バーサーカー



「私でどうてい捨てた癖に」



それを言われると、もはや何も言い返せない。



「泊まる」


「お、おう……」



やっべぇ。




現状のおさらいをしよう。


両親不在をいい事にクラスメイト女子を部屋に連れ込んでチョメチョメしていたら、幼なじみが晩飯作りにやって来た。


クール&ヴァイオレンスな幼なじみにクラスメイト女子とチョメってるのがバレればマグロ解体用のクソデカ凶器で解体ショーの贄にされるのは間違いない。寿司ネタにはなりたくなかった俺はなんとか機転を利かせて一旦、耐えた。そこまではよく出来た。花丸あげたい。


しかし、俺はそこから判断を謝った。連れ込んだクラスメイト女子に幼なじみが帰るまで隠れているようにお願いしたのだ。


晩飯を食ったら幼なじみは帰宅すると思ったのだ。それで幼なじみが帰ったらクラスメイト女子と諸々を再開して朝まで全裸組体操の練習とは名ばかりの実践本番ぱーりーナイトしたかった。今日金曜日で明日学校休みだし。やりたい放題じゃんね。


ところがどっこい。幼なじみの美希さん。何を思ったのか……。本日、我が家に泊まると言い出した。


一応、そんなに重要な情報では無いのだが補足を入れると美希の『泊まる』という発言は『今宵、貴様をブチ犯す』と言う意味である。日常でわりとよくありすぎる展開だ。はいはい、いつものヤツいつものヤツ。


俺は美希でどうていを捨てた。若気の至りだった。これは流石にアカンかと思ったが美希は無表情で反応が薄く、抵抗らしい抵抗をしない。これはイケると味をしめた俺は、連日連夜、水溶き片栗粉入り水風船の大量生産に明け暮れた。


その結果、クールで苛烈で過激なヴァイオレンスバーサーカーが出来上がってしまったのである。


俺も成長し、現状を省みることが出来るようになったお年頃になり「これいろいろ不味いんじゃね?」と思ったこともあった。というか現在進行形で不味いとしか思えてない。しかし、時すでに遅く。美希に「ちょっと控えよ?」と訴えても「抵抗は無駄」と衣服を剥ぎ取られるようになってしまったのである。


つまり、美希が『泊まる』と発言した以上『抵抗は無駄』と言うのが現状であり、現在俺の部屋に隠れているクラスメイト女子の灯多理ちゃんを一刻も早く我が家から退避させねばならないのだ。



ここでついでに過去回想もしておこう。



ーー1週間前……。



「俺、好きな子出来たからその子と付き合う!美希とはもうしない!」


「その子、誰?名前は?」


「……それ聞いてどうすんの?」


「ソイツは殺して、貴様をブチ犯す」



そして俺はバーサーカー手によって半殺しの全枯らしにされたが口は割らなかった。よく頑張ったと思うよ、ホントに。


それで今日を迎えたわけ。


希望的観測で、もしかしたら今日は美希がウチに来ないんじゃね?となんの根拠もない自信に満ち溢れていた俺は灯多理ちゃんを自宅に連れ込んだ。なにをどう考えてその結論に至ったのかは定かでは無い。目の前の欲に目が眩んだのは否めない。むしろそれしか理由ないんだけどね。


美希の真似をして灯多理ちゃんに「貴様をブチ犯す」って言ったら、目をキラキラさせながら頬を紅潮させ、メスの表情で「はいッ……!」なんて灯多理ちゃんが言うもんだからテンション爆上がりしちゃったところもあるよね。


過去回想、終わり。


何にしてもアレだ。現在の最優先タスクは灯多理ちゃんを我が家から脱出させて美希の手の届かない場所まで逃げてもらう必要がある。さもなくばマグロは叩いてミンチでネギトロにされて廃棄処分だ。勿体無さすぎる。そのネギトロ食べたい。


まっ、でもさ。ちょっと焦ったけどさ。


それ余裕じゃね?


ここからの美希の行動予測。まず夕飯を作ります。そしてソレを俺と一緒に食べます。それから風呂に入ります。からのブチオカシッ!だ。


俺が美希の気を引いていれば、灯多理ちゃんがコッソリ脱出する隙など幾らでも稼げるであろうさ。



「夕飯作る」



美希すっと立ち上がり、来る前に買ってきたであろうスーパーのビニール袋を無表情で掲げ、ガサゴソと漁って中身を取り出し俺に見せ付けくる。



「真弘の好物のマグロ買ってきた。あとスッポン」



わーい!真弘くんマグロ大好き!あと精がつきそう。



「ネギもある。あとマムシ」



コレはマグロとネギをミンチでネギトロルート!あと精がつきそう。



「海苔もある。あと性欲剤」



やはり海苔はかかせない。案外、安物の海苔と高い海苔って差が結構ある。あと精がつきそう。



「醤油も良い奴。あと媚薬」



ぶっちゃけ寿司ってほぼ醤油の味しかしないよね。ネタの食感を醤油味で楽しんでるだけだよね。決めてはやっぱり醤油。あと精が乱れそう。


マグロスッポンネギマムシ海苔性欲剤醤油媚薬……夕飯何かな?ネギトロ丼かな?普通のネギトロ丼がいいな、普通の。隠し味はやめて欲しいな。まったく隠す気もさらさらないと見受けられるけども。



「ネギトロ丼作る」



そう言って美希は材料を”全て”持って台所に向かう。美希さん……その材料の半分ここに置いてっていいよ……。むしろ捨てて……?


なんにしてもチャンスその1の到来である。美希が夕飯を作ってる隙に灯多理ちゃんとスマホで連絡をとって逃走作戦計画を練ろう。


俺はスマホを取り出しーー。



ピンポーンッ!



ーーた。ところでインターホンが鳴った。



来訪者……何奴だ?













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