかね。こんな危険地帯に滞在していたら命がいくらあっても足らぬ。さてさてあとは若い方々にお任せして老兵はダンジョン外に退避退避。



抜き足、差し足、忍び足……。



ガシッ!×2



その場からバックレようとした俺の両肩は何者かによって同時に掴まれてしまった!



「「…………」」



見るとそれは美希と詩良先輩の手であった。2匹の魔獣が無表情で俺を見つめる。


そうだよね。うん。知ってた。この状況で逃げられるわけが無いよね。しかしワンチャン。まだワンチャンがあると思うんだ(願望)。



「……俺ちょっと用事思い出したから外出しますね」


「真弘に用事は無い」


「用事があるなら私がついて行ってあげる」



美希には秒で嘘は即バレ。そして、もしも本当に用事があるとしても逃げ道は詩良先輩に塞がれた。こうは言ってるけどコレアレね。中で死ぬか外で死ぬか選べとかそんな解釈だね多分。そっか、俺ここで死ぬかー。



「まあまあ、ちょっと落ち着きたまえよキミ達!そろそろお腹が減ってはいないかい?僕はもうお腹ぺこぺこさ!お腹が減ると気もたってくるからね。ここは一旦、夕食をとろうじゃないか!」



助け舟、否、ただお腹な減ってるだけペコのハングリーThe腹ぺ子。しかし、この流れ悪くない。みんなで夕食とってあとなんかなぁなぁで今日は解散!みたいな流れに持っていけないだろうか。ドタバタしててなかなかいい時間だし、流石に俺もお腹すいてきた。飯食ったら全員帰れ。



「いいけど。オマエらのメシは無い」



不満気ながらも提案を了承した美希は俺以外を見てそう告げる。すっかり忘却してたと思うが美希は夕飯作りに我が家にやってきた。材料は持ち込みで今日は俺と2人きりのはずだったので2人分しかないのだろう。あとオマエらにメシは食わせたくねぇっていう個人的な問題もあるだろう。でも俺には食わせてくれると、美希のそういうところ好きよ。



「そんなっ!?そんなのってあんまりだよ!なんで僕のゴハンが無いんだよ!どうなっているんだい真弘くん!話と違うじゃないか!」



オマエの中でどういう話になってたかは知らないけど無いものは無い。米は多分あるからとりあえず白米食わせとけばいいか。波子だし。


どうどうと波子を宥めていると、首にするすると腕が巻き付いてきた。詩良先輩である。



「私の夕飯は真弘でいいよ」



ペロリと舌を舐めずりする詩良先輩。それはアレ?食べちゃうってこと?性的な意味だよね?物理的じゃないよね?バリボリと骨ごといかないよね?多分おそらく性的な意味であってるんだろうと思うけど、このプレデターはマジで物理捕食も有り得そうだから恐ろしい。おっふ、プレデター怖すぎ。


美希の握りしめた拳が飛んできた。それは正確に俺の顔面を捉える。正中線。痛いです美希さんなんで僕を殴るんですか。



「オマエは帰れ」


「何故?」


「帰れ」


「嫌よ」



みなさんお気づきだろうか?美希と詩良先輩が普通に会話をしているのである。普通の会話かどうかとか、会話が成立してるか否かは置いといて。出会った当初はお互いに一言も話せなかった2人が会話しているのである。これはやはり2人は多少なりとも仲良くなったということでは無いだろうか。そのままリアルファイトで共倒れしてくれ。



「殺す」


「貴女に出来る?」


「真弘を殺す」


「それはダメよ」



会話の内容は置いとく。美希ちゃん殺すはダメよ。それは余りにも直球的に物騒だからね?やめよ?殺すはやめよ?潰すとか壊すとブチのめすとかブチ犯すとかにしよ?いやそれも大概だけども。


バッチバチに殺気を飛ばし合う2人。間に挟まれた俺のいたたまれなさ。助けて波子……と一瞬思ったけどやっぱりいいや。余計なことしかしないことに定評がある波子がししゃるとさらに俺の寿命が縮む。波子よ。オマエはとりあえず黙って大人しくしとれ。



「なあなあ真弘くん!ちゃんと僕のゴハンあるよね!?僕にゴハンくれるよね!?ちゃんと身体で払うよ?前だけじゃなくて後ろにもブチ込んでビュルビュル出してくれていいからさ!こういうことは波子にしか出来ないって後ろにもブチ込むの好きだろ?頼むよォ!」



大人しくしろって言ったじゃん!なんでオマエそんなこと言うの!ヤメテヨォ!ヤメテヨォ!


ギロッと魔獣達の視線が波子ーーではなく俺に向けられた。


首が絞まり、顔面に拳の雨が降り注ぐ。痛い。痛いよォ。俺なんも言ってないじゃん!なんも言ってないじゃん!ちょっとコッチってどんな具合なのかな?って波子で試しただけなんだよ!原因はほぼ俺にあるかもしれないけど!だいたい悪いの俺かも知れないけど!



ギリ殺されはしなかった。所謂、半殺しって奴?



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