ハングリー&ビースト
投げ飛ばされた波子は顔面からアスファルトにチュッチュッした。うわぁ。痛そう。殺ったか?
「ちょっと急になにするんだい!?」
しかし、波子。何事も無かったかのように立ち上がりプンスコ怒りながら戻ってくる。えっ、ピンピンしてるんですけど。もしかしてノーダメージ?強ッ。
「波子、オマエ……よく生きてたな。死んだかと思った」
「勝手に殺さないで貰えるかな?残念ながら幼い頃から両親には虐待されているからね!これぐらいどうということはないさ!」
「なんそのブラックな感じ。そんな明るくサラッと壮絶な過去暴露やめて?反応に困るんだけど」
コイツこんなんだけど、かなりハードな人生送ってるんだよなぁ。
「そんなことより!キミ達は一体なんなんだい!急に人のことをゴミみたいにぶん投げて!そもそもどこのどちらでしょうか?初めまして僕は波子です!」
ビシリッと波子は波子を共同でぶん投げた魔獣2匹を指差した。なかなかお怒りのようです。そりゃ急に持ち上げられてゴミみたいにぶん投げられればね。怒るよね。なんだろ普通の反応なのに新鮮さを感じる。もしかして俺、感覚バグってる?
「「…………」」
対する魔獣2匹はそそくさと俺の背中に隠れた。
なぜ隠れる……。
あっ……!
そういえば2人とも極度の人見知りだったわー……。
美希と詩良先輩の2人は波子とはこれが初対面だった。どちらも初対面の相手とまともに会話出来るだけの対人能力を有していない。コミュ障共が。でもアンタら、その初対面の相手をいきなりゴミみたいにぶん投げてますからね?それでその反応なん?
「「…………」」
「えっと……」
ほら見ろ。睨まれるばかりで、なんの反応も返ってこないから堂々と名乗りを上げた波子困ってるじゃん。また地獄みたいな空気になってるじゃん。せめて名前ぐらい名乗ろ?ほら美希。俺の背中殴ってないでなんとか言お?あと痛いから殴らないで?ほら詩良先輩。俺の脇腹の肉を引きちぎろうしないでなんか話そ?あと痛いから離して?
「真弘くん!その2人はいったい誰ナンダイ!」
波子はちょっと声を裏返らせながら言う。拉致があかないと標的を俺へと変えた。
「こっちが幼なじみ 「で、彼女(美希の声)」 の美希で、こっちが先輩 「で、彼女(詩良の声)」 の詩良先輩」
2人を紹介すると各々しっかり合いの手を入れてきた。そう主張があるなら自己紹介ぐらい自分でしよ?というか出来るようになって?こんな拗らせてて大丈夫なん?
「えっ、真弘くんの、彼女……?そっか真弘くんには彼女2人も居たんだ……」
何処かショックを受けた様子の波子。いや、彼女では無い(断言)けど彼女です(震え声)。俺は余計なことは言うまいと黙る。沈黙は吉なり。
「まあ、とりあえずそれは置いといて何か食べ物おくれ!ここ1週間ほど水と塩しか口にしてないんだ!そろそろ限界で意識が朦朧としてきたよ!だからーー」
バタンッ!
波子の言葉を遮って美希が扉を閉めた。
ガチャンッ!
さらに詩良先輩が閉めた扉の鍵をかけた。
2人揃ってやりきった感を出し、満足気な表情だ。ナイスコンビネーション。だんだんと息合ってきたね。もう仲良しさんかな?
ドンドンドンドン!ガチャガチャガチャ!
外から扉が何者かの手によって乱暴に叩かれ、ドアノブガチャガチャされている。どちら様でしょう?強盗かな?いや波子だけど。
「なんでドア閉めるんだよォ!お腹すいてるんだよォ!食べ物おくれよォ!真弘くん!真弘くぅんッ!ドア開けてくれよぉ!」
扉の向こうでギャースカ騒ぎ立てる波子。
魔獣2匹の行動はどうかと思うも、俺としても波子を締め出すのは賛成派だ。すまんな波子。今日は帰って?オマエが居るとここからまた確実に話が拗れて場がしっちゃかめっちゃかになる。だからお願い帰って?もうちょっと水と塩で耐えて?後日、いっぱい食べさせてあげるから。
しかし、それは判断の誤りであったとすぐに思い知らされた。
「いつもみたいに食べ物のお代はちゃんと身体で払うからァ!いつもみたいにいくらでも股は開くからァ!いつもみたいにちゃんとおしゃぶりするし!いつもみたいに終わったらお口でお掃除もするし!それに今日は安全日だからナマで大丈夫なんだよ!キミの気が済むまでいくらでも無責任ナマ中出ししてくれて構わないよ!いつもみたいに!いつもみたいにィ!」
ヤメテ……。ヤメテ……。
波子が何か言う度に場の温度が急速冷凍していく。驚きの寒さ。シベリアもびっくり。
魔獣2匹から溢れ出る殺意に背筋が凍りつく。ちんちんちっちゃくなっちゃう。ちっちゃくなりすぎて無くなっちゃう。はい。私はもう真弘子。おんにゃのこでしゅ。おんにゃのこだからそういうことはしないにゃん。だから波子にゃんとはにゃんにゃんしてないにゃん。ちょっとだけ粘膜接触があっただけにゃん。
魔獣2匹が同時に振り返る。
「「(ギロリッ)」」
逃げるにゃんっ……!
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