プレデター&バーサーカー
「お義父さんとお義母さん居ないんだよね?」
「……はい」
「その女と2人きり?」
「いいえ」と言いかけてギリ踏みとどまった。とてもじゃないけど現在我が家に俺と女の子が2人(美希と灯多理ちゃん)居ますとは言えない。言えないけど2人きりですとも言えない雰囲気。
「何してたの?」
「そ、その……今日は両親居ないから晩飯作りに来てくれたみたいで……」
「それだけ?」
あとなんか泊まるって言ってましたけども……。これ言ったらどうなるかな?このまま絞め落とされるかな?ヤダヨォ。シニタクナイヨォ。
どう答えたらいい。どうしたらいい。どうしたらこの状況を切り抜けられる。
落ち着いて思い出せ。困った時こそ初心忘れるべからず。原点回帰。最優先タスクはなんぞや。俺が心の底から本当にヤリたかったことはなんだ?
マグロが……。
マグロ(灯多理ちゃん)が食べたいッ……!
結局のところはソレ。ソレなんだよなぁ。ソレを実現させる為にはどうしたらいいかって、そういう事なんだ。
捨てろ。何かを得るためには何かを捨てなければならない。美味しいところを全部総取りなんて、そんな美味い話は無いんだ。真に求めるモノをその手に掴むために修羅となれ真弘。外道へとその身を堕としても必ず掴み取るのだ……マグロを!
「マグロッ……!」
「……お寿司、食べたいの?」
あっ、やべ。つい声に出た。
しかし、結果オーライ。何を勘違いしたのかプレデターはマグロを寿司ネタだと思ったようだ。危ない危ない。危うく灯多理ちゃんの事がバレるところだった。
まっ、そのお陰で俺が何をすべきかの方針が決まった。目的の為ならばどんな卑怯で汚い手も使ってしまえる男。それが俺よ。まさに外道!ド畜生!ただの屑!えっ、待って、そこまで言わなくても良くない?いやでも、これから俺がとる行動とはまさに屑のソレ。罵倒罵声罵詈雑言受けて立つ。それでも俺はマグロが食べたい。
改めまして、灯多理ちゃんとのめくるめくワンナイトお食事会をする為には我が家に蔓延るバーサーカー&プレデターは邪魔な存在。
邪魔者には消えてもらう他あるまい。くくくっ(悪い笑み)
だが、バーサーカーはバーサーカーで人の話を聞く器官が人体に備わってないし、プレデターもプレデターで人の話を改竄するのはお手の物だ。どちらも簡単に討伐することは不可能に近い。というかマジ無理ゲー。1匹でも手に余る特異型変異個体の大連続狩猟なんぞチャレンジクエストでもお呼びじゃねーんですよ。
俺じゃ無理。ならばどうするか。答えは簡単だ。
美希と詩良先輩の2人で潰しあって貰えばいいのだ。
なんという悪魔的発想。目には目を歯には歯を、バーサーカーにはプレデター、プレデターにはバーサーカーだ。予想するまでもなく、この2人が邂逅すれば大戦争勃発間違い無し。それはもうなんか雰囲気で分かるじゃん?
俺の曇りなき眼で見定めたところ美希と詩良先輩の戦闘力はほぼ互角と見た。ならば実力が拮抗した2人が争えば、結果は両者相打ち共倒れダブルノックアウト。これで俺は労せず2匹の魔獣を打ち破り、晴れてマグロを美味しく召し上がれてしまうって訳。ヤバッ。なにこの完璧で隙のない完璧な作戦。真弘くん頭良すぎん?やってる事はクズのそれだけど。
恨んでくれるなよ美希に詩良先輩。これも全てはマグロが美味しいのが悪い(責任転嫁)
となれば早速詩良先輩を美希に消し掛けよう。そうしよう。
「実は……その幼なじみが今日我が家にお泊まりするって言い出しまして……」
「お泊まり……ね。ナニをするつもりかな」
「それは分かんないですー」
「ふーん。分かったよ。その幼なじみに、会わせて」
「は、はいっ」
計画通りッ!俺は内心ほくそ笑みながらリビングーーそして、その先のキッチンでマグロを叩いているであろう美希の元へと詩良先輩を誘導する。
さーて、大怪獣バトル開戦の時!
「真弘、遅ーー……その女、誰?」
「……この女が、あんたの幼なじみ?」
邂逅。
これがバーサーカーとプレデターの初対面である。
◇◇◇
「えっと、こちらが幼なじみ 「で、彼女(美希の声)」 の美希」
「…………」
「…………ふーん」
一応、言っておく。美希と致した回数は数え切れないけど、愛の告白イベントはこれまでに無いので付き合ってるとか恋人同士とかでは無い、はず。多分。一応。
「そして、こちらが学校の先輩 「で、彼女(詩良の声)」 の詩良先輩」
「…………」
「…………へぇ」
一応、言っておく。詩良先輩からの告白(?)は断っている。失敗してるけど。だから、付き合ってるとか恋人同士とかでは無い、はず。多分。一応。
「…………」
「…………」
お互い無表情で見つめ合い無言の時が流れる。その間に挟まれている俺は針のむしろ。うん。吐きそッ!
邂逅一番。目と目が合ったらバトルの合図。これがボクらのウォーゲーム!がおっぱじまるかと思っていたのに、出会った2人は、静かに、静かぁぁに、揃って俺をリビングのテーブル上に正座させた。そして俺が正座するテーブルを挟んで腰掛けた。とりあえず、テーブルの上に乗るとか行儀悪いし降りていいかな?正座辛いし。ダメ?ダメっぽい。
「「ダウト」」
2人が発した声は見事に重なった。
え?なに?ダウト?トランプでもしてた?ここに俺に見えないエアトランプがあったりする?それでウォーゲームの真っ最中だったりします?
ちゃうか。
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