シスター&マリッジ
幼き日のシスター・ユキムラは落ちこぼれだった。
グズでノロマ。要領が悪く。物覚えも悪く。よく失敗しては叱られて邪険に扱われていた。叱責を受け存在価値を問われ続ける日々。役立つ。無駄飯ぐらい。当然の結果と言われればそれまでだが、幼い少女にとってそれは酷な話であった。
ここから逃げ出したいと思った。しかし、身寄りの無い少女に行く宛はなく。拾われた教会を頼りにする他ない。同年代の子供らが友達と遊んでいる間、少女は教会の下働きとして酷使されていた。
今日もまた少女はミスを犯し、お叱りを受ける。ツマづいた拍子に持っていた皿を落として割ってしまったのだ。これで割った皿は何枚目になるのか。割った皿の枚数だけ食事が減らされた。
分かってはいる。上手く出来ない自分が悪いのだと。それでも辛いものは辛いし、お腹が空いた。どうして自分は何をやってもダメなのか自問自答を繰り返すが空腹で頭が回らず、嫌悪の念だけが頭を回る。
今日も人目につかない協会の裏手で少女は空腹に耐えながら隠れて泣いていた。
(あんな所に泣いてる女の子が……。慰めるフリしてスケベなことしたろ!)
そこで幸か不幸か、少女はある少年に見つかってしまった。
「泣いてるみたいだけど大丈夫?」
「ううっ……ぐすっ……。私なにも上手く出来なくて、いつも怒られてばかりで……うぅ……」
「そっか。でも大丈夫だよ。大丈夫大丈夫。失敗しても大丈夫。うん大丈夫」
大丈夫大丈夫連呼しながら優しく寄り添ってくれた少年。少年に特大の下心があって、無駄にボディタッチが多かったが、人の温もりが感じられるその行為は少女にプラスに作用した。温もりを与えられ、優しさに飢えていた彼女にとってそれは救いだった。それでコロッと騙され(ゲフンゲフン)救われてしまった。
少年と触れ合い、大丈夫だと囁かれ、次第に少女自身も大丈夫大丈夫と気持ちを切り替えられるようになった。そしたらなんかいろいろ上手く行くようになってしまった。ミスは減っていき、与えられた仕事を徐々にこなせるようになった。元から彼女のダメさ加減は気持ちによるところが大きかったようだった。
そうして少女は最近上手くいくようになったのは少年のおかげだと思い込み、すっかり心酔してしまうことになる。
これこそ神のお導き。少女と少年の出会いは運命だった。神様が2人を出会わせてくれたのだ。少年こそが少女の運命の相手であり、今後一生を共にする相手なのだと少女は幼いながらも確信を持ってそう思う。
だったのなら、することは1つ。結婚だ。
「大人になったらアナタのお嫁さんになりたいです」
「ごめん。それは無理なんだ。僕の身体にはなんか凄い悪魔が取り憑いているからシスターちゃんとは一緒になれないんだ……。くっ……右手が疼く……(おっぱいモミモミ)」
少女は少年に自らの想いを打ち明けるが断られてしまった。少年の身には悪魔が住まうらしい。ちょっと意味が分からなかったが少年の言うことに間違いはないだろう。
絶望に囚われそうになった少女だが、ふと気がつく。これは神が少女に与えし試練なのだと。悪魔のせいで結婚出来ないなら、その悪魔を自らの手で浄化するのだ。それが少女に与えられし神の試練。
「だったらその悪魔は私が浄化致します!」
少女は決意を胸にそう言い放つ。
「ほっ?よしちょっと試してみよう」
唐突に試練が始まった。悪魔を浄化するという名目で行われたあんなことやこんなこと。試練って痛かったり辛かったりするものだと思ったけど、思いのほか気持ちいいことであった。なるほど苦痛よりも快楽を耐えることの方が難しい。試練しゅごい。
少女は悪魔の浄化に失敗した。快楽に屈したのである。
「ふぅ……。やっぱり今のシスターちゃんの力では無理みたいだ……。ぐっ……浄化失敗の副作用で悪魔が暴走しそうだ……!シスターちゃんを巻き込む訳には行かない。ここでお別れだ……サヨナラっ!」
「そんな……!待って……行かないで……」
こうして少年と少女は決別した。
「うぅ……。今は無理でも……アナタの事は私が救い出します。必ず悪魔を浄化して……結婚します!」
少女の胸には熱い誓いの炎が宿った。
実は少年が依存させまくって都合よくおっぱい揉めてた少女が、どこで覚えたのか最近になって結婚結婚連呼するようになり、ちょっと面倒臭くなたので、ここが引き際とばかりに適当な理由を付けてバックれた……などということを少女は知りもしない。
そして少女が既に手遅れであることも少年は知りもしなかった。
んで。
少女は立派なムチムチシスターへと成長を果たした。今の私ならばきっと試練を乗り越えられるはずと少女はありし日の少年を探し出す。
片手に婚姻届を握りしめる。試練を乗り越えたら結婚結婚結婚。むしろ試練の前に結婚して結婚。もう結婚。はい結婚結婚。もう適当な理由でとりあえずサインをもらって結婚してあとのことは結婚してからゆっくり結婚しよう。
その結婚ーーじゃなくて結果。
「おっひぃいい……!もうおにゃかのにゃかパンパンではいらにゃいでしゅうううっ!あ”あ”あ”ッッッーーー!あふれりゅううあふれてくりゅうううう!!!」
「ひぃいっ……!?」
謎の部屋に押し込まれて未知との遭遇を果たした。結婚の前にバカでっかい試練が立ち塞がった。
奇声をあげてのたうち回る全裸の女。どこからどう見ても悪魔付きっていうか、間かどうかすら怪しいそれは遥かなる外宇宙から地球人侵略に来た宇宙人か何かだとおもった。
シスターとして立派に成長したと思っていた。悪魔付きだったらなんとかなったかも知れない。だが、エイリアンを前にして自分の無力さを知るのであった。
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